見出し画像

元講師が打ち明ける「歌手やシンガーソングライターを夢見る君へ」:感性について

質問されたことがない・・・ということは?

この記事で書く「感性」については、現役講師時代、質問されたことはない。

でもこの「質問されたことがない」ということがとても重要なのだ。

なぜかと言えば、多くの若い人にとって、とても大事なのに、あまり気づいていないことだからだ。

そして業界の大人は、それを「だまって」利用する・・・それが「感性」だ。


君が持つたったひとつの、だけど一番強いカード「感性」


ここで、歌手やシンガーソングライターを目指す、すべての若者に大声で言いたい。

「君が唯一持っている一番強いカード、それは君の「感性」だ!」

「若い人は、何よりも自分たちの「感性」を一番の武器にしてほしい。」


「感性」が一番強いカードである理由


ベテランのプロミュージシャンには技量や実績で勝てないかもしれない。

すでに成功してお金やコネクションを持っているプロデューサーには頭が上がらないかもしれない。

でも、そういう人たちよりも、実は一番強いカードを持っているのは君のような若い人だということを知っていてほしいのだ。

「年齢について」の記事でも説明したが、音楽を買う人はやっぱり若い人(10代後半~20代)が一番多い。

だからヒットさせる=たくさん売るためには、メインのお客、つまり若い人の好み=感性を知る必要が絶対にある。

でも、若い人の感性というのは、若い人にしかわからないのだ。

君が普段、何かを聴いて、「あ、これいいな」と思ったもの。そう、それそれ。

でも若い本人は、ヒットに不可欠な最強のカードを自分が持っていることに、意外にも気付いていないことが多いんだよなあ。


スターは、若いリスナーが作っている

スターを作るのは、プロデューサーやテレビ、Youtubeなどではない。

無名の歌手・シンガーソングライターをスターに押し上げることができるのは、多くの若い一般リスナーなのだ。

だから何億円とか使って宣伝したってコケることもあるし、発信者自身はあまりお金をかけないYoutubeやTikTokからスターが生まれることもあるのだ。

昔も今も、若い人の感性こそが、この業界の大部分を決めているのだ。


「おじさん」は若い人の感性を「感じる」ことができない


注)ここからベテランの業界人のことを「おじさん」と表記することがある。これは特定の性別などを意味しているわけではなく、年齢を表すための比喩表現なのでご容赦いただきたい。そして「おじさん」の範疇には、私も入っている。

「おじさん」にとって、若い人の考えや好みを、若い人と同じように「感じる」ことは絶対にできない。

ある程度想像したり、お金をかけて調査したりすることはできても、「感じる」ことは絶対にできない。

私の体感上、30歳前半まではなんとかギリギリいけてた。

でも、40歳を超えた頃から限界が見え始めた。10代の若い女の子に、私が練習曲として勧めた曲を聴かせたところ、きょとんとされてしまったのだ。

それまでは生徒の個性に合わせて練習曲を選ぶのが結構得意だった。生徒自身にも楽しんでもらえ、技術面でも最適、練習した後は結構上達するというケースを多数実現していたのだ。

もちろんそのまま練習してもらっても上達しただろうけど、私の選んだ曲の空振り感がね。ボールが通り過ぎた後に振っちゃったくらいの空を切る感じ。

そんな感じで、感性が若い人に通用しなくなった時は、まあまあショックだったなあ。

これは、私が今、音楽の仕事をしていない理由のひとつでもある。
いや、お金欲しいよ。欲もあるよ。でもダマしたくはないじゃない。

人によって多少の誤差はあるにしろ、「おじさん」になってくると若い人の感性はなくなる。まあ、そういうことなのだ。


置いてきぼりになる「おじさん」

「感じる」というのは一瞬の出来事だ。

たとえ今まで何百万枚CDを売りさばいてきた大御所プロデューサーであろうと、若者が新しい音に「共感」している瞬間、おじさんは置いてきぼりになっている。

新しい音に、若者と同じ瞬間には気付けていないのだ。


音楽は「時間」を使った芸術だ。
「一瞬」を逃してしまうというのは結構大きいことだ。


歌手やシンガーソングライターは感性で勝負するもので、その「おじさん」も今まで感性を頼りに数々の仕事を成し遂げてきたに違いない。

だからこそ、自分が若い人の感性に追いつけなくなっていることにも、「おじさん」は敏感に気づいている。


また、ベテランが苦労して得てきた「技術・経験」も、若い人の感性(若い人に売ること)に対してはほとんど無力だったりする。

ベテランの技術を見せれば、「すごい」とは思ってもらえるかもしれない。

でもだからといって、若い人に心の底から「いいじゃんこれ!買お!」とはなかなか思ってもらえないのだ。

「年齢」の記事でも書いたように、中年以上のアーティストにとって、自分たちが若い頃に獲得した当時10代後半~20代のファンをずーっと固定客にしていくことが多いのも、これが一つの要因である。

