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【落語好きの諸般の事情】#05 寄席における脳内インスタ映え問題(後編)

前回に続いて、寄席や落語会で「あっ、フォトジェニック!」と思った光景のお話。

この間ちらっと書いた、立ち高座の色物さんは新宿末広亭の高座によく映えるってのは、このテーマを書こうと考えた時に頭に浮かんだ高座がみんな色物さんだったため。
具体的にいうと、漫才のあした順子・ひろしさん、曲芸のキャンデーブラザースとボンボンブラザース、手品のアサダ二世さん、そして曲独楽のやなぎ女楽師。あ、この師匠は座りだった。座りから最後立ち上がって踊る俗曲の檜山うめ吉さんは、立っても座ってもフォトジェニック。
そして別格なのが江戸太神楽の美しさ。太神楽の必修科目である五階茶碗とか、どんつく(花籠鞠)とかは、インスタ映えの極致。あの華やかな装飾で見る者をハラハラもさせるのだから始末が悪い。この緊張感の中で見せる、笑いをまじえたやりとりも楽しい。
個人的に忘れられないのは、一度だけ見た経験があるキャンデーブラザースのコンビ芸。和傘を開いて真横にし、骨一本をアゴに乗せて裏表を見せる芸があって、この時の傘の骨の広がりがまるで五光のようにきれいな放射線状で、ちょっと神々しさすら感じた。30年近く忘れられない一生モノの記憶だ。あ、そういえばこれも新宿末広亭だった。やはり何かそういった感覚を掻き立たせるような、エモーショナルな建物なのだろう。

落語の高座でフォトジェニックというと、前回オマケで書いた三代目桂春団治師にとどめをさす。出から仕草、羽織を脱ぐ所作まで、どこを取っても完成されていた。
あとは、これも前回ちらっと書いた、披露興行の様式美。東京の寄席定席で一番好きだったのが御披露目興行だった。御披露目には新真打披露興行と大名跡の襲名披露興行の二種類あって、現在東京では両方やっている。
御贔屓からの後ろ幕やお祝いの贈答品が並ぶ高座の華やかさがたまらなくて、人気者の九代目林家正蔵襲名披露興行の時なんて一日で5~6枚後ろ幕が代わっていた。
さらに口上。緋毛氈の上に主役と師匠、幹部連。黒紋付で並んで順番に挨拶をし、最後に三本締めで客席全体が祝福する光景のなんと素敵なこと。
自分も客席で三本締めに加わりながら、頭のどこかで毎回、俯瞰カメラがこの光景を撮っていたっけ。


さて、ここから先は今回のオマケです。
過去に拙サイト「落語別館」の日記やブログで書いた、東京時代に足を運んだ寄席と落語会の観覧記。それにちらっと説明を加えてのリサイクル公開(一部本邦初公開もアリ)。第5回は、2000年に足を運んだ御披露目興行のこと。

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