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アイデンティティの音楽

久々にDJをやりたい欲が沸いています。

過去にネットにアップしていたDJ MIXを、久々に聞き直していました。
余裕で15年とか経っていてびっくりします。

WinMXで得たDJ MIXの知見

DJ MIXにのめり込むようになったきっかけは、2001年にリリースされたWinMXというPeer to Peerを用いたファイル共有ソフトです。

Peer to Peer(ピア・トゥ・ピア または ピア・ツー・ピア)とは、複数のコンピューター間で通信を行う際のアーキテクチャのひとつで、対等の者(Peer、ピア)同士が通信をすることを特徴とする通信方式、通信モデル、あるいは通信技術の一分野を指す。略記は、P2P。

Peer to Peer(Wikipedia)

当時、Napsterをはじめとするファイル共有ソフトは、著作権を無視したファイル交換が日常的におこなわれる違法コピーの温床として問題視されていました。

一方で、海外のラジオで放送されたDJ MIXのmp3ファイルなど、レア音源をたくさん入手できるといった良い側面もありました。

たまたま転職期間中で時間が有り余っていた私は、海外のDJ MIX音源をダウンロードして聴きまくりました。当時使っていたHDDには300GBを超える大量のDJ MIX音源が眠っています。

インプット量を増やすことは、アウトプットの量に影響します。多くの先人たちが提供してくれたDJ MIXから、知らなかった音源やテクニックを学び、次第にDJ MIX制作が捗るようになってきました。

世界の音楽に触れたクラウド時代

ブロードバンドが普及し、クラウドコンピューティングの時代になると、SoundCloudなどのオンラインサービスでDJ MIXやオリジナル音源を公開するアーティストが現れ始めました。

2007年頃になると、自身のブログを介して音源をリリースするアーティストや、それらをレビューするWebメディアが増え、それらを片っ端からRSSリーダーに突っ込んで、大量のmp3を集めるようになりました。

オンラインでmp3が入手できるようになってからは、どこの国の誰が作った曲かも知れない音源を発掘するのにはまり、選曲はどんどん多国籍化していきました。

思えば、その頃から音楽を聴くスタイルが変化してきたような気がします。

DJを始めた当時は、欲しい音源を求めてレコード屋をハシゴしたり、海外から個人輸入したりと、能動的に収集していました。

デジタル化が進んでくると、向こうからやってきた音源を取捨選択するというスタイルに変わっていきました。

近年はSpotifyYouTubeレコメンドされる音楽を聴き流し、気に入った音源に似た楽曲をまたレコメンドされるという、受動型の視聴スタイルが定着しています。

レコメンド機能の精度に不満はあれど、無限に新しい音源と出会える環境を手に入れた結果、次第に自分から音源を探し求めることをしなくなっていきました。

「Audio Base Camp」の威力にやられる

2022年、そんな消極的な音楽ライフに変化が訪れます。きっかけは、山口情報芸術センター[YCAM]で開催された「Audio Base Camp」というイベントに参加したことです。

Audio Base Campは、国内最高レベルの音響環境と言われるYCAMのスタジオAに、ライブ・コンサート向けの大規模かつ高品質なスピーカーをセッティングし、特定のテーマに沿った録音物を楽しむイベントです。

そこで、リスニングスタイルのDJという概念に出会います。

リスニングスタイルのDJは、1970年代のニューヨークでThe Loftという招待制のプライベート・パーティーを立ち上げた、デビッド・ポール・マンキューソが確立したと言われているDJスタイルです。

ダンスのために定常のビートで曲を繋いでいくのではなく、ビートに囚われず物語で曲を紡いでいくのがリスニングスタイルです。

一見すると誰でもできるように思えてしまいますが、実際は選曲構成にテクニックを要するプレイスタイルです。

これまでダンスの文脈でDJをする機会が多かったのですが、リスニングスタイルならこれまで掛けたことがない曲を掛けることができるというのが、惹かれた理由のひとつです。

もうひとつ、最高レベルの音響で聴いた威力(現 1729)にやられました。

空間を掌握する構成力もさることながら、音源の引き出しが完全に自分の中にないものばかりで、「ああ、まだまだ知らない音楽がたくさんあるな」と、眠っていた探求心にメラメラと火が点るのを感じました。

その日以来、テクノロジーを駆使して未聴の音源を掘り漁っています。

2020年代の音楽体験を探究したくなった

音楽CDの全盛期に多感な時期を過ごした私にとって、音楽とはアイデンティティそのものでした。

カセットテープの時代にはお好みテープにインデックスを貼り、CDの時代にはMIX CDを配り、デジタルデータの時代にはインターネットでDJ MIXを発信し、サブスク時代にはプレイリストを保存する。メディアは変化しても、本質的にはずっと同じことをやってきました。

サブスク時代、音楽はかつてよりも広く浅く消費されるようになりました。

昨今の曲は聴き始めてすぐスキップされるのを防ぐために、テンポが速く、イントロが短くなっています。また、長い間奏やソロパートなども敬遠されます。メディアに合わせて楽曲の構造そのものが変化しているのです。

一方で、PVやダンスのBGMといった具合に、音楽は視覚情報や身体表現とセットで摂取するものになっているという側面もあり、体験とより密接な関係になってきているとも言えます。

また、SunoUdioといった音楽生成AIも進化しており、未知の音楽が生まれてくるスピードは更に加速していくでしょう。2020年代の音楽体験を探究していくには、ちょうど良いタイミングかもしれません。

今年のGWは、リスニングスタイルのDJに挑戦しようと思います。

では。




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