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シカゴに住んだ2年間を振り返る【大学英語編】

こんにちは。シカゴに住んだ2年間を振り返るシリーズの後半です。

前編はこちら。

時系列をまとめると、2016年の8月後半(9月初めだったかも?)〜12月まで英語が第2言語である外国人の生徒を対象にしたESLに通いました。

今回はそれ以降私がコミュニティカレッジで何をしたか編です。

2017年1月〜4月:大学準備クラスに入る

私のカレッジでは無事ESLを修了できた生徒が次に現地のアメリカ人と一緒に授業を受けるまでの英語力を培うための準備クラスのようなものが開講されていました。
大学の授業を受けるにはまず大学英語の基礎クラスを終えなければいけません。
これはアメリカを始めとする英語圏の大学に必ず存在する「ENG101」です。
プログラミングや数学、科学、どんな科目を受講するにも、ほとんどの場合まずENG101を終了していることが要件になってきます。
その生徒に大学レベルの英語力があるかどうか、判定基準となるのがENG101です。
ENG101を受講できる大学英語基礎力をESL卒業生に習得させ、彼らがカレッジへと進み(2年生の短大)卒業できるように導く目的でこのクラスがあります。

生徒数は20数名といったところで、1番にラテン・ヒスパニック系が多く、次にポーランドを始めとする東ヨーロッパ、数名の黒人、アジア人は私ともう一人タイ出身の女性を含めた2人でした。(そのためよく混同され頻繁に名前を間違われれた。笑)
このクラスを受け持った教授は50代〜60代くらいの白人女性で優しくて模範的なクリスチャンといったタイプでした。

このクラスでは4〜5名のグループに分けられ、グループを中心としたアサイメント(課題)が多く割り当てられました。
課外グループワークも存在し、トピックが確か「ヘルシーなスナック」で老人ホーム施設で高齢者を対象にプレゼンもしました。

あとは自分の目指すもしくは今就いている職業をクラスの前でプレゼンするという課題もあり、私は日本に住んでいた時はWEBデザイナーをしていたので、そのことについてパワーポイント(Macの人はKeyNote、Google OSの人はGoogle Slides)を用いて発表しました
最低時給や年収など(アメリカの)もキッチリ説明するという方式でした。

エッセイは合計3つか4つほど書いたと思います。

6月〜8月 ENG99

1〜4月の大学準備クラスを無事修了できたとはいえ、あくまでもESL卒業生、つまり英語が第2言語の生徒を対象にしたクラスだったので、このまま英語ネイティブの一般のアメリカ人の生徒とENG101を受けることにまだ強い不安がありました。
そんな中大学のカリキュラムの中にENG101の一つ下のクラスENG99というものが存在するのを知りました。

6月〜8月は夏のセメスターで2ヶ月と短いので、夏休みとして過ごす生徒も多いです。そんなわけでESL99のクラスは全体で10人ほどのこじんまりとした環境で教授との距離もとても近かったです。
ENG99もほとんどがESL出身の生徒で構成されていましたが、その中に一人アメリカで生まれ育った黒人女性がいて、彼女は私と同年代でしたが10代後半で母になり高校を中退しているので、まずカレッジでGED(アメリカの高卒検定)を取ったそうです。そしてこれから大学(カレッジ)に入ろうとしているところでした。

担当教授は40代前半くらいの白人の女性でした。
私はこの先生がとても好きでした。
というのも彼女はフランスに住んでいた経験があり、自国アメリカをとても客観的に見ており、日本人がイメージする白人アメリカ人女性像といい意味でとてもかけ離れていたからです。
先生はアメリカを離れるまでは「アメリカ人はみんな怠惰だ」と思っていたそうですが、フランスに住んでフランス人の仕事よりもバケーションを重視するマインドにとてもビックリし、今まで自分が抱いていたアメリカ人の仕事像というものが大きく変わったそうです。
そんな経験から様々な国や文化の違いというものに対して偏見がなくとても許容的である印象を受けました。

大学の英語クラスでは授業内で課題図書のようなものが存在し、このクラスの指定図書は「Fahrenheit 451(華氏451度)」でした。
本の所持や読書が一切禁止された世界を舞台にした小説で、所持が見つかると「ファイアマン」によって没収され燃やされてしまいます。主人公のガイ・モンターグはファイアマンを務めながらも、ある一人の少女との出会いをきっかけに本が有害だとみなされている社会に疑問を持ち始めます。
政治的プロパガンダやそれに対する市民の反発や抵抗といったメッセージ性も強く、とても興味深い設定ではあるのですが、これを第2言語の英語で読んで理解するのはなかなか難しくて大変でした。
華氏451度とは紙が自然発火する温度のことだそう。
また日本語で読んでみたら抱く印象が随分変わりそう。

華氏451度

先生の授業で一番に印象に残っているのは心理学者のキャロル・S・ドゥエックが提唱したマインドセットの話でした。
私たち人間の中にはFixed mindset(硬直マインドセット)とGrowth mindset(しなやかマインドセット)の2種類が存在していて、硬直マインドセット型は人の能力は生まれながらに決まっていると信じ、テストの点や成績といった可視化できる成功を大事にしていて、他者からの評価を気にするため、失敗や挫折を経験すると悪とみなし成長が止まってしまう。
一方のしなやかマインドセット型は、努力によって人の能力は伸ばしていける、人は成長できると信じている。そのためミスや失敗に心が振り回されない。再び挑戦して成長していけばいいと信じている。
勉強や仕事だけでなく夫婦や人間関係においてもマインドセットによる衝突が生じたり、問題に対する対処の仕方が大きく変わってくる。
そしてキャロル・S・ドゥエックが一貫して強調しているのは、マインドセットというのは固定ではなく「自分で採用して変えられる」ということでした。

マインドセットは文化や環境的な要因が強く、私たちが住む日本を始めアジア圏はやはり1+1=2のような詰め込み型の教育がスタンダードであるため、硬直マインドセットになりやすいと言えるみたいです。
じゃあ東洋が間違っているのか?
なんでも西洋が正解だって言いたいのか?
と思ってしまうところもありますよね。そうやって白黒をつけたがる、それが既に硬直マインドセットなのかも、なんてそんなところまで考えさせられる授業でした。

TED TALKによるマインドセットの話が分かりやすいです

このクラスではアメリカの大学で必要とされる英語力以上に、自分の今の思想や価値観は自分で選んだものなのか、それとも文化や環境によって植え付けられたものなのか、と根底からいろいろと自分に問いかけて向き合うことの大事さを教えてもらいました。
日本に帰ってきて通信制大学で心理学を専攻したり、哲学が好きなのも、自分にキッカケをくれたのはこのクラスだったのかなぁと思うところが大きいです。

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著作者:macrovector/出典:Freepik