剣呑な敗残兵は火炎を吐く

裂帛の気魄が空気を輪切りにする。
総身に亘る神経に激痛が奔る。
介錯者は心身に覚悟が漲り躊躇いは微塵もない。
しかし己のみで成し遂げた故に振り降ろすことはなかった。
天晴な最期に門弟達は誇りを自覚した。


残るは師の無念をはらすこと。
恥辱の裏切り者たちを鏖殺する。
師は門弟には沈黙を貫いた。
言い訳も相手の非礼を糾弾することもなく自裁した。
それ故に成すべきことはひとつだけである。
無頼の徒ではなかった。敵陣に向かう者らの表情には清澄な透明が宿っていた。