見出し画像

10年後も続いているか?

梅雨が明けて、山口市にも夏が訪れました。

7月に祇園祭、8月に七夕ちょうちんまつりと、夏の山口市は大きなお祭りが行われる季節です。コロナ禍を経て4年ぶりの通常開催ということもあり、中心市街地はいつも以上に賑わいを見せています。

私たちの事務所がある大殿地区には、室町時代に大内氏の第24代当主弘世が京都から勧請した八坂神社があり、長禄3年(1459年)に神事として祇園祭が始まったそうです。

炭鉱で明治以降に栄えた街で生まれ、神輿を担ぐようなお祭りがない環境で育ってきた私にとって、お祭りは山口市の大きな魅力のひとつです。

七夕ちょうちん祭りの写真

YCAM10周年の10年後

今年はもうひとつ大きなお祭りが開催されます。私たちもお仕事でご一緒することが多い山口情報芸術センター[YCAM]開館20周年記念祭です。奇しくも文創の拠点である台湾文化特集を軸にしながら、他にも様々な展示・イベントが催されます。

2003年11月1日に開館したYCAMは、メディア・テクノロジーを用いた新しい表現の探求を軸に活動するアートセンターです。

山口情報芸術センター(やまぐちじょうほうげいじゅつセンター、Yamaguchi Center for Arts and Media)は、山口県山口市中園町にある図書館・ホール・美術館などの複合施設。おもにコンピューターや映像を使った芸術であるメディアアートに関する企画展を行うほか、その制作施設、上演ホールなどもある。通称「YCAM(ワイカム)」または「ビッグウェーブやまぐち」。公益財団法人山口市文化振興財団が運営に当たっている。優良ホール100選に中四国地方で唯一の選出。一般社団法人公共建築協会による平成20年(2008年)、第11回公共建築賞文化施設部門受賞建築物。

山口情報芸術センター(Wikipedia)

私たちがYCAMの事業に関りはじめたのは、ちょうど10年前の2013年に開催された10周年記念祭がきっかけでした。

YCAM10周年記念祭では、「アート」「環境」「ライフ」といった概念を中核に、刻々と変化するこの世界を、より深い共感を持って読み解き、知覚しながら、共に想像/創造する環境へと一歩踏み出します。
開館以来YCAMの活動の軸となってきたメディアテクノロジーの可能性を踏まえながら、我々の過去と未来、自然世界と都市文化を、想像/創造力で繋げていく試みをさまざまな芸術形態で表現します。

10周年記念祭のコンセプト(YCAM 10th Anniversary)

というコンセプトのもと、これまで館内での作品展示がメインだったYCAMは、10周年を機に館外へと活動領域を広げ、市民と共に想像/創造する展開を始めました。

当時の山口市中心商店街の様子(YCAM 10th Anniversary)

その一環として、YCAM初の公募展示「LIFE by MEDIA国際コンペティション」が開催され、3つのプロジェクトが山口市中心商店街を拠点として展示されました。

スポーツのタイムマシンを作るという体験

3つのプロジェクトのひとつ「スポーツタイムマシン」は、自分を含めた過去の人々の記録とかけっこできる装置です。ゲーム監督、eスポーツプロデューサーである犬飼博士氏と、インテリアデザイナーの安藤僚子氏が考案した、世界で初めてのスポーツのタイムマシンです。

当時、個人で事業を営んでいた私は、システムエンジニアでライブ配信もやっている人ということで声が掛かり、スポーツタイムマシンの制作に携わることになりました。

面白そうなので軽はずみに引き受けてみたところ、山口を皮切りに六本木、十勝帯広、鹿児島、そして2度目の山口と、巡回展示に2015年の年末まで都合3年間も関わらせていただきました。

このプロジェクトに関わったことが、YCAMと弊社の今の関係に繋がっているので、振り返ってみればひとつのターニングポイントです。

スポーツタイムマシンがなければ、ファブラボを立ち上げることもなかったし、もしかしたら株式会社アワセルブスを設立することもなく、今も個人で細々と仕事をしていたかもしれません。

コンペの企画書に添えられたイメージ画像(作:納口龍司)

「スポーツタイムマシン保存会」再始動

スポーツタイムマシンには保存会という組織があり、10年前の展示会期が終わる前から「来年もやるにはどねーしたらいいか考える会議」を開催して、市民レベルでスポーツタイムマシンを継続する方法を話し合っていました。

当時の写真

その後、文化庁メディア芸術祭の賞を受賞したことによって、県外のあちこちで巡回することになり、保存会の活動は他県での展示をサポートするのがメインになっていましたが、初回展示から10年目を迎えた今年、スポーツタイムマシン3度目の山口開催に向けて、久々に活動を再開しました。

当時小学生だった廣田くん(中央)が保存会の中心人物に

10年続く仕事を作れるか?

スポーツタイムマシンのお二人をはじめとする、LIFE by MEDIAで選出された3組のアーティストと作品は、10年経った今も進化しながら現役で展開されています。10年続けられる作品を生み出したアーティストと、それを選出した当時の審査員、いずれも素晴らしいと思います。

情報が衝動的かつ刹那的に消費されがちな現代において、10年生き残ることができる作品と600年続く祭りには、どんな要素が含まれているのでしょうか?それを私たちの仕事に活かすとしたら、どのようにすればよいのでしょうか?

そんなことを考える機会を与えてくれるYCAMと山口市は、私たちにとってとてもありがたく稀有な存在です。これからまた10年、20年と歩みを共にしていけたら嬉しいです。

今日から街中で「without records」の展示も始まりました。今年の夏はYCAM20周年と山口の祭りを堪能しましょう。

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?