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イスラム飲酒紀行

友人がお勧めしてくれた高野秀行の『イスラム飲酒紀行』を読んだ。

タイトルの通り、無類の酒好きである著者が飲酒を禁止されているイスラム圏の国々を旅し、とにかく酒を探し求める様子が記されている。

私は読書に非日常を求めていて、ノンフィクションにほとんど触れてこなかったけれど、エジプトやトルコへの旅行に興味があるのと、かなりお酒を飲むことが好きなので興味がそそられた。

読み始めた日の夜から、飲み会→二日酔いのまま飲み会→二日酔い というような”酒”という文字を見るだけで目眩がするような日々を送ってしまったせいで読むのにかなり時間がかかったという弊害もあったけれど。



今回は、

1.世界中みんな同じ人間
2.ノンフィクション、たのしい。

の2点について話そうと思う。




1  読み始めた当初、「あ、そういえばイスラムってお酒禁止か」と思った程に私の認識は浅くて、何も知らないのになんか怖い、という印象だけがあった。実際に行った人の話を聞く機会がほとんどないことや、報道される暗いニュースの印象ばかりが残ってしまっていることが原因かな。

この本を読んでいると、著者が現地人に酒はないか聞くと最初はキッパリ無いと答えるものの、別れ際になるとお酒を買えるお店まで連れて行ってくれたり、お酒をホテルまで届けてくれたりする場面が何度も出てきた。やさしいせかい。優しい国日本と言われるけど、見知らぬ外国人観光客にそこまでしてあげる日本人はほとんどいないと思う。

それと、私がゼミの教授に教授の普段の授業を受けたいから潜り込んでもいいか尋ねたら「それは出来ないけど正直いちいち受講生の顔確認しないし出席もとらないのよね」(目配せ)と返されたことを思い出して、”ルールを破る”の規模感はかなり違うけれど、似たような人間味を感じてほくそ笑んだ。


優しさとかいい面ばかりじゃなくて、結局は損得で動く感じとか、話の端々から宗教や文化、発展度合とか治安とか、そこで生活していくことの厳しさとかの違いはあれど、そこにいる人々はみんな同じ人間なんだな、とすごく当たり前のことを再確認できることが多々あった。読んでよかった。



2   小説を読んだ後にある、この登場人物達が同じ世界線の遠いどこかで生きていたらいいのに、、という虚無感に襲われることがないことにノンフィクションの素晴らしさを見出せた。

高野秀行さんといういかにも主人公らしい愛すべきキャラクターが実際にいて、この現実離れした出来事が現実に起きているのだという事実からくる高揚感は、フィクションからは得られない。


あとこれはすごく限定的な話だけど、

シリアにて著者一行がパレスチナ人に「オー、ジャパン、カラテ!」と声をかけられたと記載があった。

私が好きな、[Alexandros]というバンドに『Me No Do Karate.』というタイトルのアルバムがあって、これはボーカルの川上洋平が9歳~15歳までの6年間をシリアで過ごしていた際に、日本人というだけで何度もカラテ!と声をかけられた経験から、それに対して日本人が拙い英語で空手が出来ないことを伝えている様子をイメージしているとかなんとか、なんかのインタビューだかブログだかで読んだことがあった。

サムライとかニンジャじゃなくてカラテなんだ、変なの〜くらいに思っていたけど、2つ目の証言が出てきてかなりテンションがあがった。



すっごい浅い感想しか書いていないけど、無意識に作っていたノンフィクションに対する壁を壊せたのは大いなる成果、嬉しい。じゃんじゃん読んでいきたい。あとイスラム圏に旅行に行きたい。






追記
実際に行った人の話を聞く機会がないとか書いたけど、そういえば父がわりと長いことサウジアラビアに出張行ってたこと思い出した。事務連絡しかしないくらい仲良くないけど話聞いてみようかな。


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