見出し画像

元講師が打ち明ける「歌手やシンガーソングライターを夢見る君へ」:オーディションについて

オーディションに落ちるとはどういうことか

いきなりだが、歌手やシンガーソングライターを目指す君が、オーディションに応募して、落ちたとする。

その場合、君の気持ちとしては、以下の2つのうちどれが近いだろうか。

①落ち込む(私には才能がない等、悲観する)
②はい次、と思う。

これは「正解」がある。②だ。

もちろん、オーディションに限らず、何かに挑戦して結果が思うようにならない場合、今後へ活かすための改善点を考えるのはいい。

しかし、根本的には②の「はい次、と思う」が「正解」なのだ。

なぜそうなのか。この記事を読んで、オーディションについてある程度知ってもらえれば、その理由がわかり、君のオーディション合格の助けになると思う。

この記事とは、そもそもオーディションとはどんなものなのか、私の考え方を書いていくので、君も読みながら考えてみてほしい。

そうすることで、君が自分なりにオーディション合格のための戦略を練ることができるようになってくれたら嬉しい。


オーディションには「ある基準に合う人」が合格する


オーディションとは、まず、ある企画や基準があり、それに合致する人を選ぶ仕組みだ。


俳優のオーディションを想像してもらうとわかりやすいかもしれない。

例えば、朝ドラのオーディションで、ヒロインの相手役の男性俳優を決めるオーディションがあるとする。

今回は、学園ものとして、美術部の中で出会うという設定にしようか。
ヒロイン(女性)は背が高く、身長170cmとする。

どんな人が合格するだろうか。


高校生なので、制服姿でも違和感がないことが必要だ。

ストーリーや設定にもよるが、よくある感じのドラマなら、ヒロインのほうが背が高いということにはしないため、身長は最低でも180cm以上は欲しい。

朝ドラだったら学生から社会人になることもあるので、もしハイヒールを履くことになれば、相手役の身長は190cmくらいは欲しくなる。

朝ドラ・美術部ということであれば、清潔感があり、スタイルも細身で、きれいな顔の男性がよいのではないか・・・。

そんなオーディションに、黒光りするほどに日焼けした、筋肉もりもりのマッチョな男性が応募したとして、受かるだろうか。

または、顔はかっこいいが、身長160cmの人が受かるだろうか。

これは身体的特徴を批判しているのではないので勘違いしないでね。
役に合うかどうかの話だということ。

何事にも絶対はないが、応募してきた人についてどうこうということは全くなく、この人こそ、役に一番合うと、選ぶ側の人が思う人が合格するのだ。


歌手のオーディションでも「ある基準にあう人が合格する」というのは同じで、はじめからクラブミュージック系の歌手をデビューさせたいとか、基準が明確な場合もあるし、言葉ではっきりと表現できないが、選ぶ側のプロデューサーが頭の中で無意識に基準を持っている場合もあるだろう。

いくら歌がうまくても、容姿が良くても、ロック系の歌い手が求められているオーディションに対して、今の韓国ポップス系の歌い手が合格する可能性は低い。

ずば抜けてよい素材なら、数か月後にそのオーディションではない別の企画でお声がかかるかもしれないが。


「はい次」=君がハマる合格基準に出会うまで、様々なオーディションを受け続けるということ。

すでに気づいた人もいるかもしれないが、オーディションに落ちるということは、「君には才能がない」という意味では全くない。だからいろいろと悲観するのはまさに時間の無駄だ。

つまり、オーディションに落ちた時は「今回は選ぶ側の基準に自分が合わなかったのね」と考えて差し支えない。

まさに「ご縁がなかった」と思えばいいのだ。

しかも実際、大半のオーディションの合格基準は、最終的に選ぶプロデューサーや新人発掘担当者の「勘」なのだ。
そんなものに、と言ってしまうが、そんなものに、受かってもいない君がお付き合いして消耗する必要もない。
この件については別の記事でも取り上げようと思う。

技術力は関係なくはないが、はっきり言って「別問題」なのだ。
確かに君自身はスキルアップに励むべきなのかもしれない。
しかしオーディションだけで言えば、君が技術不足でも、それ以上に何かが抜群によいのなら、合格後に育成すればいい。