「だまるおじさん」は、若い人の感性を求めて、いい感じの若い人に「だまって」会おうとする

だから「偉いほうのおじさん」はだまるんだと思う。

若い人の感性を褒めることはできる。しかし、自分にはもう若い人の感性などあるわけがないとは、大々的には言えない。

仕事も来なくなっちゃうかもしれないし。若い人向けのCMとかドラマとかやりたいし(半分冗談だから笑ってね)。

だから、だまって若い人の感性を利用して仕事をするんだと思う。


ただ、中年以上のアーティストだって、基本的に自分の感性には自信をもっているだろうし、そうじゃなきゃできない。

でも、若い人の感性を知りたいとは思っている。だから、若い人は、大御所ミュージシャンやプロデューサーと会ってもらえる可能性がある。

これは音楽業界だけではない。いろいろな業界でも、成功した人が若い人の感性を知りたいから会ってくれるというケースはある。

「乗っかり」もある

最近、街を歩いていたら、ある大御所ミュージシャンらしき人物が、携帯だけで音楽を作ってネットに上げている若い女の子と語らうようなバンクシーっぽい落書きを見た。褒めてた。

でもこれ、私から見たら「乗っかってるなあ」と思ってしまう。

乗り方もうまいのだ。片足だけとか乗せたりするんだ。
それで、もっとすごくなってきたらお尻も乗せてくるんだよなあ。
あ、これは想像ね。

下品な表現になってごめんなさい。

でも、もっと前、一人の女の子の背中に、「おじさんたち」がおんぶで乗っかるような形の「壁の染み」も見たことがあるのだ。

まあでも、どうせタフな世界なんだし、それだって、君もその出会いを利用すればいいじゃないか。まあ「乗っかり」の話も、いつか取り上げよう。

話を戻す。

業界の大人などの「売る側」の人は、自分の古い感性に頼ってもあまり売れないので、若い人と組みたい。
かっこよく言えば、プロデュースしたい。
そのまま言えば、お金や物資を提供して、ちょっと手伝っていたいと思っている。

若い君は、態度は謙虚に、心の中ではしたたかに、もらえるチャンスはどんどん試していくのがよい。

しかし、素直で知識のない若い人を狙った「ダマシ」もある。
そこはくれぐれも気をつけよう。

「ダマシ」については、いずれ別の記事で取り上げたいと思う。


最強のカード「感性」、どんどん使っていこう

若い人は、何よりも自分たちの「感性」を一番の武器にして、どんどんアピールしてほしい。

自分のことを無力だと思ってはダメだ。

誰にでもある人生の一時、平等にもらえる「若い時の感性」。
そこには自信をもっていろいろとチャレンジしてほしい。

でもそれは、自分に「若い感性」があるのかーって、ぼうっとすることじゃないぞ。

自分にしか歌えない歌を追い求め、ひたすら録音するとか、毎日少しずつでもいいから何かすることだ。感性を研ぎ澄ませ。磨け。

私も若い時、あっちにぶつかり、こっちにぶつかり、多いに試させてもらえて、本当に幸運だったと思っている。

ごくたまにだけど、狙いをビシビシ当てることもあった。
あれは楽しかったなあ。

今度は君の番だ。


メインリスナーである君たち若い人たちだけが「いい」と共感できる感性・感覚とは何だろうか?

「おじさん」には入れない、若い人たちだけの共感が、歴代の大物ミュージシャンにも打ち勝つような新しい音楽を生み出すモトになるかもしれない。


そして将来、さらに老化した私は、君たちが作り出す新しい音楽に少し遅れて気づいて、でも楽しみながら体と心を揺さぶっていたい。


そして油断してはいけない。
ピアノやギターの音のように、この世のすべてには頂点と減衰があるのだ。
すべての音楽がそうであるように、それはいつか無音になって終わる。

君もいつか「おじさん」になる。君自身の感性にも減衰があるのだ。

だから若い今の感性を、ありがたく感じ、存分に活用してほしい。

若い人が無敵って意味じゃない


あ、でも若い人が万能・無敵って意味じゃないので、くれぐれも勘違いしないようにしよう。

音楽業界限定の話だ。この業界の客層のメインが若い人だからこそ、若い君の感性が有利になるということ。

だけど周囲は若いライバルだらけなので、やっぱり何かしらの努力は必要。

尊敬できる人には頭を下げて、その経験を少しでも分けてもらえるよう、君もベストを尽くそう。

「経験」は君が好調の時ではなく、不調の時に君を助けてくれるのだ。

切れるカードを増やしていこう

君には「感性」というカードしかないかもよ、という話でもあるのだ。

カードゲームと似ていて、複数のカードで役を作ることで勝っていくもの。

歌手やシンガーソングライターを仕事にしていくには、切れるカードを増やしていくことが絶対に必要だ。それについては今後、別の記事で取り上げていこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?