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SS:孤高の月

 凍てつく空気。こぼれた息は白く。
 静かな雄叫びが闇夜にひびを入れる。
 振り返ると、天を仰ぐ彼の姿があった。

 気高く、誇りに満ちて。
 しかし、どこか寂しく、物悲しく。
 闇夜に浮かぶ白い月のように私には思われた。

 せめて、彼のそばにいることができるなら。
 少しはその痛みも苦しみも、分かち合えるのに。

 それを決して許さなかった彼の強い瞳が、輝く月のように凛としていて。
 私は、ただ、その場を後にするしかなかった。

 彼の頬に一筋、流れるものが見えた。
 けれどそれは、月の光が彼の肌の上で踊ってみせただけだったのかもしれない。

 彼の孤独を癒やしてくれるものは。
 彼の心の空白を埋めてくれるものは。
 この世界のどこに眠っているのだろう。


画像:pixabay.comよりfreefaithgraphics さんからお借りしました。
https://pixabay.com/ja/満月-月-月光-空-雲-泊-暗い-自然-スペース-宇宙-595653/


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