大体、マネージメントする側から見て、一番何とでもなるのは技術面なのだ。

普通にレッスンでも地力をつけられるし、納期がないなら、PCでいくらでも直せるし、歌いやすい曲を作るとか、コーラスのお姉さんを呼んでリッチにしてもいいし、別の歌い手やラッパーとのユニットにするなど、手はいくらでもある。

そして、素人同然の歌い手でも、プレレコーディングなどで一流のプロミュージシャンと生でセッションしていけば、ぐんぐん力がついていく。


「何らかの基準に合う人が合格する」ということは、たくさんのオーディションに応募するほど合格しやすくなるということになる。

いろんなオーディションに応募するということは、いろんな合格の基準が増えることになり、当然、君がそれに合致する可能性も増える。
つまり、君がハマる「合格基準」に出会うまで、いろいろなオーディションを受け続ければいいのだ。

だから、もし君が何かのオーディションに落ちたとしても、不合格と知った次の瞬間から、「はい次」と次のオーディションに向けて準備していこう。

連絡すら来ないのなら、連絡が来るまで待つ必要もない。すぐに次のオーディションに取り組もう。


ダマされないコツは、「誰が募集しているのか」「受かったらどうなるのか」をよく見ること。

デビューをつかむ方法の記事でも少し書いたが、オーディションは君たちをダマす人たちがよく使う手でもある。

ここでもおさらいするが、君をダマす人は、君の自信の無さや知識の無さ、不安につけ込む

例えば、ライブハウスを運営する会社が、出演申し込みが少ないので、ライブハウスに出演する人を増やすためにオーディション企画を宣伝する例もある。

有名なオーディション雑誌にもそんな類のオーディションはたくさん載っていて、合格したらデビューまで完全バックアップ!などと、だいたいは書いてある。

だから君は、オーディションの募集を見つけたら、まずは
「誰がやっているのか」
そして
「合格したら具体的にどうなるのか」
それを一番最初に厳密にチェックしてほしいのだ。


はい、ここ最も大事なとこ。テストに出るレベル。

「聞いたこともない会社がやっている」とか
「合格したらどうなるのかがいまいちはっきりしない」とかで、
君の望むデビューの形と一致しないなら、応募すべきではない。

だいたい「デビューまで」って何なのかって話なのだ。


メジャーレコード会社からCM宣伝付きとかドラマ主題歌タイアップとかでデビューできるのか。

君のお金で音源を作って、聞いたこともないサブスクの検索にすらひっかからないような場所にアップロードされるって意味かもしれない。

そして「主催:〇〇」って、英語でかっこよく書いてあるけど、何の会社なのよ。

聞いたことない会社名。
WEBサイト見たけど、かっこいい感じだけど。
有名人の名前は書いてあるけど、メジャーレコード会社ではないないよね・・・。

そんな感じで、しっかり判断してほしいのだ。

デビューには正確な定義はない。だから、音源を作ってYoutubeに上げるだけでもデビューだし、宣伝費を全くかけず、AmazonからCDを買えるようにするだけというのでもデビューになってしまう。

最初の例で言えば、ライブハウスは、基本的にメジャーレコード会社というかメジャーデビューには全くつながっていない。

レコード会社はライブハウスにとってお客様の一人という範囲を出ない。

ごく一部、例えばZeppなどのようにソニーミュージック系列のライブハウスというケースもあるのだが、それにしたって素人がライブでいくら頑張っていても、それがメジャーデビューに直結するわけではないのだ。

ライブハウスを客でいっぱいにして君がライブをやって、そこにレコード会社の人を呼び、さらにそこで君が観客と一体となって素晴らしいパフォーマンスを見せることができれば、メジャーデビューにつながるひっかかりを得られるかもしれない。

それはライブハウスがメジャーデビューにつながっているのではなく、あくまでメジャーレコード会社の人に見せることがメジャーデビューへの入り口になるのだ。当たり前なんだけどね。

それならオーディションじゃなくても、Youtubeで100万再生とかのほうがよっぽどお声がかかる可能性が高いのだ。

ほかにも例を挙げればきりがないのだけど・・・。

君にお金を払って音源を作って欲しい、何かの販売業が若い人を集めたい、そんな、いろんな「オーディション」があるのだ。

特に女性に気をつけてほしいのが、選ぶ側の最終目的が歌手ではない歌手オーデションだ。

最終的にはグラビアアイドルを売り出したいと思っている人が、歌手募集のオーディションをするというのは昔からある。

有名なミュージシャンや音楽プロデューサーと知り合いだから、あまり時間もかからずデビューできるよ、などとうまいことを言って、歌のレッスンも一応はするけれど、半年後にはなんだかんだ水着を着させて写真を撮っていく、という流れだ。

