見出し画像

ニ択

 どっちを選ぶ? 
右か左か、上か下か、AかBか、、、
今までの選択肢はいろいろと運も良く、無難にくぐり抜けて来たなぁと自負してはおりました。しかしこの時ばかりは、山に向かって歩くのを選んだ事に後悔しかありませんでした。

ほんのささいな選択ミスの山道。

気持ちの良く進む山道の見通しの悪いカーブを曲がった先に、チラッと人影が見えました。

ん、誰だろう?、ん、ん、ん、、、

一瞬の出来事でした。

「グルッ、ググッ!」

あっという間に黒い塊が走ってきて、私の左足の膝より少し上にぶら下がりました。本当に何のことかわからないままそれを振り払おうと拳でたたくと、激しく頭を振り今度は足首に。

黒い塊はうちの犬とは犬猿の仲?の、
いやいや犬犬(喧々)諤々の吠え合う仲の、
しかも今日はうちの犬はつれてないのに、
どっちにしても私にとってはなんの関係もない、
散歩中の近所の犬でした。

さらに運の悪い事に、犬を散歩させている飼い主さんは自転車に乗っていて紐の伸びるリールのついたリードを使っていたためとっさに静止ができず、またうちの子は大丈夫というほんわかとした信頼関係の中、裏切りの突進で駆け出したためどうすることもできない感じでした。

飼い主さんに早く連れて離れるようにお願いし、何とか引き離してもらってから座り込んで状況を把握し気持ちを落ち着けようとしました。

飼い主さんが犬を自宅につないで、車に乗り換え戻って来るまでの間に出血が始まりました。

なんか結構やばいかも、、、

すでに立ち上がる事もできず、暗くなりはじめた空を見上げながら、

「こんなのありかなぁ、、、」

と、たった今の出来事を反芻していました。

顔を降ろしてまた、咬まれた足を根元で抑えつつ、なんかこの怪我普通じゃないなぁ。やっぱり救急車だよなぁ。
なんとなく事の大きさを感じはじめたのでした。

飼い主さんが車で戻ってきて、

「早く乗って、病院にいきましょう。」

「いやいや、血まみれで汚れますから、、、」

「汚れてもかまいませんから、、、」

押し問答の後、結局、なるべく汚さないように車に乗り込んで、いったん保険証を取りに登ってきた山道を下り、我が家の前で停まってもらいました。

我が家に着いてなんとか車から降りて、奥さまに保険証をとってきてとお願いすると、もうその頃には汗と血が混ざって左足はジットリとした状態になっていて、すでに車に乗るために立ち上がる気力もなくなりました。その様子に驚いたようで、やっぱり救急車を呼んだほうがいいという事になり人生初の救急患者となるのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?