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THE SECONDがなぜ今回のような審査方式になったのか予想

 先日、お笑い賞レース「THE SECOND」が終了したわけですが、気になる点があったんです。どうしてトーナメント形式にしたのか、そして、どうして観客を審査員にしたのかという2点です。

 もちろん、賞レースとは言え番組であることに変わりありませんから、他の大型賞レースと差をつけたいと考えるのは自然の流れです。しかし、トーナメント形式は過去にキングオブコントが試みており、観客を審査員にする形式は初期のM-1グランプリやTHE Wで実施されてきましたが、いずれも現在は行われていません。他の大型賞レースが捨てた形式を、なぜ敢えてふたつ組み合わせたのか。単純に気になったんです。

 賞レースの形式で王道のものは、特定の基準によって選ばれた審査員がネタを見て採点し、その点数で競うものです。「一斉採点方式」とでも申しましょうか。現在ではM-1を始め、キングオブコントやR-1で用いられている方式ですね。

 この方式をTHE SECONDがやったと仮定して考えると、少なくとも個人的には「一斉採点方式」にしなかった、腑に落ちる理由が出てきたんです。あくまで個人の予想ですが、せっかくなのでここに書いてみることにしました。

 「一斉採点方式」は前出の通り、出場者がネタを披露して、選ばれた審査員がそれを採点し、合計点を競う方式です。審査員は主にお笑い関係者、特にベテランのお笑い芸人である場合が非常に多い。いいネタを作って披露した実績があるため、みんなを納得させやすい人選となっているのでしょう。

 実際、直近の大型賞レースの審査員を確認してみると、大半がベテラン芸人でした。今回も名前を敬称略でご紹介する場合があることをあらかじめお伝えしておきます。また、カッコ内はデビュー年ではございますが、ウィキペディアから引用したため、多少のズレがあるかもしれません。ご了承ください。

M-1 2022
山田邦子(1981年)
博多大吉(1990年)
塙宣之(2000年)
富澤たけし(1995年)
立川志らく(1985年)
中川礼二(1993年)
松本人志(1982年)

キングオブコント 2022
山内健司(2004年)
秋山竜次(1998年)
小峠英二(1997年)
飯塚悟志(1994年)
松本人志(1982年)

R-1 2023
ハリウッドザコシショウ(1993年)
野田クリスタル(2002年)
小藪一豊(1994年)
バカリズム(1995年)
陣内智則(1993年)

THE W 2022
川島明(1997年)
田中卓志(2000年)
哲夫(1996年)
塚地武雅(1996年)
友近(2000年)
野田クリスタル(2002年)
〈国民投票〉

 芸歴が最も短い山内さんでも19年と、やはりベテラン芸人が揃っていることがうかがえます。審査員を選ぶ基準は不明な点が多いですけれども、少なくとも上記の方々は業界的に、そして恐らくは世間的にも審査員にふさわしいと見なされているわけです。

 さて、THE SECONDは「コンビ歴16年以上の漫才師」という、ベテラン漫才師を対象にしている大会です。つまり、コンビ歴に上限がない。キングオブコントも芸歴制限はありませんが、THE SECONDは下限があって上限がないという、ベテランに特化した大会となっています。もし、THE SECONDが「一斉採点方式」を用いたとすれば、ベテランがベテランを審査することになる。

 もし、上記の方々がTHE SECOND出場者全員を審査したらどうなったんでしょう。というわけで、THE SECOND全出場者のコンビ歴と、上記の審査員の芸歴を表にまとめてみました。今回の決勝進出者がコンビ歴どれくらいかも参考までに載せてあります。

 出場者は「コンビ歴」であり、審査員は「デビュー年」であるため、単純に比較はできませんけれども、少なくともベテラン芸人がTHE SECONDの審査員となった場合、同期または先輩を審査する可能性が結構あることが分かります。これはやりづらいと思います。芸人の経験がなくても気まずくなるのが分かる。

 それこそ、今回の出場者で最もコンビ歴が長い組は、間に長い休眠期間があったとは言え、松本人志さんや山田邦子さんよりも先輩なんです。今回は決勝に出られませんでしたけれども、仮にTHE SECONDが今後も続いたとすると、大ベテランが決勝へ進出する可能性は常にあり続けることになります。芸人が審査員をする場合、これはかなりやりづらい状況と言わざるを得ない。

 この問題を解決する方法のひとつとして「外部の人間を審査員にする」というものがあります。とは言え、あまりにお笑いと離れた著名人を審査員にすると、異論が出やすい。そこで観客を審査員にするという方法が用いられた可能性は充分に考えられます。特に昨今は審査内容を巡って審査員に批判が飛ぶことが増えておりますが、観客を審査員にすれば個人が批判にさらされる状況は防げます。

 ただし、観客はいわゆる「一般人」であるため、審査どころかテレビ収録にも慣れていない方が多いです。よって、観客を審査員にする場合はどうしても一人ひとりにおける審査の負担を軽くする必要が出てきます。審査員の数を増やしたり、審査方法を簡略化したりすることで、観客一人ひとりの責任を少なくするわけです。

 トーナメント形式にしたのも、この点が大きく関係している可能性があります。「一斉採点方式」ですと、各審査員が全出場者のネタを見つつ、決められた時間で内容を精査し、それぞれ独自の基準によって得点調整をおこない、ネタごとに採点してゆきます。

 当然、直前に見たネタだけでなく、1番最初に見たネタもしっかり記憶に留めた上で点数を決めているであろうことは想像に難くありません。それをいきなり未経験の人にやらせるのは酷な話です。1対1の対決を繰り返すトーナメント方式にし、更に評価基準を1点・2点・3点の3種類に簡略化することで、審査員である観客は2ネタのどちらかが面白かったか優劣をつけるだけでよくなった。更には、どちらも同じ点数にしてもいいというルールにすることで、どっちもよかったと評価できるようになったのも、審査に慣れてない観客を考慮しての措置ではないかと思われます。

 もちろん、あくまで個人的な予想でしかありませんが、THE SECONDが今回のような審査方法に至った理由としてこういうものがあったんじゃないかな、というお話を展開してみました。今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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