歌手になりたい、でも自信がないから、どんな歌手になりたいとかはっきり決められない、言えない。そんな君の心の隙間に、口の達者な大人が入り込んで来る。気持ち悪いでしょ。

だから自信などなくていいので、「私はこうなりたい!」というのをしっかり持つことだ。ゆずれないラインをしっかり設定しよう。
水着とか歌手以外の仕事とか、押し切られてはいけない。
そんな人とはすぐ離れるんだ。自分の体と人生は自分で守るんだ。

また、ダマシまではいかないが「おいしくない」例としては、企画物のオーディションがある。

企画物だとしても、メジャーレコード会社がやっていたり、大物ミュージシャンが音楽制作を担当したりするのは間違いないのだけれど・・・。

よくあるのが、ある有名企業が何かの商品を宣伝するために歌を作って新人歌手をデビューさせるというパターンだ。

このような企画物の場合、君をアーティストとして長期的に育てるとか、長期的に一緒に仕事をしていくという考え方はない。本当にその場限りだ。

そもそもデビューまでいかず、流れやすい。
その企業の、音楽にはド素人の社長の一言で中止になることも全然ある。
だから合格してもあまりおいしくはないのだ。

バラエティー番組とか、特にローカルテレビ局とかの企画とかも基本的にはおいしくないと思ってよい。
タレント自身がこっそりとプロデュースとかもおいしくない。

こういうおいしくないオーディションもオーディション雑誌などにデカデカと載っていることはよくある。

ただ君が、それでもいい、とにかくチャンスが欲しい、と、おいしくないことに納得できるなら応募してもいいとは思う。

そして、歌手やシンガーソングライターになりたい人にとって、アイドルオーディションも基本的にはおいしくない。
詳しくはまた別の記事で書こうと思う。


まあ、もっとひどい「オーディション」もたくさんあるのだが、根本的には、純粋に歌手やシンガーソングライターになりたい気持ちはありつつ、知識に乏しく、自信がない若者がカモにされている。

だいたい、知識に乏しい普通の若い人にとって、オーディションの募集記事を読んでいるだけで、ちょっとドキドキしてくる。

それだけでに「吊り橋効果」に入っちゃってるのだ。

吊り橋に異性を連れてきて、相手をドキドキさせながら告白すると成功しやすいアレだ。

ドキドキした時点で君の冷静な判断能力はすでに何割か失われている。


そんな感じで、「デビューまで完全バックアップ!」とか「デビューを目指せる!」とかいう文章を見ると、「君が勝手に」デビューまでの道のりがあって、デビューできることが決まっているというのを想像してしまう。

もう一度言うぞ。募集する側はズル賢いから、「君が思うようなデビュー」は約束しない。
君が妄想で半自動的に都合のよいデビュー確約を想像してしまうのだ。


もう一つ例を言おうか。

よくある失敗ワードが「レーベル」だ。
「〇〇レーベルからデビュー」とかって書いてあるやつのこと。

「レーベル」とはブランド名のことだ。
実は、君でも誰にでも、「レーベル」は作れる。

ブランドとは何か。洋服のブランドで例えてみよう。

よくショッピングモールにある洋服屋、ニコアンドとか、グローバルワークとか、ローリーズファームとか、レイジブルーとか、店は1個ずつ違うが、これらの会社は全部「アダストリア」という1つの会社が持つブランドなのだ。

