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転勤について

いまから15年前、大阪から東京に転勤した。

当時、京都市内にマンションを購入した直後だった。

マンション購入を知って嫌がらせの転勤なのかというと、もちろんそんなことはなく、それどころか、上司はわたしがマンションを購入したことを知らなかったと思う。引っ越して1年ほどで、東京転勤が決まった。

当時、総合職でも女性の転勤は珍しかったと思う。少なくともわたしの働いていた会社では珍しかった。わたしより先に入社した女性で、仕事の事情で転勤したのは、1人しか思い出せない。

東京は何度も出張していたので、特別な緊張感はなかった。1年で戻るつもりだから、荷物は最小限だった。

転勤するのには気が進まなかった。当時は東京を嫌っていた。嫌う理由は大してなかったが、関西VS東京みたいな構図があり、無条件に拒否していた。

ところが、実際に転勤してみると、1ヶ月もしないうちに、居心地がよくなった。関西に比べて多様性があったからだ。京都に比べて、観光以外の外国人が多かった。変わった格好のひとも少なくなかった。男性か女性かわからないひとも頻繁に出会った。早朝から深夜まで、自由な時間でひとが動いていた。どこで誰と何をするか、自分で選べたし、それを誰かにいちいち注目されることもなかった。

1年は早かった。予定では関西に戻ることになっていたが、わたしはそのまま東京で働くことを選んだ。

東京の上司に、自分の意思を伝えた。そこが管理職になる道を開いたタイミングだったように思う。


決して、転勤を承知したから管理職になったとは思っていないが、ターニングポイントであったことは間違いない。マンションを買ったとき以上に、覚悟を決めたのが、あの時だったと思う。あの転勤でYESと言っていなければ、わたしは管理職になっていなかったと思う。マンションを買ったばかりだから転勤するのは厳しいよね、と上司が配慮してくれていたら、現在のわたしはない。


転勤を打診するかどうか、どこまで配慮するか、今週つぶやき事案のことで議論されているが、わたしにとって転勤は間違いなく転機だったし、引き上げられる機会だった。

もし、配慮先行だったとしたら、わたしの転機はどこにあっただろうか。能力や経験を評価してもらえただろうか。わたしは覚悟する時期を逃さずにいただろうか。

異動や転勤などの業務命令に従うかどうかで部下を判断し、部下としてもそれで忠誠心を表すことの方が簡単であるように思う。能力で評価する、されるよりも。

働き方が変わるということは、働きやすくなる一面と、これまでどおりが通用しなくなる一面がある。それでも変えていくべきだと思う。


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