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過去の大作2 昭和のモティーフをさらに100枚

 いかがでしょうか、この美しいモティーフつなぎ。これは前に「過去の大作1」でご紹介したのと同じ本に載っていたカラー写真です。

「お花のテーブルセンター」 デザイン 赤堀雪子
講談社『婦人倶楽部』付録 『美しいレース編』昭和39(1964)年より

 「この本がたまたま実家にあったことは、筆者がレース編みに興味を持つ大きなきっかけになった」と前回書きました。その中でも特にこの写真は気に入っていて、子ども心に「何てキレイなんだろう、こんなキレイなものがほかにあるだろうか」と思って何度も何度も眺めていました。デザイナーの名前が「赤堀雪子」さんであることも印象に残っています。赤い背景に純白のレースは、まさにこのお名前のイメージにぴったりですね。
 この大きい花のモティーフは、段数は意外に少なくて5段しかありません。花芯の部分にY字編みがありますが、それ以外は特に変わった編み方でもないのです。1枚だけ編んで眺めても、何の変哲もない花モティーフにしか見えないでしょう。しかし編みつないでみると、ごらんのように稀に見る美しいモティーフに変貌します。筆者の考えでは、それはつなぎ目のデザインが秀逸だからです。
 作品の端の部分を見ればおわかりのように、モティーフの外回りは鎖5目のピコットが3つずつ並んでいます。つなぐときはこのピコットの先端同士をつなぎます。するとピコットはピコットではなくなって、モザイクを思わせるような、小さな四角をつなげた形になります。この形が、いわば全体を引き締めるスパイスみたいな役割を果たしていると思います。そして目を細めて見ると、花を中心に円が出来て、七宝模様みたいに重なり合っているのがわかるでしょう。
 美しい!
 花びらの数は12枚ですが、つなぎ方のおかげで八角形に見えます。八角同士を並べると小さな四角の隙間ができるので、それを1段のみの小さな花で埋めています。そのときもやはり、ピコットでモザイクを作りながらつなぐのです。
 筆者はこれをまた100枚つなぎました。何だかそうせずにはいられなかったのです。これを編まなかったら後悔するだろうし、編むとなればある程度大きなものを編みたい。そうすれば、このデザインが少しは後世に伝わりやすくなるでしょう。いくら自分が「美しい!」と思っていたって、世間がそう思ってくれるとは限らないので、やれるだけのことはやっておきたいと思います。

ほかに広げる場所がなくて畳の上

 製作時期の記録を調べてみると、編み始めたのは2010年の9月、完成は2014年の1月でした。ちょうど10年前ですね。
 このころは自分の人生の中でもMAXてんやわんやの時期でした。偉そうなことをいっても編み始めから完成までに3年以上費やしているところを見ると、中途で投げ出していた時間が長かったようです。
 (記憶がおぼろげに蘇る)

和室に広げて昭和レトロ風

 この作品を編み上げて自分がどう変わったかというと……特に大きな変化はありません。でもやっぱり、編んでよかった。こうしてたくさんの方に見ていただけるわけですしね。


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