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舞台感想 戦国時代活劇「HiGH&LOW THE 戦国」

東急歌舞伎町タワー シアターミラノ座

宝塚ファンをしていると、今まで行ったことのない劇場を体験することができるものですね。
マイティとせおっちが外部出演するのも驚きだったけれど、友の会のチケット申し込みでticketbookなるサイトを利用するのも初めてで、初めて尽くしの経験でした。

若い頃は月に一度は東京出張していたけれど、行く場所は原宿、恵比寿、代官山あたりで「新宿」なんて降りたこともありません。
「歌舞伎町」って場所は、小説やドラマやニュースで目にするだけで、地名そのものもを聞いただけでドキドキです。
怖いお兄さんがいるんじゃないだろうか?
おのぼりさんだとバレたらカツアゲされるんじゃないだろうか?
迷わないように駅からのコースを何度もシュミレーションして当日に備えました。

田舎のおばちゃんは、新幹線が遅れると困るのでいつも早めに行くのです。無事、劇場の場所を確認したら、どこかで時間をつぶさなければいけない。
カフェがあるだろうか? あ!スターバックスがある!よかった!
コーヒーとサンドウィッチを買って、二階へ上がって、驚いた!
お客さん、全員外国人!!!
ここは、外国か!!!
会話が全部外国語!!!
時間が早かったからでしょうかね。タワーの上階はホテルのようで、インバウンドが復活している様子を目の当たりにして、驚きました。
本を読んで時間をつぶしていたのですが、だんだん人も増えてきて居づらくなったので、店を出てぶらぶらすると、裏側の西武新宿駅よりにピアーズカフェというカフェを発見。
美味しそうなパンやモーニングもあって、こっちにすればよかった!
こちらは、宝塚ファンらしき方が多くて、皆良く知っているなあ~と感心してしまいました。
まだ時間があるので、コーヒーゼリーを食べながら時間をつぶしていると、当日券の列が見えました。40人近く並んでおられました。
コロナ禍が終わり、インバウンド、エンタメの当日券など世の中が普通になってきていると思えるのは嬉しいことです。

さて、劇場へ。
休憩なしの2時間20分。
だから、観劇前にトイレは必須! 
私は劇場に行く前に2階で済ませましたが結構な行列でした。でも、劇場内も大行列していました。2階で済ませておく方が正解かもしれません。

劇場はこじんまりとしていますが、観やすいと思います。
今回は下手前方席でした。
すぐ近くの扉が「開演中は締め切りとなります」と書かれていました。
何か事情が?
この作品、客席の通路をキャストが通る演出があるのです。
なんと!その扉から、せおっちが現れて、息が止まりました!
だって、数メートルしか離れていない! きゃあ♡

さて、前置きが長くなりました。ネタバレあります。

物語は、架空の戦国時代。
龍が封印され、五つの社が建てられ社の周りには国が栄えていった。
内乱によって砂漠と化した「須和国」
水の豊かな「乃伎国」
刀を鍛え戦闘的な火の国「尊武国」
そして、「袁空国」「佐峨国」の五つの国。
それぞれの国ではリーダーが仲間たちと共に国を治めていた。
だが、ある人物が争いの火種をまき、「須和国」「乃伎国」「尊武国」は争うこととなり、戦乱となっていく。
社に封印された刀を引き抜くと、封印された煩悩が呪いのようにリーダーの心をむしばみ、彼らの人間性までを変えていく。
自分の弱さに打ち勝つことしかその呪いを解く方法はないのだが……
戦いの行く末は……

主なキャストは、
須和国
黄伊右衛門 片寄涼太
吏希丸 瀬央ゆりあ
颯斗 小野塚勇人
戒 うえきやサトシ
乃伎国
湧水 水美舞斗
弦流 藤原樹
鉄湯 櫻井佑樹
尊武国
玄武 RIKU
相生 浦川翔平

糜爛 阿部亮平
弧呂巣 久保田創
影森 冨田昌則

まず、役名がキラキラネームっぽいのが今どきって感じですね。
「りきまる」って音を聞いたら「力丸」って感じに脳内変換してしまう私のようなおばちゃんだと「吏希丸」って漢字を見て驚いちゃいます。
うーむ、世の中の変化についていかなくっちゃね。

仲間を裏切っているように見せて本当は命をかけて仲間を救おうとしていたとか、
私欲に流されそうになるのを最後の最後には耐えて愛する人の為に命を投げ出すとか、
少年漫画っぽい設定で、仲間との絆が語られ、熱い戦いが繰り広げられます。

やはり印象的なのは殺陣!
迫力のある殺陣ですっごくかっこいい!
宝塚とは違うスピード感と、斬られる方のスキルの高さが素晴らしくて、紛れもなく殺陣だけど、見事なダンスのようです。
このスピードについていく、マイティとせおっちは本当に素晴らしい!
動き、姿、ポーズ、どれをとっても美しい。

