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オオトパンの持続可能なパン屋づくり⑥ひとりで作らない決意

パン屋のこだわりと独りよがり

パン職人は、「自分にしか作れないパン」を追求する。粉の配合、捏ねる作業、発酵、合わせる具材と成形、そして焼成。一つでも違えば、それはまるで違うパンになる。

だからこそ、職人技の世界であると言えるのだが、果たして本当に「その人にしか作れないパン」なんてあるのだろうか?

それを「こだわり」と呼べばかっこいいが、それを秘伝とすることで、職人の労働時間が増えていき疲弊してしまっては元も子もない。
お店を出して1年も経たずに体調を崩してしまった私(しかも三人の子育て中)がパン屋を続ける以上、私にしか作れないパンを卒業しなければならない。自分のスキルを見せつけるパンではなく、スタッフがチームで作れるパンに変化しなければならないのだ。
それも、経験が少ないスタッフでも作れるパン作りだ。

パンの経過地点、終着点を共有する

パン作りは気温や湿度に左右される。一番大切なのは見極めるための観察力だと思う。
気温や湿度が違うと「あれ?なんかいつもと違うな。」と気づく。寒い時は発酵が遅いし、暑い時は発酵が早い。それに伴い生地の味も変化する。

毎日毎日、パンと向き合っていればその変化は肌感覚でわかる。生地の触感や温度や香りなどで発酵しすぎていることがわかれば、その後の作業を調整して、同じくらいの終着点に持っていくことを目指す。同じレシピの配合でも職人や店によって出来上がりが違うのは、この終着点の設定が違うからだ。
また、パン作りを始めたばかりの人が毎回出来上がりが変わってしまうのは、終着点が見えていないから。

では、何年もパンのことばっかり考えて作り続けている人間とそうでない人間がその終着点を共有するにはどうしたら良いだろう。

今考えていることは3つ

・まずは食べて味(終着点)をわかってもらうこと
・工程ごとのポイント(経過地点)を合わせていくこと
・温度と生地の変化を掴むこと

パン作りに関わる作業をスタッフに伝えようとした時、たとえば具合を混ぜる作業1つとっても私が思っているイメージと初めてやるスタッフでは全然違う。もちろん初めから同じようにはできない。

必ず同じようにしなければいけない部分とそうでない部分がある。工程のポイントとは、必ず同じようにしなければいけない部分。そこさえ掴んでいればOKという部分だ。それを押さえておくことで失敗はなくなる。

この部分は動画にして伝えるのが早いと思っている。

私はやらない!という手放す決意と失敗の共有

自分が作ってきたパン作りを他人に伝える時に一番の壁になるのは、「自分がやったほうが早い」と他のスタッフに作業を委ねられないことかもしれないと思う。

もしかしたら失敗するかもしれない。伝えきれずに間違えてしまうかもしれない。だったら自分がやったほうが早い、という気持ちももちろんあるけれど、その気持ちをグッと押さえて、「私がやらない!」という私自身の決意が必要だ。
たとえそれで失敗が起こったとしても、私自身もたくさん失敗したからこそ正解が作れてきた部分があるし、今でもたくさん失敗をする。失敗から生まれることがたくさんある。

失敗が起こった時には、なんでそうなったんだろう?と考えていけば次は失敗しない。そんなに難しいことではない。
それを繰り返していけば、自ずと失敗はなくなる。

私が10年前、ホームベーカリーから始めたパン作り。最初はただひたすら、パン作りという行為に没頭し、発酵の世界に夢中になっていたただの主婦だ。そこから知人へパンを配ること、イベント販売、カフェでの間借り販売と段階を経て、お店を持つという一つの経過点に到達した。
そしてこれからはその技術を少しずつ手放していくフェーズに入っていく。

何かを達成するごとに手放すことが増えるってこういうことなのかな、と思っている。

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