正義もねえ!ましてや勇者なんて遅れても来ねえ!この世は食事!パーリナイッ!

こちらの作品は
雨の中でひとりさん【勇者は遅れてやってくる
タキさん【間に合わなかった勇者
元木一人さん【食事
雪人形さん【進めよ勇者。誰がために。

による創作シェアードワールドになっちゃったショートショート集のショートショートになります☆

先に本四作をお読みいただくとより一層楽しみが増すでしょう♪(^-^;

※残酷描写あり

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「おい!レイン!また食事にありつけなかったんだってな?」
「はははっ!小せえ小せえ」
「そんな小せえ角じゃ、獲物も狩れねえ」
「おい!邪魔だ!どけ!」

ドスン!ぐっ!
痛っ!

くそっ!

「軍団長が今日のディナーをお持ち帰りだ!今日はパーティーだぜ!」
「ひゃほー♪」

僕も行かなきゃ。少しでも食事しないと……
ドスン!うわっ!

「邪魔だ!歩くの遅えんだよ!」

ドスン!ガチャ~ン!
痛え~。

「お前は動かない獲物でも狩れねえな」
(わははははは!)
(がははははは!)

はぁはぁはぁはぁ。
ゴクリ!あそこがディナー会場か。
もう少しだ。
遠くで人間の叫び声が聞こえる。

ぎゃ~~~
ひぃ~~~た、助けて~~~~

「軍団長!どうやってこんなにも沢山の人間を連れてきたんです?」

軍団長は、質問してきた魔物を真っ二つに引き裂いた。
「おい!そこの人間。この魔物食っていいぞ!」
「うっ、うえ~~~」
人間が嘔吐した。

真っ二つに引き裂かれた魔物の体内から、先程まで食べていた人間の死骸が大量に雪崩出てきた。

僕はそれでもいいと、動かない食事を食べ始める。
まずい。くさい。でも、少しでも食べなきゃ。
僕はこんなものしか食べれないのか。

「おいおい!見ろよ。あいつ!またあんなの食べてんぞ!うえ~汚え~」
「汚えやつはどっか行け!」

うわっ!
腕を捕まれ放り投げられ
ドカッ!と壁に打ち付けられた。

まだ、食事中だったのに……
あ、人間。こんな壁の隅に隠れていたのか。
こいつなら僕も掴まえられるかな?
逃げ道なんて無いんだし……

僕は人間を見つめた。
「ちょっと待て!見たところ食事にありつけて無いようじゃないか!俺がお前の食事の面倒を見てやるよ!だから、ここから逃してくれ!そしたら、たらふく食える場所を教えてやる!」
人間は僕に囁く声で助けを嘆願している。
まるで僕みたいだ。
人間は弱い。僕も同じだ。
何を食べさせてくれるのか分からないけど、僕と同じ弱い人間が食べるものなら僕も食べれるかもしれない。
この人間を魔物たちが食べないように、僕の体で隠して、皆が居なくなった後に、一緒にこの場所から逃れよう。
僕はドシリと部屋の角に腰を下ろして、人間を隠し、この夜の宴が幕を閉じるのをじっと座って待機した。
最後に軍団長が、城の王様という人間の中でも偉いと言われる丸丸とした男をペロリと一飲みし宴は幕を閉じた。
辺りは薄っすらと明かりが差し込み、新しい朝日が昇り始める。
魔物たちは自らの巣にずるずると重い足を引きずりながら戻っていく。
部屋には人間の血の匂いが染み込み、少しヌメヌメした床は歩き辛い。
壁の角に隠した人間を肩に乗せ、僕は人間の住む村まで、その男を連れて行くことにした。
「いや~、助かったよ。お陰で命拾いした。約束はちゃんと果たすから、ここから南に小さな村がある。そこまで連れて行ってくれ。おっと、そうだ。村の手前に泉があるから、そこで一旦下ろしてくれればいい。突然、村に魔物が来たら皆驚くからね。そこで、身を隠しておけば、俺が食事を持って戻ってくるから、約束するよ」
僕は人間の言う通りに魔物の本拠地から遠く離れ、暫く歩くこと南の村が見えてきた。
僕はさっきの人間と話した約束をもう一度交わし、人間が指定した泉で人間と別れた。
ここは気持ちがいい。風が頬を撫で、泉から湧くお水も美味しい。
小さなオアシスになっていて、鳥も馬もここに集まってくる。
僕は水辺に茂る草を無心に頬張った。
魔物の軍団と居た時は、人間ばかりを獲物としていたけれど、草を食べるのも悪くないな。
ここなら人間と争わなくても暮らしていけそうだ。
あの人間がこのまま戻ってこなくても、僕は平気かもしれない。