冒頭でせおっちが登場して殺陣の後ポーズした時の美しさといったら、現実とは思えない程美しい。
マイティが台の上で見せた殺陣のスキルも素晴らしい。高さのある場所での殺陣って怖くないのだろうか?
見事な筋肉の男性に混じって、全くひけをとらない二人に
「どう? タカラジェンヌってすごいでしょ」って思っていました。
誰に対する自慢かわからないけれど……

面白いのは歌を歌う時にマイクを持って歌う演出。
芝居なのにライブみたいでカッコイイ!
芝居の世界感をあえて崩すっていう感じでしょうか。
色んな演出方法があるものだなあって感心しました。
こうなるとマイクの持ち方にも個性がでるってものです。
役者も色々研究しなくちゃいけないものですね。

吏希丸は黄伊右衛門や須和国の仲間たちと
湧水は主に弦流と、
男同士の芝居をするわけですが、これも違和感なく男同士に見えて、見事だったと思います。
でも、男役の型を使わずに男を演じる苦労は、並大抵のものではなかったでしょうね。スカステの特集でもお二人が演出家の厳しい要求に応えようとする姿が映されていて、役者の大変さを感じましたもの。あのような稽古を繰り返し、意見を交換しながら素晴らしい舞台が出来上がっていくのだろうなって思います。

設定として面白かったのは、湧水と弦流の関係ですね。
弦流は主人である湧水を愛している。それも男同士での恋愛感情、つまり同性愛を明らかにすることができずに苦しんでいる。そして、いつか、こんな感情を普通に告白できる世が来てほしいと願っている。
現代風というか、多様性の時代へのオマージュのような設定にも見えるのですが、この物語、冒頭で信長と蘭丸が出て来るんですよね。
信長と蘭丸の関係は有名で、男色があたりまえの戦国時代ですよね。むしろあの時代の方が性におおらかだったに違いなく、同性愛に苦しむことなんてなかったのでは?と思えるのに苦しむ弦流。
この設定は、あの時代の方が現代よりも多様性があったと言いたかったのかな? ふと、そんなことを感じました。
だって、湧水をタカラジェンヌにしたのなら、湧水を男として育てられた男装の麗人設定にすれば、愛してはいけない主人を愛して苦しむアンドレのような「萌」を見せることができると思うけれど、絶対に湧水は「男」なのです。つまり、そうはしないぞ!という意志を感じますよね。
これは、「男役」を「男」として起用することに意味がある!って演出家がこだわった結果ではないかと推測します。
その考え方はそれで面白いなって感じました。(あくまで推測)

そこまで「男」であることを求められ、
それを見事にやってのけたマイティとせおっちに大拍手です。

二人がすっごく他のメンバーさんと馴染んでおられるんですよね。
特にせおっち。スカステで本当は人見知りとおっしゃっていた瀬尾さんですけれど、もう、コミュ力おばけに変身している感じがします。
男性メンバーを引っ張っていく勢いで馴染んでおられます。
千秋楽のカーテンコールでは凄いことになるのじゃないだろうか?

現役ジェンヌの外部出演。それも、男性多数の舞台で「男役」
凄いチャレンジの作品だったと思いますが、「成功」だったのではないでしょうか?
LDHさんが、今後をどう考えているかはわかりませんが、恐らく続編もあるでしょう。だって「袁空国」「佐峨国」の話は全然なかったですからね。
また現役ジェンヌさんに出演依頼をされるのだろうか?
そして、宝塚歌劇団は今後、現役ジェンヌさんの外部出演をどのようにプロデュースするのだろうか?
相乗効果でより面白いエンタメが出来上がり、それを楽しませて頂けると嬉しいなあって思います。

せおっちもマイティも本当に良い経験をされたのではないかなって感じました。宝塚の舞台でこの経験を生かして「おおっ!」と思わせてくれるといいなあって思います。
それと共に、新しい世界を知ったあとの彼女たちが、どういう道を歩みたいと願うだろうか?って想像すると、ファンにとっては淋しい選択になる可能性もあるわけですよね。でも、それもまた良きかな。

私が今回のような初めて尽くしを体験したように、タカラジェンヌが進化していくことで刺激的で面白いエンタメが現れるなら、私も色々な体験ができるかもしれないとワクワクできますからね。

「皆主役」
この作品はそんな風に作られているようです。
確かに、皆、印象的。
アクロバティックな殺陣をみせる方も、龍をダンスで演じる方も、私がお名前を知らない方皆、印象的でした。
龍みたいに見えるダンス、面白かったなあ。
振り付けも進化しているなあって本当に感じます。
体幹の強いダンサーでないと踊れないだろう高度なダンスを楽しめるわけですから、満足度が高いです。
それに、音楽も良かったです。
そして、有村先生のお衣装もかっこいい!

一度だけの観劇でしたが、十二分に楽しみました。

ただなあ……やっぱり、劇場はムラが一番だなあ。
平和で穏やかで安心感がある……

歌舞伎町って……やっぱ、ちょっと……
雨に濡れた吐しゃ物を踏みかけて、ヤバかった……
やっぱ、都会だ……色んな人がいる……
でも、そんな刺激も田舎のおばちゃんにはたまには必要なのかもしれないけれど……

楽しい観劇でした。

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