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舞台感想 宝塚歌劇 花組公演 アルカンシェル ~パリに架かる虹~

明日海さんのご卒業が決まった時、私は「れいちゃんとマイティのダブルトップなんてどうよ? 2倍観に行くからさ~ 明日海さんの後を一人で背負うって大変そうだしさ~ 意外と面白そうだけどな~」と思っていました。
そんなことを思い出しながら、れいちゃんのご卒業公演である花組公演を観に行ったのは、HIGH&LOW THE戦国の千秋楽の日。
戦国の配信観たかったんだけど……というのも、千秋楽のカーテンコールになんか色々企画考えているような様子が見られたからです。
私が観た日の感想はこちら
舞台感想 戦国時代活劇「HiGH&LOW THE 戦国」|おとぼけ男爵 (note.com)

マイティとせおっちの出演された「HIGH&LOW THE戦国」
宝塚歌劇団としても挑戦で、二人の活躍をれいちゃんにも見せてあげたかったな~(一体、誰目線?)

さて、れいちゃんとまどかちゃんのご卒業公演である「アルカンシェル」
発表された時は「イケコの一本物かあ~」と少々テンション低かったのですけれど、様々な思いの感じられる作品でした。
このところ、若手演出家の秀作が多いのと、外部の公演などを目にする機会があるので、ついつい目新しいものを喜んでしまう私です。
この作品に目新しさはないですが「静かな演出家の思い」が感じられる血の通った作品だと感じました。

ネタバレあります。

舞台は、ナチス占領下のパリの劇場アルカンシェル。
演出家が亡命してしまい、歌姫カトリーヌが演出を、ダンサーマルセルが振り付けをしなくてはならなくなります。ドイツの文化統制官コンラートからジャズの演奏を禁じられ、ウィンナワルツで公演するように命じられます。だが、副官のフリードリッヒはジャズバージョンを作り密かに上演することを提案します。
最初は反発しあうマルセルとカトリーヌですが「観客を楽しませたい、観客に夢を与えたい」という同じ思いを持っている同志として距離が縮まり、愛しあいます。だが、ジャズバージョンの上演がコンラートにバレてマルセルは捕まります。カトリーヌはマルセルを自由にする条件でドイツで歌う決心をしてパリを離れ、マルセルはアルカンシェルで公演を再開します。
マルセルはレジスタンスの仲間になり、囚われた仲間の救出に成功し、軍の慰問中のカトリーヌと再会します。その後、慰問を終えたカトリーヌはパリに戻りますが、ドイツ軍はパリを爆破しようとしていました。
爆破を阻止しようとするマルセルは、意外な人物に出会い……
そして、とうとう、パリは解放されました。

「観客を楽しませたい、観客に夢を与えたい」と願うエンターティナーが数々の困難を乗り越えて、新たな希望の道へと歩き出す物語を、占領下のパリを舞台に描いたという感じです。

それはコロナ禍で苦労したトップさんであるれいちゃんが様々な苦労を乗り越えたことと共に、宝塚歌劇団だけではなくすべてのエンタメがコロナ禍の苦しみを乗り越えて今、元気を取り戻しつつあることに重なっているように思えました。
そして、昨年の悲しい出来事とその後の宝塚歌劇団叩き、そして、小池先生ご自身にもふりかかった誹謗中傷。
まさに、「たゆたえども沈まず」の思いで、作品を作り続けておられたのではと推測します。
深刻さの少ない軽やかな仕上がりの作品だとだと思いますが、こめられた思いには深いものを感じます。

アコーディオン弾きのイヴが語り部となってアルカンシェルを紹介すると、ミラーボールが回り、階段に並ぶ黒燕尾の紳士たちが現れます。
この華やかな冒頭部分だけでも、ワクワクします。
これぞ、宝塚。
これぞ、パリのレビューを日本に持ち込んだ宝塚!華やかで綺麗!
そこから「モンマルトルのピエロ」の稽古になり、れいちゃんのピエロが現れます。
このスピーディな展開は素晴らしいし、「モンマルトルのピエロ」が後の救出劇への伏線となっているのもシャレています。
とにかく、れいちゃんのピエロ姿とダンスが最高に素敵。
プログラムでも、ピエロ姿の写真がスペシャルポートレートとしてふんだんに掲載されていて、最高に綺麗!
こんなにも美しく、哀しく、色気のあるピエロが現実の人であることが奇跡のように感じます。
普段、プログラムは買わないわ~と言う方も、このプログラムはぜひ!
写真集の値打ちがあります。