検索してアダストリアの会社のWEBサイトを見てみよう。
20個くらいブランドがある。

ショッピングモールで5店くらいの違う店があると思っていたのが、同じ会社のブランドに過ぎないということなのだ。

レーベルとはもともと、お酒などビンのラベルのことであり、昔のレコードのラベルから転じて、音楽のブランド名のことをレーベルというようになった。

だからレーベルに法的な基準などないし、誰でもいくつでも作れる。

もちろんメジャーレコード会社もレーベルを持っているし、有名ミュージシャンも持っている場合がある。

もっというと、全然有名でもメジャーでもない会社が持っている場合もあるし、個人の素人が持っていても全部「レーベル」なのだ。



オーディションの怖さをいくつか

怖い見出しになってしまったが、少なくてもメジャーレコード会社のオーディションで、君自身がとても怖い思いをすることはないのでご安心を。

それとは別の怖さの話。

私はオーディションの審査員もしたことがある。
選ぶ側に立って見てみると、オーディションって怖いなと実感したのだ。

オーディションとは、人と人を並べて、比べながら見ることだ。

どっちがいいか、というのは比べるとわかる。

だからオーディションで1次2次の書類、3次の歌唱などといように、同じところに複数の人たちを集めて並べて見るのだ。

1人の人しかいなければ、例えば「きれいだな」「歌がうまいな」と思っても、それ以上のことにはなりにくい。思うだけのことなので、どのくらいそう思うのかの程度がはっきりしないのだ。

でも複数人を並べて同時に容姿や個性を見て、歌を聴くと、敢えて言うが「優れている人」が浮き彫りになってしまうのだ。

3次に20人くらいのオーディションで浮き彫りになった人が、次の4次でまた浮き彫りになったりすると、審査員が「いいな」と思うその「程度」がはっきりしてきて、やっぱりこの人の華はすごいな、品はすごいな、というのが際立って光り輝いてくるのだ。おーこわい。

歌手でもモデル体型の人ってよくいるが、モデル体型って、やっぱりオーディションでは強い。誰かと並べるたびに、ますます光って見えてくる。

もし機会があれば、現役バリバリのモデルさんを生で見てみてほしい。
性別にかかわらず、びっくりするくらい美しい。
そこも研究するしかない。モデル級じゃなくても、やっぱりなるべく自分が思うかっこよさを追求する必要はある。

あ、モデル体型じゃないと合格しないって意味じゃないからね。

メジャーな歌手たちをみればわかるように、それぞれに魅力はいろいろなものがあるので誤解しないように。


じゃもう一つ。

選ぶ側にも凄腕のプロというのがいるらしい。

ある時、生徒の一人がオーディションに受かった。

当時まだ高校1年生だったと思う。地方に住んでいる、地味な子だった。

かわいいにはかわいいが、ほんとにまだ子どもな感じの顔立ちで、白いヘルメットをかぶって自転車に乗って通学していても全く違和感のない、態度もおとなしくて素直な、素朴な女の子だった。

しかし、オーディションに合格後、2年くらい経つと、たまーにしか東京に行かないにも関わらず、しっかりお姉さんな感じのきれいな女性になっていった。

何を言っているのかというと、ある一部の凄腕の新人発掘担当の眼力には、数年後にどれくらいきれいになるのか見切ることができるものがあるらしい、ということなのだ。

これもこわいよねー。

あるテレビ局の新人女子アナとか、毎年間違いなく華のあるきれい女性であるのを見たりすると、そういうプロが選んでんのかなーと思ってしまう。

私が駆け出しの講師だったころ、自分の生徒でむちゃくちゃ可愛い女子高生がいた。

こんなにかわいいならデビューできる可能性は高いと、若く駆け出しの講師だった私は思っていた。

そこで、何かにつけて当時レッスンしていたレコード会社の人たちに推していたのだった。

ある日、そのレコード会社の人たちと飲み会をしていた時、そのレコード会社のお偉方の一人から私は一喝されたことがある。
※昔なので汚い言葉になります。よい子は真似しないように。

「お前!かわいいっていうのは「親戚の子がかわいい」っていうのとは違うんだぞ!」

そう、そうなのだ。ビジネスなのだ。

メジャーレコード会社にいる、ごく限られた、おそらくベテランの新人発掘担当は、そういうプロとしての眼力で、歌も容姿もタレント性についても「この子はどのくらい伸びしろがあるのか」、そういうところまで含めて応募者を見ている。

だから、素朴に見える子だったのが、数年後にちゃんと、びっくりするほどきれいになっていたり、艶っぽい歌を歌えるようになっていたりするのだ。

たまにライブ経験もないような女子高生がメジャーレコード会社のオーディションで合格することもあるが、実際それくらいの素材ということなのだ。
全然侮れないというか、残念ながら基本勝てない。


