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それは努力の結果ではない

 指をパチンと鳴らす行為は皆さんもご存じのことでしょう。日本では「指パッチン」、英語圏では「フィンガースナップ」の名で知られています。口笛と同様、その身を楽器として活用する行為でございます。

 多分、テレビか何かでやってるところを見たんだと思いますが、少年だった私もやってみたくなったんです。でも、全然鳴らないんです。パチパチ鳴らしている人と同じ動きをしているはずなんですが、スカスカと指をこする音が微かにただ聞こえるばかり。

 ただ、何度もやっていると、たまに音が鳴っている気がする。どうも、同じように動かしているようで、微妙な力加減や指の細かい動きで音が鳴ったり鳴らなかったりするらしい。そこからはひたすら反復練習で身体に覚え込ませてゆきました。結果として、今では簡単にパチパチと鳴らせるようになりました。不思議なもので、右手だけで練習してきたのですが、右ができた途端、左でも鳴らせるようになりました。コツを完全に掴んだのだと思います。

 どういうわけか、そこへ変な噂話が飛んできました。「指パッチンができるやつはエロい」というものです。これまたどういうわけか、当時の少年たちの間でエロはからかいの対象でございまして、お陰でせっかくマスターした指パッチンを誰にも見せつけるわけでもなく、自宅でひとりパチパチやる日々が続いたわけです。

 私は納得できませんでした。何で努力して手に入れた指パッチンがエロの根拠になるのか。それならば、私は努力してエロくなったのか。そういうものへの興味関心は反復練習によって手に入れるものではなく、勝手にそうなるものではないのか。

 と思ったんですが、大人になった今としては「頑張ってエロくなった」でも別にいいような気もしてきました。本当はそうでもなかったんだけど、努力に努力を重ねてエロくなった。精進の結果として、今では多彩な下ネタも平気で使える。なんかそれはそれでネタになりそうだと思うようになりました。

 ところで、「指パッチンができる人はエロい」という噂が、私たちのところだけで流行ったのか、それとももっと広い地域で流行ったのか、そもそもそんな噂が存在していたのか、いろいろ気になりまして、軽く検索してみたんです。そしたら、そういう噂はネットでは見つからず、代わりに「指パッチンのエロ動画」という訳の分からないサイトがヒットしました。

 私は一生懸命に頑張った結果としてようやくエロくなったような、エロの才能がない人間ですので、そんな動画なんて見れませんし、指パッチンがどうしてエロに繋がるのか想像もつきません。レベルが高い内容にも程があります。私のような人間は無理してエロくなろうとなんかせず、真面目に生きていくしかないようです。

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