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【罪の轍】 奥田英郎著 読書感想

荒川区でおきた殺人事件。
北海道の礼文島でおきた放火強盗事件。
上野で発生した空き巣未遂事件。
浅草で誘拐事件が発生。
新宿のホテルでホステスの死体が発見される。
全ての事件の背後に必ず現れる青年の存在

一人の青年を軸に発生していく様々な事件を
解決すべく、警察が必死の捜査を進めていく。

警察の地道な捜査。警察内部の派閥争い。
新聞社や労働者連合会との攻防。
昭和38年という時代背景上、携帯電話は勿論、
パーソナルコンピューターすら捜査には
登場しない。家庭電話すら珍しい時代。
名探偵も敏腕刑事も登場しない。

実際の事件捜査はもっともっと地味で大変なんだとは思うが、
現場から発見される何かから天才的なひらめきで
事件を解決する話に比べ、とてもリアルに感じた。

犯人の人物背景や犯行に至る経緯なども、
緻密なアリバイ工作や繊細なトリックを創りこむ
作品に比べ、この物語の犯人の犯行は
とてもリアルに見えて、より恐ろしく感じた。
実際の事件をモデルに書いた小説というのも、
とても興味深かった。

後半に描かれている犯人の幼少期の出来事が、
ただただ事件を起こした犯人だけが悪いで
片づけてはいけない物語であると。
犯罪は絶対に許してはいけないが、
人間は様々な事情を抱えて生きているん
だなと、改めて心に刻むきっかけになりました。
そして小説としてとても面白く、
一気読みしてしまった作品でした。
興味がある方は是非!!


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