もうひとつ言っちゃおう。

これもあるレコード会社の新人発掘担当の人から聞いた言葉だ。

初めてお会いした時、当時そのレコード会社の人はなぜかほぼ全員黒いパーカー姿で、その人は汗をかきながら始終慌ただしくしていた。

その会話の中で、

「いやー、うちってきれいな人なら受かるって勘違いされちゃってるんですけど困るんですよねー。きれいなだけじゃダメなんですよー。きれいなだけじゃなくて、歌もプロ級じゃないと受からないし、さらにもう一つ二つウリがないとデビューなんかできないんですけどねー。あははー。」

これは怖いっちゃ怖いけど、まあ当たり前なんだよね。

その当時、その会社は大きいレコード会社で、オーディションで合格した後も、1軍、2軍、3軍のような仕組みがあって、その中でさらに勝ち上がらないとデビューできない仕組みだったそうだ。

まあこれだけでも、わかる人にわかってしまうのでこのくらいにしておこう。


最後にもう一つ。

あるメジャーレコード会社でオーディションに合格するような人は、別のメジャーレコード会社でもオーディションに受かっていることがよくある。

本当だから仕方ない。

何十回と受けても1次も通らない人も珍しくない中で、1年で3つも4つも受かってしまう人もいる。それもまたオーディションの怖い真実だ。

複数のメジャーレコード会社のオーディションに合格していても、メジャーレコード会社の場合、しっかりと契約するまで、その人を独占することはできない。

これが怪しい会社だと、不適切に「抱える」という現象があるのだが、またそれは別の機会にする。

今はわからないが、昔は大きいレコード会社では年一で新人発掘担当が集まる会議があって、どの人をデビューさせるか決めていたらしい。

そこで、各新人発掘担当が自分の推しをアピールする。
アピール内容はおそらく、歌唱の模様の録画であったり、ライブ活動の成果だったりしただろう。

ある年の会議で、ある新人発掘担当は自分の推しの人をデビューさせることに失敗した。

しかし、その推されていた人は、半年もたたないうちに別のレコード会社からメジャーデビューし、しかもデビューシングルから爆発的に売れてしまった。

その後、大物を逃した新人発掘担当の机の後ろの壁には、別のレコード会社で大ブレイクした自身の推しのCDジャケット(もちろんライバル会社の)が大量に貼られていたらしい。

君がメジャーレコード会社のオーディションに合格するまでには、こういう環境での競争となる。

君がもしメジャーレコード会社のオーディションに同時に複数合格できるような人になって、君からレコード会社の担当にプレッシャーをかけられるようになれば最高だ。


オーディションを受けまくった知り合いの話

また昔話になるが、私の知り合いの話。

その知り合いはいいやつだったが、私と同じ凡人で、いっちゃ悪いが、かっこ悪かった。

この記事シリーズで書いているような知識は、もちろん何も知らない。

でも、根性はあるやつで、何度も何度もいろいろなオーディションに応募していた。

仕方ないんだけど、暗中模索の中、稚拙なプロフィール、そして力不足の歌や音源で勝負をせざるを得なかった。

もちろん、ほぼ全部、1次の書類で落ちていた。

それでも何十回も出していると、ごくたまに1個くらい、間違えて(失礼!)書類審査を通ってしまうことがあった。

そこで、2次の歌唱ビデオ撮り審査に進むのだが、もちろんあっけなく落ちて終わった。

しかし、そんな間違えて残った2次審査を3回くらい落ちた頃、その知り合いは変わり始めた。

よくわからない直毛だった髪型をパーマにして髪の毛の色を変え、よくわからない格好だったのが当時流行のダンサーのようなド派手な服装になっていった。

「なんか、こうしたほうがいいと思って・・・」口下手な知り合いはそう言っていた。

彼は見たのだ。
2次審査に残った人たちを。
当然歌も聴いただろう。

その中で、彼なりに「2次審査に残っている人ってこういう人たちなのか」という何かしらの共通項を見つけたのだと思う。

そうすると、稀に2次も突破することができるようになっていった。

そして結局、彼の人生で2・3度、オーディションの最終審査まで残るようになったのだった。

彼は不器用だったが諦めないことで、自分の力で自分の次のステージを切り開き、そこで出会った人たちからいろんなことを吸収し、オーディションに合格できるレベルの実力を自力で養っていったのだった。

