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家族のかたちが変わる。精子バンクが引き起こすパラダイムシフトとは?

ハイライト
・家族のあり方はもはやボロボロ。どの数値を見ても崩壊
・世界最大の精子バンク「Cryos」は精子を写真で選べる時代に
・日本の法整備は全く時代に追い付いていない


■世界の常識は変わり続けている

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①:たった一人を愛して、その人と結婚して添い遂げる
②:1つの会社で、定年まで勤め通す
③:結婚したら2~3人子どもを作って、マイホームで子供たちを育てる

昭和~平成初期にかけて当たり前だった、これらの感覚はもはや現代の私たちには通用しません。とはいえ、この感覚を信じたい方もいるでしょうから、ひとつずつ見ていきましょう。

①:たった一人を愛して、その人と結婚して添い遂げる

平成29年度人口動態統計をみると、婚姻件数は60万件、離婚件数は21万件ですから、離婚件数は婚姻件数の約3分の1。細かいことを抜きにすると、「夫婦の3分の1が離婚する時代」です。

さらに、50代男性の生涯未婚率は23.4%
男性の4人に1人が50代までに結婚していません。


②:1つの会社で、定年まで勤め通す

2018年の若年者雇用実態調査によると、15~34歳の若年層(15~34歳)のうち、卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない割合は、47.4%。つまり、約半分が既に初めて入社した会社を辞めています。

1つの会社で定年まで勤め通すなんて価値観、現代には残ってません。


③:結婚したら2~3人子どもを作って貯金して、マイホームで子供たちを育てる

平成26年全国消費実態調査によると、マイホームの所持率は30~39歳で51.3%、30歳未満で15.7%。マイホームを持っている人は、多く見積もっても2人に1人しかいません。

第15回出生動向基本調査(2015)では、子どもが1人以下の割合は、未婚者の84%、既婚者の38%です。

未婚者は当然、子どもを持っていない場合がほとんどですし、既婚者も40%近くが2人以上も子どもを作らないのです。


「家族のかたち」は今、大きく変化しています

①:たった一人を愛して、その人と結婚して添い遂げる
②:1つの会社で、定年まで勤め通す
③:結婚したら2~3人子どもを作ってマイホームで子供たちを育てる

もう、こんな価値観は通用しません。というか、若者は誰もこんな幻想を信じちゃいません。

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「家族とLINEで連絡を取って、〇日は家族で誕生日のお祝いね!」

これは仲睦まじい家族の会話のように思えます。

でも20年前だったらどうでしょう?こんな連絡を取らなくても、誕生日は家にいるのが当たり前、家族で過ごすのが当たり前でした。でも、いつの間にかそんな時代は終わったのです。

携帯電話とインターネットの普及により、無限に友達関係を広げることができるようになった今、家族の関係性はどんどん薄まっています。

だって、好きなヒトと好きな時間につながることができるんですから、家族関係を維持したいなら、積極的にコミュニケーションをとらなきゃ無理。
「何日は空けといてね」そんな一言がなければ、家族でイベントなんて絶対できないんです。

こんな時代は人類史上初めて。

そんななか、科学技術の進歩は、さらにパラダイムシフトを加速させていきます。


■世界最大の精子バンク「Cryos」

デンマークは、日本と同じく第二次世界大戦後にベビーブームの到来によって、出生率が2.0となり、順調に国民を増やしていきました。しかし、ベビーブームが去り、1980年台には出生率は1.3となってしまいました。この数値は今の日本よりももっと低い数値です。

子どもが必要だ!そんなデンマークの悲痛な声に後押しされながら成長した企業が「Cryos」です。

「Cryos」はデンマーク発、世界最大の精子バンクです。

Cryosは100か国以上に精子を販売し、65,000人以上が生まれています。

Cryosでは、自分やパートナーに似ているドナーを探すことができるよう、精子ドナーの写真や、アンケート、感情知能(EQ)プロフィールを選ぶことが出来ます。さらに、匿名のドナー、非匿名のドナーを選ぶこともできます。

