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初来日のバイデン氏が超・重要視する「IPEF」とは? 日本人が知らない“米国の思惑”

ITと経営の融合でビジネスの課題を解決するビジネス+ITに寄稿しました。

バイデン米大統領は就任後初となる来日に合わせて、米国主導の新たな経済連携「インド太平洋経済枠組み(IPEF:アイペフ)」の発足に向けた協議の開始を表明しました。

日本も岸田総理大臣が参加を表明しており、計13カ国で発足する見通しです。バイデン大統領が対中国などで重要視しているIPEFは法的な拘束力を持たない「ゆるい連携」ではありますが、インド太平洋地域で米国型国際基準の巻き返しを狙っています。

しかし米国がIPEFで最重要課題と位置付けるデジタル基準の内容を分析すると、国際基準の巻き返しの先を見据えた米国の思惑が浮かび上がってきました。

国境を越えたデータの自由な流れに厳しい制約をかける欧州基準や、データが生み出される国のサーバのみにデータを保持しなければならない、あるいはデータ処理を地元のみで行わなければならないとする中国基準、米IT企業が締め出される恐れのある保護主義的なデジタルインフラ建設および自国のデジタル製品優遇の枠組みなどを、インド太平洋地域で阻止してゆくことが主眼となります。

また、インド太平洋地域では、通関が従来の紙の書類で行われることが多く、関税支払いなどでも最新フィンテックが導入されていません。だからこそ、通関インフラや決済の面において、世界最先端をいく米IT企業のクラウドサービスや人工知能(AI)技術、フィンテックなどの潜在的市場として極めて魅力的なのです。さらに、米IT企業が垂ぜんのグローバル通商データに関与できる機会であることは、言うまでもありません。

米国商工会議所が2022年2月に提出したIPEFに関する建議書で、「デジタル経済は米経済のかなめ」「通商こそが米デジタル経済成長のカギ」と述べたゆえんです。また、「米国のデジタル製品に対する(欧州基準や中国基準など)グローバルな障壁は高まっており」、「米国に与えられた時間は少ない」との認識が米国側にはあります。

構想されるIPEFのルールは、「規制撤廃」「ボーダーレス」「手続きの透明化」「効率性の追求」など、米国式のデジタル経済や自由貿易と相性の良いものばかりです。

脱グローバル化の流れが強まる世界において、バイデン政権が打ち出したIPEFがどれほどの成功を収めることができるのか、スケールの大きいテストケースとして大いに注目されるところです。分析を試みましたので、ぜひご一読ください。

ヤフコメです。

(冒頭の写真は、バイデン大統領のフェイスブックより)

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