脱臼(outofjoint)

好きなことを書いています。生来の「生きづらさ」を克服どころか、年を重ねる毎に悪化させて…

脱臼(outofjoint)

好きなことを書いています。生来の「生きづらさ」を克服どころか、年を重ねる毎に悪化させて慢性化してます。その割に長生きしているのは「生きづら」くても「生きる」ことに固執しているからなのかもしれません。文学、哲学、音楽、映画を好みます。素人の戯れ言を超主観的に書きます。

最近の記事

【散文詩】好きではなくても

好きですといった。好きではないといわれた。 次の日も手を繋いで家路を歩いた。 二ヶ月後に好きだといった。好きですといわれた。 反復を反復して、手を離し、さようならと。 さようならといわれた。 好きではなくて怖かったのだ。本当は。

    • 【散文詩】敵はいますか

      単刀直入な憎悪で刺す 言質の取り合いは 身柄を攫って埋めればいい 瞬間に気化する衝撃と 簀巻きの海底で喰われるか 思い通りにさせないことが肝要 誰かを褒めると背後から刺突 夜襲にそぐわない態度表明 潮の干満に砂浜の首が頬にかかる 命乞いをする相手も去り 闇夜の波音に混入する呼気

      • 【散文詩】赤色の霧雨

        雨降りにまた逢えるかな 似合わない心模様 赤いパラソル くるくると 名前も知らない 揺れ動く心の居場所に スキップは虹色 水たまり避けて まっすぐな瞳に 揃えた前髪が揺れて いきをのむ どうすればせいかい なにがまちがい 本気で死にたくなるほどに抱きしめたとしても 夢のなかの亡霊

        • 【散文詩】指で刺す

          後ろからではなく 正面から指で刺す 向けた悪意の 代償は正々堂々と 生き馬の目を抜くのは 技巧派の悪巧み 小賢しさには 立てるのではなく 指で刺す

        【散文詩】好きではなくても

          【散文詩】空飛ぶ好奇心

          団栗眼で見入る先には大きな空が広がって、ぼくの手元を飛び去るのは夢を掴むために地を蹴り翼を羽ばたき上昇気流に乗るだろう。 小さな身体の密度は可能性の塊でどこにでも行ける。 だから、いっしょに飛べる。 人生の主役を降板しても苦にならない「人」がいなかったのに二人目が君だった。 河川敷で空を駆ける飛行機雲を指差し振り向く君を肩車して帰り道。 橙色の西の空に「空斗」の顔が染まって迎えに駅によって三人が笑いながら扉を開ける。 偉くなるとかそんなんではなく。お金を稼ぐとか巧く生き

          【散文詩】空飛ぶ好奇心

          雨はいまだやまず濡れる

          枯れ葉を踏む音でわかるほど何もかもわかっていたのは独り善がりの自己愛だった。 どんなに抱きしめても心まで掴めないこと。 終わったのは愛でも恋でもなく生命の鼓動。 人生の選択肢はないんだと、思い通りに喜怒哀楽をみせるのが思いやりだと勘違いしていたと今更の後悔。 立ち上がるのは誰のため。 負い目は弱さか、謙虚さか、それとも思い上がり。 苦しまなくてもいいことに打ちのめされては傷が増えて、愛されないのを誰かに押しつけて、それでいいのか。けっきょくは綱渡りの散歩道へ帰ってい

          雨はいまだやまず濡れる

          【散文詩】空模様はサバティカル

          人間が降ってきた。 そうとしかいいようがなかった。 内面の動揺とは無関係に「雨が降ってきた」と比べて言葉の重みは変わらなかった。 雨なら傘をさすか雨宿りをすることで対応可能だが、人間が降ってきた場合の対処法は残念ながら持ち合わせがなかった。 身体器官は活動を停止したように、立ち尽くすだけであった。視覚だけが機能して雨粒にしては巨大過ぎる人体が数珠つなぎに炸裂していく様子を目玉から脳内に電送して許容量超えで生命活動を完全停止した。 防衛機制の誤作動だと推測するが何を防衛し

          【散文詩】空模様はサバティカル

          【詩】物理的本能による拒絶

          さらさらと蝉の命が溶ける陽炎 あくびを誘う汗が首すじを濡らす 青い舌先に汗が交ざり 押し返された隙間に読み取れる嫌悪 思案に倦ねる距離ではなく本能の拒絶

          【詩】物理的本能による拒絶

          剣呑な青い鳥

          避けられない別離は併走している。疾走った先に待っているのではない。 突然に目覚め前触れもなく眠る。 明日の朝に怯えて慄えることは、楽観的過ぎないか。 目覚める保証はどこにもない。 散れば終わると思っているのなら、呑気な考えだ。 虫けらに生まれ変わるかもしれないのに。 ガチャなんてお互いさまだ。放下に選択肢はないから。「生きている意味」という愚問は自分の答えがあるのに誰かを試すために口をついた。それだけのこと。「生ききって」みないと解答不可能なことを知っているから問えるだけ