しかし結局、彼がメジャーデビューすることはなかった。


私は講師になった後、引っ越ししたりして、彼とは疎遠になってしまい、今は連絡先も、どうしているのかもわからない。


でも、凡人だからと言って、知識がないからと言って、チャンスが掴めないわけではない。

やっぱり、なんだかんだ本当のオーディションは厳しい。

それでも泥臭く、ほんの少しずつでも、諦めないで進めば何か変わるのだ。

君にこの事実が伝わって、君自身で自分の人生を切り開いてくれたら嬉しい。

切り開くってのは、歌手やシンガーソングライターだけを目指せってことじゃない。

よく考えた末に、歌手やシンガーソングライターを諦めて別のドアを開けるのもまた、人生を切り開くということだ。

どのような道であれ、君の心の底の本音で、君が進みたい人生を進めるようになってほしいのだ。


オーディションのヒント:小ネタをいくつか


君が誰か別のアーティストの話をするときは、必ず名前に「さん」をつけよう。

挨拶も、業界では昼も夜も働く場合があるため、何時でも「おはようございます」なのだが、まだプロではない君の場合、昼間なら「こんにちは」でいい。
そして部屋に入る時、出る時は「失礼します」としっかり挨拶しよう。

オーディションで「おはようございます」などと、まだ業界で働いてもいないのに業界ぶった挨拶をすると、審査員から不快に思われる場合がある。



君があるアーティストを好きだったとする。

で、そのアーティストのような歌手やシンガーソングライターになりたかったとする。

その場合、好きなアーティストの所属するレコード会社や事務所のオーディションに応募しても受かりにくい。キャラがかぶるからだ。

君が好きなアーティストのようなタイプがいないレコード会社を狙うのはアリ。

逆に、「あそこは今、自分みたいなタイプいないな」というような状況はチャンスとも言える。

まあつまり、すでに売れている人とは違う存在にならないと、オーディションには合格しないのだ。


また、最近はあまりないのだが、俳優で有名な事務所が歌手部門を立ち上げるケースとかもカブることが少ないのでチャンスだと言える。
そういうケースでは、とにかく誰かをオーディションに合格させないと事業が進まないので、比較的ではあるが受かりやすいのだ。


メジャーレコード会社は、会社によってけっこう社風の違いが大きい。
ある面では温かく、ある面ではビジネスライクで厳しいのは共通なんだが、その質が違う。私が現役講師の時に感じた印象の話だけど。
所属しているアーティストの感じをよく見てみるとなんとなく感じることができるかもしれない。


君が好きなアーティストの曲をよく練習していたとして、その好きなアーティストの所属するレコード会社のオーディションで、その好きなアーティストの歌を歌うのはハンデが大きい。

なぜなら、そのレコード会社の人だけに、「本物の歌」を何度も聴いている可能性が高いからだ。自然とハードルが上がるのよ。

審査員側も「敢えて歌うのかー。よほど自信があるのか、うかつなのか・・・。」と思う場合がある。


君がダンス系の曲が好きだとしても、歌唱審査の場合は、ロック系、バラード、ジャズ系などのいくつかの別ジャンルの曲もその場で歌える準備をしておこう。

最初に歌った時に、審査員が「○○ジャンルなら合うかも」と思うことがあるのだ。うまくハマると、相手に気に入ってもらえる場合がある。

「何か〇〇みたいな歌とか歌える?」と聞かれた時、君がジャンルに強いこだわりがない場合、チャンスだ。

もしこの時、「歌えないです」と答えれば「そっか、じゃOK」と言われて終わる。

最近の若い人はわりと敏感なのだが、最近はYoutubeでもなんでも音源やプロフィール写真などのクオリティは高い。だからよく研究しよう。

君が学生なら、写真や映像、メイクの学校に行っている人と仲良くなろう。例えば君が被写体として練習台になる代わりに、君にできないことは助けてもらうなど、頭を使って協力してもらうのだ。



