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仕事に命をかけているか

写真はうちで育てているメロン。それっぽい網目模様がついているが、まだ片手のひらに乗る大きさ。


ある日、メロン農家さんを訪ねた。
メロンの糖度や育て方について、いきいきと話す農家夫婦は、わたしと同世代。朝から晩までずっと夫婦一緒に働いていて、とてもいい雰囲気だ。

「まるで子どものように育てているメロンですね」

というわたしの軽すぎる問いかけに対して、メロン農家はこう言った。

命かけてますから



帰り道、その言葉が頭から離れなかった。

わたしにはそんな時があっただろうか。
本番間近のシステムに問題が生じて帰れない日が続いたこと、自分で作ったプログラムの問題箇所を見つけたくて枕にしたこと、などの「自分なりに頑張ってた頃の記憶」が蘇ったが、命を懸けていたとは言えない。

飲み会で「命がけでやれ!」と部下にいきまく人もいたが、冗談だったろう。サラリーマン時代は大変な思いをして働くことはあっても、命を懸けてと言えるような仕事ではなかったと思う。

家族が経営者だったこともあって、社長が命がけで会社を守り、社員の生活を守る姿を見た。金策に走り、眠れない日々を間近で見た。

翻っていま、わたしも小さいながらも経営者であるが、社員はもとより、自分さえも命がけの仕事をしていない。こんな風に言い切るとお客様に失礼かとも思ったが、仕方がない、事実である。だからと言って手を抜いているわけではない。寝ている時間と雑草を抜いている時間以外は、常に仕事のことを考えている。仕事が大好きだし、大好きなことは仕事にしてきた。しかし、そんな程度では命がけとは言えない。


わたしの近くには、命を懸けて仕事をしている(たぶん)人が、冒頭のメロン農家さん以外にも何人かいらして、その姿勢と実績に尊敬の念を覚える。

社会起業家のAさんは、ロックするという言葉をよく使われるのだが、わたしは「魂を揺さぶる」と訳している。笑っている父親を増やすことや、子どもたちの自立をサポートするなどの活動には、関わる人の人生に影響を与える。Aさんは人生を賭してロックしているのだろう。

女性リーダーを長年輩出しているUさんは、優秀な女性リーダー、かつイノベーターを自ら体現し、企業の女性たちがTOPを目指すよう方向づけする。かくいうわたしも恩恵を受けた一人である。Uさんは「乗った馬から降りるな」と女性を鼓舞するのだから、まるで生きるか死ぬかの戦国武将である。

わたしの住む町の首長、Kさんは、イノベーティブな発想とその実行力に定評がある。行政や企業では、目的と手段によるストーリーが展開されることが多いが、首長に求められるのは、未来像をつくることだろう。自分の死後、いや、もっと先の理想を描き、そこから現在に遡る思考が必要である。「夢を語り実現する」のは命をかけるほど尊いものだろう。


この時代に、命がけである自分を認めることは、素晴らしいと思う。
繰り返しになるが、わたし自身は命をかけていない。怪我はしても、死なない程度に行動している。怪我が増えると保守的になり、行動を控える人もいるが、わたしの場合は、まだ生きてるから次はもう少しいけそうだな、と思い挑戦したくなる。いつの日か振り返ったとき、案外命がけだったな、と思える日が来ることを期待している。

命がけの仕事といえば、子育てである。わたしの住む町に新たな命が誕生した。

町長、お子さんの誕生おめでとうございます。社会みんなで育てましょう。


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