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【落語好きの諸般の事情】#06 落語の天敵・ケータイ問題

えー、携帯電話の着信は今や寄席や落語会にとって切っても切れない腐れ縁でございまして……なんてカルい調子で語ってもいられない。口演中の落語家さんは当然のこと、落語に没頭している周囲の客にとってもあの音はなかなかの迷惑行為だ。

名古屋の大須演芸場では、座席の背もたれの裏(つまり後列の客の目の前)に「携帯はOFFで」と注意書きが貼られるようになった。これは最もダイレクトな注意だ。
地域寄席や小規模な落語会では、最初に上がる若手の落語家さんが携帯の注意を促すのが定番になった。そのせいか、この手の落語会で携帯が鳴った状況に同席した記憶が無い。もちろん事前注意も理由の一つだろうが、小さな落語会にまで足を運ぶ人は皆それなりに寄席や落語会に通っている、いわばマナーを熟知した人なのだろう。それと対比すれば、携帯を鳴らす人がどんな客層かはおのずと察しがつく。

統計をとったわけではないけど、よく鳴る印象があるのは、寄席の昼席。しかもトリの高座で、噺が佳境に入った頃。不思議とアレ、トリ高座で鳴りますよね。
以前、上野鈴本の昼席でトリの柳家喬太郎師が名作『ハワイの雪』を口演中、残り5分の最大のクライマックスシーンで最前列のサラリーマンの携帯が鳴って、舞台手前の通路を携帯プルプルいわせながらスゴスゴ退場して行ったのを目撃したことがある。高座のキョン師も最高潮の場面ではさすがにネタから降りられないし、場外に退出してもずっと聞こえる携帯のフェードアウトしてゆく様をその場の全員で共有しつつ、失笑するしかしゃーない状態だった。
時期を調べたら16年前の10月。寄席における携帯の注意が「お願い」から「注意」に変化しだしたのは、この前後頃だったとおぼろげに記憶する。

なんであのタイミングで鳴るのか考えたところ、一つ私の中で結論が出た。つまり、あの時間に鳴らすのは暇つぶしでブラッと寄席に入った営業マンで、規定終業時間の17時近くになると会社か得意先から用事か確認の電話が入るのだろうと。ブラッと寄席に入る客に、観賞マナーがあるとは思えない。
人気落語家がメインの大ホール落語会(もっと言うと大手興業会社主催の落語会)でもよく携帯が鳴る。鳴らし主は恐らく前記と大差ない。
あと、浅草のお年寄りは別格です。あそこは無法地帯。慣れるしかない。


さて、ここから先は今回のオマケです。
過去に拙サイト「落語別館」の日記やブログで書いた、東京時代に足を運んだ寄席と落語会の観覧記。それにちらっと説明を加えてのリサイクル公開(一部本邦初公開もアリ)。第6回は、2000年に名古屋であった落語会のこと。

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