写真にしろ、歌唱審査にしろ、メイクや髪型、服装などもしっかり見ている。

なぜそうなの?と聞かれたら、明確に答えられるようにしておこう。

「自分の思い」優先でいいが、無意味に恥ずかしがってダボダボの服よりは、体型がある程度わかる服(ピチピチのエロい服って意味じゃないぞ)のほうが普通はいい。

ただ、個性として特にこだわりがあれば、ファッションでも表現していいと思う。



大きいレコード会社の場合、新人発掘担当者が複数いる場合がある。
その場合、ある担当には落とされても、別の人からは評価される場合がある

私がこのケースを見たのは、ある超有名アーティストが直接オーディションしてプロデュースするという企画の歌唱審査の時だった。

ある生徒が応募して、歌唱審査では、直接審査した超有名アーティストがその生徒の歌をその場で褒めていた。

「今までオーディション受けたことないの?」

「〇〇(そのアーティストの所属レコード会社)を受けたんですけど、歌唱審査で落ちました・・・。」

その時、アーティストの隣に座っていた新人発掘担当のわりと偉いほうの人の顔が凍り付いていた。

その人はやや震え声で、

「誰が見てたんすかねえ。今度会議で言っときます。こりゃ大ミスだ。」

こんな風に、同じレコード会社でも、審査の担当者が変われば評価も変わるというのは知っておいていいと思う。

ちなみにその超有名アーティストは、すごく真剣に参加者全員の歌を聴き、いろいろと参加者と会話しながら、各人の思いなどを聞いていた。

ちなみにそのプロデュース企画は企画ごと流れてしまったようで、その後、そのアーティストによるプロデュースでのデビューというのはなかったように記憶している。



唐突だか、出来上がってる感じがあると合格しにくい。

出来上がってる感というのは、例えばアコースティックギターの弾き語りで、オリジナル曲を作って歌ってライブも経験していて、普通の人からすると「上手いね」とか褒めてもらえるのだが、一通りできてまとまってはいるのだが、なんかこの先、何も起こらなさそうというか変わらなさそうというか…わかるだろうか。あと、メイクとか服装とかキャラとか、個性的なのはいいのだが、ガチガチすぎる場合とか。

君をマネージメントする側からすると、未熟でも発展途上なほうがいいのだ。
また別の記事で書くが、オーディション合格後、「どうやって売るか」という戦略を決めてデビューするわけだが、出来上がってる感じが固いと、柔軟に動けないと思われがちなのだ。

どこか思いっきり変わっておもしろくなりそう、というか。そういう何かが豊富にあるといい。そういう「化けるかも」という要素は、君からハッキリ出ていても、にじみ出ている感じでもいい。

もし君が、やれることはやり尽くしていて、何度もオーディションに落ちていて、自分自身を出来上がってる感じだと自覚しているのなら、今までのスタイルを復旧できないほど壊して、自分でもどうなるかわからないほどやり方を変えてしまうか、いっそ、もうレコード会社に頼らず、自主制作+ライブ活動とか、サウンドクラウド、YouTubeなどで直接稼ぐ道に進むかということになるだろう。


「お腹いっぱい」という歌も評価されにくい。
「お腹いっぱい」というのは、1曲に詰め込み過ぎているというパターンのことだ。

君がなんとかこの1曲で爪跡を残そうとして、いろんな表現やテクニックなどを詰め込み過ぎると、聴いている側は「お腹いっぱい」になってしまう。これはライブでも作曲でも同じなのだが、あまり上手くない。

「もっと聴きたいな」と思わせるほうがいいのだ。だからチラ見せのほうがいい。1コーラスしか歌えなくても不満に思う必要は全くない。最初の一声で、君の何かの魅力をさりげなく、でも確実に「チラ見せ」して、聴く側に「この人には、もっといろいろなものがありそう」と想像させられるとよい。

フルコーラスを歌わせる、または数曲を歌わせるという場合でも、歌いきる基礎力があるのか、いくつかのジャンルを歌うとどうなるのかなど、それはそれで別の面を見るということなる。それにしても、1曲でお腹いっぱいにするのは上手くないのだ。



例えば書類審査を突破して、カラオケボックスとかでビデオ撮影審査などがあったとする。

そこで撮影までの間、別室でほかの受験者とともに待たされることもあるが、その前室での君の態度や言動がチェックされている場合がある。

長く一緒に仕事をする人を選んでいるので当然だ。
性格面もしっかり見ているので気をつけてね。

まあ、オーディションについてはこんなところだろうか。
何か思い出したら追記するかもしれないので、この記事もたまーに再読してみてほしい。

君の健闘を祈る。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?