          剣呑な青い鳥

          【散文詩】嫌な感じで亡霊が彷徨う

          なにからなにまで乾燥しているのは 君の所作が気に入らないからだ。 負け惜しむ気合に夕暮れの工場がボウと鳴く。 口先だけの口約束は履行された試しがないから裏切り者は輪切られて冷凍保存。 視線は目玉を割って暗闇に監禁され 激痛の爪切りと皮膚の蜜月は深皮膚にて卒業。 行き場のない憎悪を抑制するのは 噛み締めた唇を唾の代わりに吐き捨てる 赤い蛞蝓が痙攣して安眠する。 許せない裏切り 喜怒哀楽を廃棄した日に 終わらぬ放置が通常運行の現行犯。

          【散文詩】嫌な感じで亡霊が彷徨う

          坂口安吾と矢田津世子

          安吾にリセット癖があることは割と容易に読み取れる。 小説だろうと評論だろうと安吾にとって文章を記すことの意義はひとつしかなく、「生きている」ことの根源も同根の「ふるさと」をどのように「表現」するかに根ざしている。弁証法ではなく反復こそが安吾の真骨頂である。 つまり安吾にとって生きることと書くことは等価なのだ。 では「等価である」とはどういうことか。 それは「生きる」と「書く」が同時に存在できないことを示唆している。 生きるために書くのでもなく、書くために生きるのでもない。

          坂口安吾と矢田津世子

          【散文詩】泣き虫ピッツ

          泣いてばかり 白くカラカラな心に オアシスを 汀に消える 境界線 素足に刺さる 硝子片 流れる赤い糸 裂けた皮膚の色彩 肩をかして 駐車場 逸らせない 傷口に反射する光彩 水晶を洗い きれいだと 交差する告白 相殺された嘘

          【散文詩】泣き虫ピッツ

          【散文詩】奈落の四季(春)

          満面の幸福に焦燥の奈落 笑顔に隠す嫉妬そして無意味な抵抗 春は心機一転 好機の季節 狂気の蠢動が芽を吹く 禍福の交差する路上に悲喜劇が敷かれて 誇大妄想が跋扈し人をニ種類に分断する季節

          【散文詩】奈落の四季(春)

          【散文詩】後悔できない

          後悔なんてしてない 前向きに生きてるから そんな嘘は見え透いて はっきり嫌いと言いたかった 後悔しないように 心に偽りを許さない そんな告白は誰に誓っているのか 傷つけたこと悔やんでないし 感情は移り気で 人は変わっていくから 裏切りは罪じゃない 許すとか理解するとか 蜜のような瞳で 甘い思いで生きて欲しい

          【散文詩】後悔できない

          【散文詩】実験材料にされ続けた馬鹿の記憶

          切創から凝固した水銀の粒子が悪夢を扇動する 有機体を機能不全に追い込んだ淡い記憶が生霊ののぞみを叶える蜜を口角から一雫 唇が隠微な二枚舌をチロチロと理性を融解して切り裂く 飢えと灼熱は本能をくり抜きコーンに添えて二枚舌に差し出す 施錠を外しドアのぶが廻される 咄嗟に理性を帰還させる手際に見惚れるしかない 何ごともないふりは夢と現を逆転させる新手の詐欺の手口だろうか 踏み台にされ責任の濡れ衣を重ね着させられるたびに節操のない二枚舌の欲望は真面目な顔が八つ裂きにされる夢をみる

          【散文詩】実験材料にされ続けた馬鹿の記憶

          【散文詩】二歩目はきっと大丈夫

          武者震いだといい聞かせて踏み出した 完璧な生き方は夢の中 膝小僧のブルーの絆創膏に滲む痛み 二歩目は少しだけ上手くできるから大丈夫 嘘つきだと責めるけど 無駄なことはひとつもない 増えていく向かい傷に 泣き通した朝の日差しが黄色く見えた 叶わないからと 歯噛みして唇が染まる 懊悩する紫の記憶に 誰が悪いとか悪口も必要な夜に 大通り公園を駆け抜ける お巡りさんが見てるから止まる赤信号

          【散文詩】二歩目はきっと大丈夫