【告知】「Outcrop展――4年の軌跡」開催中です

秋田県の限界集落、沼山地区。そこで幻の大根「沼山大根」を復活させようとする人びとにカメラを向けたとき、私たち「アウトクロップ」は始まりました。2018年9月。朝晩の気温が下がり、空気に秋の気配が満ちた季節のことです。

それから4年間。地域に目を向けそこに眠る「見えない物語を魅せる」映像プロダクションとして歩んできました。その軌跡を、大正時代に建造された酒蔵を改装した〈ギャラリー・ブルーホール〉にて展示いたします。


「Outcrop展――4年間の軌跡」では、未公開の映像を加えて再編集した映像作品を、5つの大きなテーマごとにまとめ上映・展示いたします。

テーマ1「大根と種」
テーマ2「古里と暮らし」
テーマ3「職と誇り」
テーマ4「自然と循環」
テーマ5「物語と対話」

この展示会は、私たちが制作してきたさまざまな映像を一挙にお披露目する機会であると同時に、5つのテーマを通して自分たちの軌跡を振り返ることで「私たちにとってのアウロクロップ」を再定義する試みでもあります。

開催期間中には、私たちがギャラリーに滞在し、お越しのみなさんと展示についてお話しさせていただく「ギャラリートーク」も開催いたします。制作の意図や裏話をお話しするだけでなく、みなさんのご感想などをお聞きできる機会として、大変楽しみにしております。ぜひ、展示と合わせてお越しください。

開催概要

期間:2022年8月4日(木)〜2022年10月30日(日)
時間:10:00-16:30(最終入場16:00)
場所:ギャラリー・ブルーホール(秋田県潟上市飯田川飯塚字飯塚34-1/小玉醸造株式会社敷地内)
料金:一般300円/中高生100円/小学生以下無料
連絡:018-877-5772(小玉醸造)
内容:映像作品上映、パネル展示
イベント:ギャラリートーク(8月28日、9月10日、10月1日 いずれも13時から)

https://www.kodamajozo.co.jp/blue-hole/

展示会場〈ギャラリー・ブルーホール〉のご紹介

今回「Outcrop展」が行われる〈ギャラリー・ブルーホール〉は、秋田県潟上市(かたがみし)に拠点を置く小玉醸造が、2009年にオープンした多目的スペースです。

大正時代に建てられた煉瓦造りの酒蔵を改装したもので、内装に秋田杉を惜しみなく使用したギャラリー空間は、広々としながらもぬくもりと上品さを併せ持っています。


小玉醸造は、銘酒「太平山」をはじめとし、日本酒、醤油、味噌などの伝統食材を地元産の原料にこだわってつくりつづけてきた秋田を代表する蔵元です。醸造を続ける傍ら地元の開発にも尽力するなど「地にこだわる」蔵元として100年以上の時間を刻んできました。

アウトクロップでは小玉酒造のブランド・ムービー制作のお仕事もさせていただきました。ご縁がつながり、このような伝統ある建物で展示会を行うことができることを、大変光栄に思っています。

展示会にお越しの際は、ギャラリー含め100年以上の歴史を刻む周辺の土地や景色、建物もお楽しみいただけると幸いです(ブランドムービーはこちらから御覧ください)。


4年間を振り返るにあたって

展示会を開催するにあたり、私たちはたくさんの話し合いを繰り返してきました。社会について、映像について、そしてもちろんわたしたち「アウトクロップ」について――。ここでは、少し長くなりますが、この展示会に込めた思いについてお話させてください。

"アウトクロップ" を再定義する

この4年間、私たちは「アウトクロップ(Outcrop)」を標語として掲げ、映像作品をつくり続けてきました。

Outcropとは、本来大地に眠っている鉱石や原石が地表に出てくる作用を意味します。原石のようにいまだ見つかっていない、あるいは見えなくなってしまったヒト・モノ・コトに光をあてること。日の目をみていない物語を、映像を通して明るみに出すこと。私たちの仕事は、大きくそのようにまとめることができます。

しかし、見えなくなっていたヒト・モノ・コトとはなんでしょうか。それらに光を当てることで、私たちは何をしようとしているのでしょうか。そしてそれを行う私たち「アウトクロップ」とはどのような存在なのでしょうか。取材し、映像をつくり、そして上映するという営みを続けるなかで、私たちはこのような問いに、度々直面してきました。

このことに、明確な答えはありません。「アウトクロップ」されるもの、そのことによって生じる価値、そしてそれを行う私たち「アウトクロップ」は、私たちの活動、その場の状況・出会い、そのほか数え切れないほどのさまざまなものとの関係を通じて、繰り返し定義され続けるものだからです。

「Outcrop展」ではこのような重なり合った意味において、現在時点での「アウトクロップ」を再定義することを目指しています。事前につくりあげた言葉や理念ではなく、積み重ねてきた私たち自身の活動の軌跡を通してそれが浮かび上がってくるような展示を目指し、工夫を凝らしています。

"私たちにとっての" アウトクロップ

「私たちにとってのアウトクロップを再定義する」。ここに「私たちにとって」という言葉が頭についているのには、重要な意味があります。それはヒト・モノ・コトをアウトクロップするのは、決して作り手である私たちだけではないということです。

映像は、見えない物語にかたちを与え、世の中に伝えるための強力な手段です。現場で取材をし、編集を行い、上映の場をつくること。今回の展示で上演される諸々の作品は、そのような私たちのアウトクロップの結晶です。

しかしここで重要なのは、映像や物語は、同時にそれを受け取る人に対して開かれたものでもあるということです。今回の展示で上映される映像は、いずれも私たちなりのアウトクロップの結果ですが、同時に「私たちにとって」のものなのです。

これは決して、ネガティブな意味ではありません。むしろ、私たちが映像を通して行うアウトクロップと、それを見る方々が自らの感性やその後の行動を通じて行うアウトクロップが交差し、掛け合わされ、広がっていく。そのような新たな未来への可能性を指しています。

私たちはこのような観点から、映像に関連して行われる対話の場を大切にしてきました。たとえば、私たちの運営するミニシアター「アウトクロップ/シネマ」では、上映のあと、観ていただいたお客様による感想や対話の時間を設けています。

私たちの「私たちにとってのアウトクロップ」がきっかけとなって、自分たちの住む土地やまわりにいる人々、文化、日々何気なく使っているモノがこれまでと違ったかたちで浮かび上がってくること。言い換えれば、より多くの人がそれぞれのかたちで「アウトクロップする」ことにつながっていくこと。「Outcrop展」は、私たちの軌跡を示すと同時に、そのような開かれた場を目指しています。

おわりに

アウトクロップってなんだろう。
私たちが大切にしたい価値はなんなのだろう。

仕事に取り組みながら、私たちは繰り返し自問自答してきました。

そこで見えてきたことの一つは、私たちの原点が『沼山からの贈り物』に詰まっていること、そしてそこから緩やかな糸が、確かに私たちの作ってきた作品へとつながっているということです。

また、ドキュメンタリー制作とはある程度区別して考えていたブランドムービーや広告映像のような仕事の中にも、たくさんの「アウトクロップ」の機会が存在することも見えてきました。

見えてきたことがたくさんある一方で、見えていないこともたくさんあります。アウトクロップを通じて、見えていない物語が新たなかたちを獲得していくように、私たちもまた、多くの物語との出会いを通じて新しく変化していきます。

最後に、このような機会を与えてくださった小玉醸造さん、本当にありがとうございます。


アウトクロップ社員一同


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?