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BTS ジョングクが予感させる「グループ発ソロアーティスト」の更新

今回は恐る恐るJUNG KOOKについて思うことを書きます。
最初にお伝えしたいのが、自分はBTSのファンだったこともなければ、ここ最近のK-pop全体像に詳しい人間でもありませんが、あるタイミングから、音楽の仕事をする以上JUNG KOOK、そしてNewJeansの2組はマストでウォッチしなければいけないという義務感に勝手に駆られ、以降は聴き始めたらウッカリ夢中になっていた…といういわゆる、よくいるタイプの音楽リスナーです。

JUNG KOOKにいく前に少しNewJeansに触れたいと思います。私個人の”K-pop再燃”はここから始まりました。
彼女たちがデビューした昨夏。あの鮮烈な「Attention」に、私の中で深く潜っていたK-popへのアンテナが動きました。
正確にいうとK-popへアンテナが動いたのではなく、K-pop的ではなかったから動いた、ということになるかもしれませんが。
というのも、「Hype Boy」や「Cookie」といった1stEPに収められたサウンドは確実にK-popの次の扉を開けたものだったし、今にも咲き誇りそうな完成される前のあどけない佇まいや、計算され尽くした映像から放たれるクリエイティブとスキルフルなダンス。この圧倒的な組み合わせの妙技の数々を目の当たりにし、改めて日本は完全に置いてかれたんだなあ、と呆然としていました。日本人としてはSPEEDの出始めを想起させるものもあったので余計に悔しかったですね。

NewJeansの楽曲の何がすごいのか、一番詳しく言い当てていらっしゃると思うのは宇多丸さんのラジオ『アフター6ジャンクション2』での高橋芳朗さんによる解説なので、気になった方は読んでみてください。
https://miyearnzzlabo.com/archives/96450

彼女たちがゲームチェンジャーと言われる上で一番注意を払ったとされる楽曲とビジュアルコンセプトについて、これまでのK-popとどう違うか、要素を並べて比較すると、
「オラオラ」「異世界」「ビビッド」「張り声」「圧」「足し算」
「完成形」「電子音×重低音」から、「ダウナー」「日常」「パステル」「ウイスパー」「自然体」「引き算」「未完成」「生音×コーラスワーク」
といった具合にほぼ対極化しているのがわかります。
その結果、これまでは聴く方も構えないと勢いに負けてしまうような圧に対して、ぼんやりと、ながら聴きができるようになるまで聴感も体感も変化してきます。とにかく聴きやすいんですね。

とはいえ、BTSが「Dynamite」からはエイティーズサウンドを取り入れたことなどは大きく、業界全体としてもニュートロが根付いたり、音楽的に裾野を広げ始めていたとは思いますが、ここまでジャンルの分岐点を感じたことはなかった。
これはひとえに、HYBE新レーベルADORからの大型新人で、ミン・ヒジンプロデュースのアーティストであり、そのクリエイティブへの力の入り具合が度を越えているという面も含めて、世の中への影響を拡大させる力が違ったのではないかと思います。

前段が長くなりましたが、NewJeansと同じHYBE所属であるJUNG KOOKには、K-popにおけるサウンドの革新性という部分で大いに共通点があります。
今年7月にリリースした「Seven (feat.Latto)」を初めて知ったのは、またもや宇多丸さんのラジオです。https://miyearnzzlabo.com/archives/101365#goog_rewarded

こちらを読むとわかるように、NewJeansの2ndEPから読み解く世界的な2ステップブーム到来について触れつつ「Seven」は2000年代のR&Bの2ステップに寄っているとして、これが2ステップブームに拍車をかけるのでは、と説明されています。
そして、楽曲を聴いた宇多丸さんがとにかく「全レベルが高い」と絶賛。その時点でもう気になって気になって仕方がなかったのですが、聴いてびっくり。

確かにこれ、イントロからしてワクワクしない人います?という完璧な作り。さらに曲開始39秒であっという間にサビに辿り着くという。ここで「曜日もの」であることに気づき、頭をガンと殴られる、みたいな。


興奮して音楽好きとメッセージでやりとりしたのは、『これって「インシンクからジャスティン・ティンバーレイク」「ディスチャからビヨンセ」の更新だよね』でした。
1990年代から2000年代、アメリカのポップシーンでたびたび起こったグループからのソロがヒットを拡大する法則。BTSが勝負していたのはそういう土壌だったのだな、と理解しました。
そんなわけで、そもそも「男性ソロアーティスト」としての格と目線が世界レベルであるJUNG KOOK。先に述べたようなK-popぽいサウンドを今更踏むわけもなく、最初から全米のど真ん中です。

最新曲の「3D」も然り。この曲を手にした時本人はどう思ったのだろう?と想像してしまうくらい、隙のない全買いフレーズのオンパレード。しかもfeat.は「WHATS POPPIN」のJack Harlow。ちょっと懐かしい!

「Seven」「3D」ともに、2000年代のマックス・マーティンが生み出していたような売れ線ポップスのキャッチーさはありつつ、完全に今のリズムトレンドを取り入れているのと、サビに突っ込むのが異様に早い、というか全身がサビと言ってもいい作りは「超今時」だと思います。

これが、現代のモータウンレーベル、hitsville・HYBEの成せる技なのかなと…この2曲を聴くだけで、JUNG KOOKが”グループ発ソロアーティスト”を世界的に更新していく気概であろうことは推して知るべしです。

最後に余談。
ADORのCBO、ミン・ヒジンはSMエンタテインメントで辣腕をふるっていた時代、EXOのアートディレクションもやっていたそうで。
個人的にEXOはデビュー当時から数年かなり注目していたのと、ブレイクし切らないままBTSにポジションを取って代わられた印象が強いんですが、今、当時「抜群にいい」と思っていたMVなどを見返してみると、今でもいけそうなのに…惜しいなあと思うところがぽつぽつありつつ、やっぱり、前述の「曲」とそこに付随するヴォーカリゼーションの部分で、K-popヒットの域を出るのは難しかったと思わざるを得ない。という個人的な納得に落ち着きました。

いや、EXOの実績も尋常じゃあないと思うんですが。さらにそれを上塗りしてくる同期や後進が凄すぎるっていう話で。

EXOに限らず、これだけの質のアーティストたちが大量に日々ポジション争いをしている時点で、韓国音楽業界の発展がめざましい理由は推して知るべし、というところでしょうか。
ここまで読んでくださりありがとうございました。



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