小池先生はれいちゃんの様々な種類のダンスの見せ場を作ろうと考えておられると感じましたね。
まどかちゃんのシャンソン「待ちましょう」も素敵だった。心がこもっていて、素晴らしかったです。ただ、「ドイツ軍の慰問で歌う」のはちょっと違和感感じたのですけれど、ま、歌が素晴らしいから、いっか。
一樹さんのフルフルも素敵。一樹さんのペペは存在そのものが作品を引き締めていて、さすがだなあって感じます。
驚いたのが、そのペペと対等にわたりあっていた湖春ひめ花ちゃんの少年イヴ! どれくらい学年差あるのだろうって思って調べてみたら一樹さんが59期でひめ花ちゃんが106期!47年差!
大先輩の胸を借りて生き生きと演じているひめ花ちゃん、お見事!

一本物でショーがないから残念って思っていたけれど、お芝居の中に様々なダンスがもりこまれていて、楽しめました。
部分的にうとうとっと夢の世界へ誘われることがなかったわけではない……でも、良い作品だったと思います。
小池先生が若手の平松結有さん率いる演出チームに感謝を述べておられたのが、嬉しいです。若手の演出家が育っているというのは、今後の作品にも期待が高まります。
石田先生がGOATで外部の三井先生に演出をまかせたり、小池先生が名前を挙げて若手の演出家に感謝を述べたりする姿勢は、ベテラン世代が世代交代に後ろ向きではないと感じられるので嬉しいです。
ベテランの知識、技術を次の世代が引き継ぎ、そこに新しい風を取り入れて次につないでいく。
今までだって頑なに伝統を守るだけで110年続いていた宝塚歌劇ではありません。新しいことに挑戦したり、失敗を成功に転じながら続いてきた歌劇団だと思います。
守るべき伝統を守りながら、新しいことにも挑戦するためにも、若手の演出家が育ってほしいと感じます。

れいちゃんの様々なダンスは素晴らしいし、とても丁寧に踊っておられるのがビンビン伝わってきます。どの瞬間瞬間も、過ぎゆく時間を、大切にしておられるのだなあと感じます。
まどかちゃんの歌声も、本当に集中して心を込めて歌っているなあ、そしてやはり良い声だなあって思います。
ひとこちゃんのフリードリッヒは、ドイツの軍人っぽくない明るいキャラが楽しいです。星空美咲ちゃんのアネットとの恋に、十代の恋のような初々しさを感じてしまいました。内緒でジャズをやってしまおうという大胆さを持つくせに、初心な顔も見せるフリードリッヒ。左遷されても器用に生き抜く調子の良さで、どんな不幸も吹き飛ばす陽キャラが似合っていました。
あかさんのジョルジュ。あかさんは、こういう役上手いですよねえ~ 嫌な性格だけど、それには自分なりの理由を持っていて、見た目はいい男っていうの上手い。
輝月さんのコンラートのねっとりした嫌らしさも最高。
ほのかちゃんのイヴは爽やかで、時間軸の違いがわかりやすかったです。

他にも芸達者さんばかりで、上げきれない。
ご卒業される、舞月なぎささんや、帆純まひろさんも印象的で、これで観られるのが最後だなんて、淋しすぎる。愛蘭みこちゃんや美里玲菜ちゃんも、本当にかわいくてもったいな~いと思います。
花組の組子が一丸となって、トップスターのご卒業公演を盛り上げようとしているし、まだまだこれから芝居は良くなっていくのではないでしょうか。

この作品はあと二回観劇予定なので、どんな変化が見られるのか楽しみです。
たゆたえども沈まず……
なんか、励まされるなあ~

過去の舞台感想はこちら
宝塚歌劇 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)

宝塚OGさん出演の舞台感想はこちら
宝塚OGさん出演 舞台感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)

宝塚以外の舞台感想はこちら
宝塚歌劇以外の舞台、映画感想まとめ|おとぼけ男爵 (note.com)










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