遠くからガヤガヤと人間たちの声が近づいてくる。
「お~い!魔物はいるか~」
あっ、この声は、僕に食事を持ってきてくれるって言ってた人だ。
「おい!魔物がまだ居たぞ!どうする?」
「捕まえろ!」
「捕まえてどおすんだよ!」
「殺せ!!」「殺せ!!!」
沢山の人間が僕を取り囲もうと武器を持って近づいてくる。
どういうこと?
「言っただろ!お前の食事を沢山持ってくるって。魔物の食事って言えば人間じゃないか!俺達がお前に食われるか!お前が俺達に食われるかなんだよ!」
僕は違う!
ここで草を食べているんでも良かったんだ。
「あ~お腹すいたなあ」僕は思わず言ってはいけない言葉を口にしてしまった。
「魔物に食われるぞ!皆!魔物をやっつけろ!」
静かだった泉のオアシスは、襲い来る人間の足で踏み荒らされ始める。
松明の火と燃える油の匂いが僕の周りで立ち込み始めると、辺りは夕暮れに落ち込んでいった。
食べないよ。僕は人間を……
僕は渾身の力を振り絞って、角を振り回すも。
僕の角は人間には届かなかった。
「暴れてる時は近づくな!」
「おい!こいつの角欲しくないか?」
「ああ、いい角している!壁に飾るにはうってつけだな」
「俺が頂くぞ!」
僕の角が不用意に飛び込んできた人間をかすめ、人間は腕から血を流す。
「だから言ったじゃないか!暴れてる時は近づくな!魔物の武器は俺達を簡単に貫くぞ!」
人間が遠くから一本の矢を放ち、僕の肩を貫く。
動きが一瞬止まった僕の足に、人間の持つ剣が斬りつけ、僕は体制を崩して地面に倒れた。
痛い……なんでこんなことになるの?
「この角は俺が頂いた!」

許さない。魔物も……人間も……

許さない。

許さない。

許さない。

許さない。

許さない。

許さねえ


魔物の角はレインの目の色と同じ、緑色に輝いた。

「おい!その魔物の角。何に使うんだ?」
「決まってるだろ!魔物退治の剣を作るのさ」

◆◆◆◆◆◆◆◆

カ~ン!カ~ン!カ~ン!カ~ン!カ~ン!
鍛冶屋が魔物の角に熱を通して打ち付ける。
角は打たれる度に強度を増し、打たれる度に緑色に輝く。
魔物を退治した英雄に相応しい剣に仕上げようと、鋭く鋭利に仕上げていく。

鍛冶屋は剣を作りながら恐怖を感じていた。
このまま仕上げて良いものか悩みながらも、仕事の依頼を途中で放り投げてはならないと必死になって恐怖を打ち消しながら角を打つ。
叩く角から時折、すすり泣く悲鳴のような音が聞こえる。
鍛冶屋は耳をふさぎながら、剣の出来栄えだけを見つめ、その剣を作り上げた。
刀身は真っ黒に仕上がった。

「ほらよ!魔物退治の英雄さん。出来たぜ」
「なんだよ。この真っ黒な刀身は!」
「角を剣にするんだ!銀色にでも輝くと思ったのか!」
「黒焦げの剣なんて聞いたことねえよ」
「うるせえ!持ってけ!こんなもん。うちで出しても売れねえんだよ!」
「ちっ!変なもん作らせて悪かったな!」

許さねえ

「ん?今なんか言ったか?」
「なんも言ってねえよ。お代はいらねえよ。気味が悪いからとっとと持っていってくれ!」


許さねえ!ドックン!


人間が持っていた剣は、薄っすらと緑色に輝く。
人間は無意識に鍛冶屋をその剣で突き刺していた。
人間の血が剣に吸い込まれていく。

美味しい。久しぶりの人間の味だ。
こんなに美味しかったんだ。

「お!お前!気でも狂ったか!」
「魔物退治の男が鍛冶屋を殺したぞ!」
「お、俺じゃない!この剣が勝手に!」
「そんな訳無いだろ!俺は言い争っているの聞いたぞ!」

刀身は真っ黒になっていた。
「し、知らねえよ」

人間は僕を放り投げた。

僕は人間の足で、蹴られながらまたいつものように端に追いやられていく。

僕を剣にした人間は、人間に捕まって連れられていった。
僕はこのまま、また飢えてしまうのだろうか?
でも、これだけは分かる。
僕はこれからもっと一杯食事ができる。
僕はもう弱くない。
もう二度と死なないから。
早く次のパーティーに参加したいな。

もっと恨みを……僕に食事を……

さあ、そこの人間よ。
僕を手に取れ!
その恨み辛みを僕を使って晴らせばいい!

剣はレインの目の色と同じ緑色に輝いた。
魔物だって美味しいんだろうな。

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