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舞台感想 宝塚歌劇 雪組公演 BONNIE&CLYDE

BONNIE&CLYDE(ボニー&クライド)との出会いは、洋画好きだった中学生の頃、三本立てとかでやってたのを見たんじゃないかな?
もう、記憶があやふやで、残酷な映画だった印象が……
怖いの苦手な私……でも、あの頃は残酷な西部劇とかも好きだったので、怖いでもかっこいい!って感じで見ていた気がします。
でも、正直ほとんど覚えていないのです……
「俺達に明日はない」って邦題はセンスいいなあって思います。
題名が「ボニー&クライド」だったら、間違いなく観に行っていなかったと思いますね。

それで言うと「凍てついた明日」っていうのもなかなか良いタイトルですよね。さすが、荻田先生。
スカステで観たおぼえはあるのだけれど、あまり「良かった」とか「おもしろかった」とは思わず、あっさり録画を消した覚えだけがあります。
あまり好きじゃなかったのかも……

雪組の新トップお披露目が「ボニー&クライド」って見た時は
「凍てついた明日」???
違うのか、ブロードウェイミュージカル? 曲はワイルドホーンさん。
へええ、こんなミュージカルあったんだ。
それなら見て見たいけれど、友の会はあっさりハズレで、チケット無理かあ……と思っていたら救いの手が……

おかげさまで、観ることができました。ラッキー!!

でも、観てびっくり! 思いのほか良かった! かなり良かった!

さすがブロードウェイミュージカル。
テンポよくって、こじゃれた感じで、やっぱり海外ものってどこか違う。
男役を前面に押し出す宝塚の演目と違い、女優を魅せる!という精神がベースに流れている感じがします。そういえば海外ミュージカルって男性よりも女性の方が印象に残っている気がしますよね。
「二十世紀号に乗って」の時も、のぞさまの存在感より、まあやの女優感の方が強く印象に残った気がします。
ブロードウェイミュージカルって女性を魅せる!ことに主眼をおいているのかもしれません。

夢白ちゃんの新娘役トップとしてのお披露目にこの演目を選んだ歌劇団に拍手を送りたい気持ちです。
ホント、上手い選択だと、そして良い作品を見せて頂けたと、歌劇団に感謝する気分です。

ネタバレありの舞台感想です。

ボニーとクライドの最期のシーンから物語は始まります。
この悲しい結末に向かって二人がどう生きてきたか、周りの人間たちとどうかかわってきたかが語られていく感じです。

物語はテンポよく進んでいきます。
貧しさ故に悪いことをしてしまう、バックとクライドの子供時代からの絆。
女優に憧れるボニーの生い立ち。
ボニーとクライドの運命的な出会い。一見、単純な一目ぼれかと思うけれど、魂の中に引き合うものがあったと感じられる展開。
テッドとの堅実な未来を得ることもできるはずなのに、それには毛ほどの魅力を感じられないボニーという女性の本性。
そんなものが、違和感なく観客に伝わるので、観ていてストレスを感じません。

私が海外と日本との大きな違いに思えるのが、キリスト教の信仰心。
日本人って宗教的には淡白で、神にも仏にも祈りはするけれどその存在を信じているかと問われれば、あまり信じていないように思うのですね。
少なくとも、私はそう。
神社仏閣にお参りはするし、法事などもちゃんとするし、お寺の行事も無視するわけではないけれど、心のよりどころとまではいかないのですよね。
でも、キリスト教を信じる人々は、神がもっと身近で信用のおける存在で心のよりどころのように見えます。
そんな宗教観だから、海外ミュージカルの教会や牧師様の登場するシーンは荘厳で団結力を感じるのかなあって思います。
久城あすさん演じる牧師が、人々を率いて歌うシーンは迫力あって引き込まれます。でも「善」の象徴のように見えながら、本当は何も救えていないのでは……
久城さんが広げる両手が、人々を救おうとしているはずが、どこかうさん臭く感じる……
そして、徐々にその牧師こそが魔王のように見えなくもない……
「善」と「悪」の境目が見えなくなるような気持ちにさえなります。
そんな現実が刹那的なボニーとクラウドのような人間を生み出してしまった社会そのものを皮肉っているようにも感じられました。

作品で描かれている家族愛は、温かです。
バックとクラウドのわちゃわちゃした兄弟愛、バディ感は、咲ちゃんとそら君にピッタリ!思わず笑みがこぼれてしまいます。
そしてこの仲の良さが、まっとうな道を歩むこともできたバックとブランチまでもギャングにしてしまう。
愛の混じった毒を食べてしまったんだなあ……
毒を食らわば皿までよ……
もはや犯罪が楽しくなってしまう……

ボニーとクラウドの悪事に対する陽気さは、二幕で一層強くなっていって、ヒーロー化されたことに背中を押されて一層拍車がかかっていく。
ギャングたちは悪いことをすればするほど、どんどん自信をつけて、かっこよくなっていく。このかっこよさは、やっぱり宝塚だなあって思います。
オペラ越しに咲ちゃんに銃でロックオンされた時は、天に召されるかと思いましたよ。
ギャングとしての自信に満ち溢れたボニーとクラウドが、冒頭で見せられた結末に向かっていく切なさがずっとバックグラウンドに流れているような感じもして胸が痛くなります。
一方の「善」であるべき警察側は、徐々に権力者の面子や立場を守るために過激になっていく。そんな、変化も面白いのです。

結局悪は成敗されるのだけれど、あの二人は本当に悪人だったのか?

何が「善」で何が「悪」なのか?
そう、問われているようにも感じます。
ボニー&クライドが一番自由に、一番人間的に生きた二人だったんじゃないかな。

話は少し変わるけれど、先日見た「歌うシャイロック」でも、「善」「悪」の曖昧さを感じる気がしました。ちなみに「歌うシャイロック」の舞台感想はこちら
舞台感想 歌うシャイロック|おとぼけ男爵|note

ボニーとクライドは実在の人物をモデルにしていて、実際に何人もの人を殺したのだから悪人なのでしょう。でも、彼らの刹那的な生き方に魅力を感じるからこそ映画や舞台になるのでしょうね。

哀しい最後だけど、フィナーレがつくのが宝塚の良い所。

このフィナーレすごく良かったですね。
見ごたえがありました。

そして、夢白ちゃんの「どうだ!」感。
フライングサパのイエレナでも思ったんだけど、夢白ちゃんは気の強い大人の女が良く似合う。
咲ちゃんとも息が合っていたし、良いトップコンビになると感じさせられました。

作品として本当によかったし、全編を通して歌やダンスも楽しめたし、フィナーレもとても良かったし、絶対見るべし!の公演でした。
ご覧になっていない方はこれからでもぜひ!
御園座ってアクセスが良いから、ムラ観劇エリアにお住いの方なら、日帰りで観劇できちゃうと思います。
おすすめです。

ドリームガールズも来ますよ

今日16日から生オケと発表がありましたね。
昨日は、少人数だけど少しだけ生の音も入っていたように思います。
今日から全員そろって生オケってことなのでしょうか。
舞台上のオーケストラの存在も演出になっていたと思うので、昨日は出られる方だけで構成されていたのかもしれません。少人数でも、開演前にチューニングの音が聞こえているのはワクワクしました。
今日からは、より迫力ある生オケをバックに皆さんが歌い踊られるんですね。よかった、よかった!

千秋楽まで無事走り抜けれらますように!


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