見出し画像

おとしごろ離婚 substory001_保証人への報告。やさしさに触れた西新宿の夜。

婚姻届の保証人はBARの人。

離婚を決めて、早々に報告へ行ったのは西新宿だった。
大通りを少し行き、見慣れた階段を降りるとジョンとヨーコのイラストが迎えてくれた。

ドアを開けると、天井の高いシックな店内に、シルクスクリーンの絵が映える額縁。
たっぷりしたカウンターには数名、見知った顔の常連さんがいてグラスを傾けている。

「いらっしゃい。今日は一人?」
「はい、ご無沙汰しています。」
「そう、会えて嬉しいわ。どうぞ、好きなとこ座ってね。」

よく清掃の行き届いたビールサーバーの正面に座ることにした。

「よぉ、元気か?」
常連さんが声をかけてくれる。
「はい、、なんとか 笑」
「すみません、生ビールください。後お料理を少し。」

滑らかな泡に覆われたビールを飲んで、打ち明け話への勇気をこっくり蓄えた。
なにしろ、婚姻届の保証人になってくれた1人がこのBARの人なのだ。

大きく息を吸い込んで。

しばらく常連さんたちと談笑しながら過ごした。

「はい、お待たせしました。鶏モモの山椒焼きと、瓢亭卵ね。」
「わぁ〜〜!ありがとうございます!嬉しい、久しぶりの山椒焼き!」
「ふふ、ゆっくり召し上がって」

BARだけど、食事も美味しいお店でマリアージュを楽しめる。

漬け込んだ鶏モモが、皮面はカリッと、
身はふっくらジューシーに蒸し焼きにされ、粉山椒と実山椒が合わさって素晴らしい味わい。お野菜が添えられているのも嬉しい。

瓢亭卵は、京都にある瓢亭さんがしている茹で方でつくった茹で卵。
白身も黄身も固まりすぎずプルプルしていて、なんとも不思議。
半分に切られていて、お醤油とごま塩で楽しめる。

「すみません、白ワインをお願いします。」
鶏とビール、鶏とワイン。話のキッカケを見計らいながら卵を口に運ぶ。

「はい、ロス・ヴァスコスの白ね。」
「それで?今日は?」

きた・・。
少し鼓動が早くなる。
大きく息を吸い込んで、切り出した。

「ご報告があって、あの、実は、離婚をすることになりまして・・」
「あら、そうなの」
「は、はい。あの、結婚のときには保証人になっていただいたので申し訳なくて、ご報告しなきゃって・・」
「なにを言ってるのよ、そんなことは気にしなくていいわ。大変だったわね。だって、もう決めたんでしょ?」
「はい・・会話が成り立たなくてとっても大変でしたが、カウンセラーさんにお願いしたりして、何度も話し合いをして。決めました。」
「そう・・。人生色々あるわよね。私達はいつだってayaの味方よ、困ったらまた話にきて。」

カウンターを囲む常連さん、お店の皆から温かい目線を送られ、本当に心強く、心が暖かくなった。

「ありがとうございます・・!」
「はぁ、緊張しました 笑。なんかお腹空いてきました!」
無事に報告を済ませ、ほんのひと時、現実からトリップして旧知の方と絆を深めた夜となりました。


今回もお読みいただき、ありがとうございました。
おとしごろを迎えた私の、生きる源。五感や空気感が伝わっていたらいいなぁ。
ここに辿り着いてお読みいただいた方が少しでも楽しんでいただけますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?