ドナーの試験は血液や遺伝性疾患の検査の他、面談もあり、合格率は5~10%と厳しく設定されており、安心安全を謳っています。

「精子をネット注文できる」

というとあまりにも言葉が悪いですが、そうとしか言い表せない状況なのです。

無精子症に悩むカップル、レズビアン、シングルの女性など、子どもを育てる意志と能力があるものの、肉体的に不可能だった人々にとって、このサービスは福音となるでしょう。

しかし、今までの常識と大きく異なるこの制度に理解できる世の中を作ることができるかどうかは、今のところ何とも言えません。


■都市伝説?精液ちょうだい女

嵐などジャニーズのライブに参加した女性が「精液ちょうだい」と書かれたうちわを振っていた。な~んて都市伝説もありますが、それが冗談じゃ済まされない時代になりつつあるのです。

なんだ、品のないヤツだな。と思うのはあまりにも短絡的です。

質の高い精子が欲しいというニーズがあって、提供する技術があります。
もし、「子どもを幸せにする経済力と親としての能力があったら」この人を否定することは、本当に正しいことでしょうか?

「Cryos」のような組織を有効に活用するためには、このような倫理的な問題に決着をつける必要があります。それも早急に。

芸能人や有名人の精子が高額でやり取りされる。そんなえげつない時代が来る可能性だってあるのです。技術的にはもうできてしまうワケですから、法整備にもう猶予はありません。


■法律的な問題点

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日本では、無精子症の夫婦が
精子提供を受けることができます。

この方法を非配偶者間人工授精(AID)と呼びます。

しかし、精子が旦那のものでない以上、日本の法律では子どもと親の間に親子関係を定めることができません。そして、AIDで生まれた子どもに遺伝上の父を知る権利は認められておらず、AIDの事実を知る権利もありません。親の判断に任されているのです。

さらに、現状無精子症の夫婦に限られているAID治療が、他国にならってレズビアンのカップルやシングルの女性にも適用されるようにするべきなのか?それに結論はついていません。

我々がこれまでに行った子どもの発育・発達・学業成績調査や出生後の父親の意識調査から、匿名による精子提供を前提とした我が国のAID治療は、それ以外の治療では親になれなかった多くの夫婦に健全な家庭をもたらし、健全な精神・身体能力をもつ子どもたちを育てる事が可能である事を示しています。(http://www.obgy.med.keio.ac.jp/clinical/obstet/aih_aid.phpより)

AIDによって生まれた方に遺伝的な問題がない以上、技術は既に完成されたと言えます。そして、完成した技術を、完全に規制することは不可能です。私たちが狩猟の時代に戻ることは不可能なように、スマートフォン無しの時代に戻ることが不可能なように。


■ほんとうの家族って.. ?

児童虐待の数は増えています。平成11年度にくらべ、平成24年度には児童虐待の相談数は5.7倍に増加しています。

児童虐待が起こる家庭は、一般的に良い家族とは言えませんよね。
血が繋がっているから良い。という単純な問題ではないのです。

日本にも、特別養子縁組や里親制度があります。どちらも遺伝上の繋がりがない子どもを育てる制度です。

AIDの場合は第三者の精子のみを利用するので、半分は遺伝上のつながりがあります。しかし、倫理的な問題からAID治療は方々から叩かれ、炎上し、正規の治療が受けられない現状が続いています。

闇市場で精子を売り出す者も現れ、劣悪な精子が販売されることも現実に起こっています。当然、このような行為は母体や子どもに安全ではありません。とにかく早急に議論を進める時が来ています。


子どもを育てたいと考え、子どもを育てる能力や経済力がある。
そういった方は決して少なくありません。

いったい誰が、子どもを育てる権利を持つのでしょうか?
どの方法なら許され、どの方法なら褒められるのでしょうか?

みんなで議論が必要です。


P.S.
この記事をもとに、
AIDで生まれた方を否定することだけは
絶対にやめてください。
彼ら、彼女らには何の責任も、何の罪もありません。

おしまい

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