ぼくらは赤い川で待つ

 
赤、見えなくたってきみは傷ついていて、そのかなしみをやりすごしている。

目に見えるものの価値しか知らないひと、目に見えないものしか信用できないひと、きみはどちらも軽蔑したまま夜が明けるのを待つひと、だから、刃の冷たさに安心したりしないし、なによりぼくらはきみの涙を見たことがなくて、それは、とてつもないかなしみのような気がする。

横断歩道、線から落ちたやつらがどうなったのかおそろしくて聞けそうにないよ、ただあの安全な綱渡りの、守られた、お手軽なスリルだけで大人になれるような気がしていただけ、そう、銀色にひかるスニーカーが滑ったの、わざとだってことにしてワニの群れの中を歩く、足が、震える、その瞬間に大人ってなんなのか知ったような気でいただけ。

レースの袖から伸びる白い腕、夏、夏、衝動買いした鞄の取っ手がやけになじまないのよって、不機嫌そうなきみの、汗が、赤く透ける。




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生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。