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働き方をつくる

所属している支援機関で、人材活用ガイドラインの活用についての研修を受けました。

中小企業・小規模事業者人材活用ガイドラインは、中小企業庁が中小企業・小規模事業者の経営者・支援機関に向けて作成した、⼈材活⽤に関する課題を解消するためのガイドラインです。

Webサイトから概要を引用します。

中小企業を巡る環境がめまぐるしく変化する中で、売上拡大や資金繰り等の日々の経営課題の背景に、人手不足や人材育成など人材が大きな経営課題になっている可能性が少なくありません。経営者が人材に係る課題に正面から向き合い、貴重な人材を活かせる仕事はどのようなものか考え、行動を起こすことが重要です。
経営者に日々の経営課題の背景に、中核人材の採用、中核人材の育成、業務人材の採用・育成の3つの人材課題(3つの窓)が潜んでいないか確認してもらい、それに対する具体的な対応策や支援策を紹介する「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」を取りまとめました。

「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」及び事例集を公表します(中小企業庁)

こうした研修が実施される背景には、人手不足問題があります。

日本の人手不足問題は深刻だ

コロナ禍が落ち着いて経済活動が回復へと向かうなか、企業の人手不足は深刻さを増してきています。

東京商工リサーチによると、2023年の人手不足関連倒産は158件(前年比154.8%増)と急増しました。調査を開始した2013年以降で最多を記録したそうです。

業種別に見ると、サービス業の倒産が最も多く(前年比129.1%増)、次いで運輸業(同533.3%増)、建設業(同107.1%増)など、労働集約型の産業を中心に人手不足倒産が増加しています。

主な要因は「人件費高騰」(前年比742.8%増)と「求人難」(同114.8%増)です。

企業は人材確保のために賃上げを迫られます。経営体力が乏しい中小企業・小規模事業者にとって資金繰りへ与える負担は大きく、背伸びした賃上げにより業績が悪化するケースも多々あります。

一方で、賃上げが難しい企業は、そもそも事業を維持・発展させるための人材を採用することすらままならず、受注機会の喪失から業績が悪化するという悪循環に陥っています。

多くの中小企業・小規模事業者にとって、人材活用は喫緊の課題です。

人手不足はなぜ起きる?

人手不足が深刻化しているのはなぜでしょうか?

まず原因として考えらるのは、少子高齢化による働き手の減少です。日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年、総人口は2008年をピークに減少に転じています。

令和4年版高齢社会白書(総務省)より引用

また、企業と求職者の間で求める条件のミスマッチが生じていることも、人手不足の要因と考えられます。

企業側から見たミスマッチは、求めるスキルと経験を持つ求職者がいないというものです。特に、人材育成にかける時間もコストも乏しい中小企業・小規模事業者は即戦力となる⼈材を求めます。

昨今はDXやグローバル化に対応できる人材を確保することが急務です。そのような人材に入社してもらうには、相応の条件が求められます。

求職者から見たミスマッチは、自分が求めている待遇を得られないというものです。給与や福利厚生だけでなく、キャリアアップやスキルアップできる環境で働きたい人もいれば、時短勤務やリモートワークなどの柔軟な働き方を重視したい人もいます。

能力はあるけれど、待遇が合わないために求職を諦めたり、待遇を重視して専門外の仕事に就いている人材も少なくありません。

人手不足はどうすれば解消できる?

では、人材不足を解消するためにはどうすればよいのでしょうか?

人材活用ガイドラインでは、⼈材戦略を検討するための3ステップとして以下のような内容が提案されています。

ステップ1:経営課題と⼈材課題を⾒つめ直しましょう

まず、そもそもの経営課題がどこにあるのかを整理します。

・営業が不⼗分/販路を拡⼤できない
・商品・サービスの開発・改善ができない
・技術⼒の向上に取り組めず、研究開発が進まない
・生産管理が十分にできていない
・財務体質を改善できない/価格転嫁ができない
・デジタル化等による業務効率化やコスト削減の必要がある
・⼈材確保に努めているが採⽤に⾄らない・定着しない
・賃上げができない
・⼈材育成が⼗分にできていない
・事業を承継する後継者が⾒つからない

まず課題を明確にしたうえで、必要な人材戦略を検討します。

ステップ2:⼈材戦略を検討しましょう

ステップ1の⼈材課題に関する検討結果を踏まえ、求める⼈材のタイプが「中核⼈材」なのか「業務⼈材」なのかを見極めます。

「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」より引用

⼈材戦略の⽅向性は、確保したい⼈材のタイプに応じて、下記の3つに分けられます。

(1)「中核⼈材の採⽤」
(2)「中核⼈材の育成」
(3)「業務⼈材の採⽤・育成」

人材育成にかける時間もコストも乏しい中小企業・小規模事業者がとりわけ重視すべきは「中核⼈材の採⽤」です。そのためには、求⼈像の明確化や、求める⼈材が「ここで働きたい」と思うような 職場環境づくりが必要です。

ステップ3:⼈材戦略を実⾏しましょう

人材戦略が定まったら、実際に採用活動を行っていきます。

ハローワークや転職エージェントサイトに求人情報を掲載するだけでは、求める人材とのマッチングは難航するでしょう。

企業のミッション/ビジョン/バリューや活動状況などを、WebサイトやSNSで情報発信していくなど、認知獲得に繋がる施策を地道に続けていくことが求められます。

また、正規雇用だけでなく副業・兼業/シニア⼈材等の活⽤も視野に入れることで、選択肢の幅が広がります。

⾼度な業務遂行能⼒を有する⼈材は、多くの企業が欲しがるものです。そのような人材を独占するのではなく、複数の企業やプロジェクトでシェアすることで、すべてのステークホルダーが満足のいく関係性が作れる可能性があります。私が提唱する共有人材という考え方です。

人の数だけ働き方をつくる

今の日本の求人は売り手市場で、企業は求職者に選んでもらう立場です。求職者が求める情報を提供し、働きやすい待遇を提示する必要があります。

弊社では待遇面の改善として、以下のようなことに取り組んでいます。

兼業・副業を推奨
そもそも私自身が副業しています。

テレワークOK
完全在宅勤務の社員もいます。

週休3日制
2022年に導入。スケジュールがタイトになり生産性は上がりました。

経営方針にも、「人間力」と題して以下の内容を掲げています。

「兼業・副業」「テレワーク」「雇用関係によらない働き方」など、多様で柔軟な働き方を選択できる風土を醸成。個人の人間力を養います。

株式会社アワセルブスのWebサイトより

従来の考え方に固執しなければ、賃上げ以外にも働きやすさを向上させる方法はいろいろあります。

個人的には、時代に合わせて仕事のやり方を変えていくのと同じように、求職者のニーズに合わせて働き方もチューニングしていくのは自然なことだと考えています。

せっかく自分たちで就業規則をつくれるのに、紋切り型の働き方しか選択できない企業が多いのが現状です。もっと企業が柔軟に変化できるようになれば、求職者とのミスマッチは減っていくのではないでしょうか。

では。


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