氷点 感想
こういう気持ちというのは読み終えた衝撃のままに書く方がいい気がする。
と書くだけ書いて放置していた感想を時間差で載せます。
ともかく描写に感動した。
描かれているそれは確実に北海道なのだ。
ナナカマドに積もった雪がベルの形のようであるのも。
ストーブのついた部屋でココアをかき混ぜるのも
雪に寝転ぶ静けさも。
雪は青くなるし
ぼたん雪がふわふわ降る晩はあたたかい
陽子は雪に香りがないと言ったけど
私は雪には香りがあると思う
外の音や他の匂いを吸収して、冷たく乾いた空気が鼻に入ると感じる雪の匂い。この何もなさこそが雪の匂いで、
雪を踏みしめる様子を片栗粉と
さすがに雪はまだ降っていないというのに
帰って雪を眺めたくないる。
月明かりに光るつららを、枯れ木とカラスの黒と雪の白のコントラストを目に焼き付けたくなる。
時代背景や今の生活が異なるのにどこか懐かしく、変わっていない気がする。
交錯していく登場人物たちの思いの絡まり合いもまた侘しさを感じさせるのだが、読み進めるほどに故郷に帰りたくなった。
冬に平気で外に出かけていくのも、息をするようにスキーをしにいくのもなんだか道民的である。
そして美しさを自負する夏枝が老いを気にし、娘にさえ嫉妬を覚えるあたりに、妙に共感してしまった。私もそのくらい美しくなりたいわね……
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