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受験で頻出「砂上の楼閣」

日常生活で使わない言語を学ぶ場合、試験対策が最大の動機づけになることはめずらしいことではありません。日本で英語を学ぶ人の多くが試験対策として英語を学んでいます。「一億人の受験英語」といった状況にあるわけです。

試験の対策となると、設問の解き方を「応用」として学ぶことがあります。「基礎はだいたいできたから次は応用だ」みたいなことがよく言われます。しかし、この「だいたい」が問題です。実は、応用が利かない場合の多くは、基礎がだいたいでしか身についていないからです。この時期の大学受験生には、英語の勉強に関して、「穴を見つけて埋めていく勉強がしたい」という人がよくいます。「穴」というのは知識の欠落を意味するわけですが、このときの前提は「文法などの知識はある程度身についてはいるが、まだ足りないところがある」ということです。問題は本当に「ある程度」なのかということにあります。

英文法の学習は文法問題を解くためだけに行うものではないということを、持田のnoteでは何度も強調しています。しかし、現実には文法問題を解くことすらままならない受験生が多くいます。この状況で「文法知識の穴を埋める」というやり方はやや不適切であるように思うのです。過去問に出てくる文法問題の正解率が5割程度であるならば、穴を見つける作業に費やす時間がもったいないので、すぐに文法の学び直しを始めるべきです

文法学習の効果的な方法は、実は必ずしも多くの受験生に共有されているわけではありません。むしろ、多くの受験生は英文法をどのように勉強したらよいかわからないまま受験勉強を進めているのが現状です。ですから、漫然と受験勉強を進めていても、文の理解と表現という、本来ならば夏までに達成していなければならない到達目標をクリアできないでいるのです。

語のしくみ、語のしくみと音韻との対応、文のしくみ、文のしくみと音韻との対応、文章のしくみ、文章のしくみと音韻との対応、こうした知識を理解し、記憶し、使える状態になるまで練習する。ここまでが基礎の領域です。ここで「音韻」ということに触れたのは、音読との兼ね合いがあるからです。大学受験においても、受験勉強の一環として音読が勧められることがよくあります。しかしながら、大学受験の学習では、音韻との対応が軽視されがちです。音韻は言葉の音のしくみです。ここを軽視したまま音読しても何の意味もありません。音読はことばのしくみを音声として体現し、音声として体験することに意味があります。ですから、音読をする以上は、棒読みでない、しくみに則ったメリハリが求められます。

文法の理解は多くの学習者にとって必須です。塾や予備校の文法授業でも、さまざまな事情により文法の理解が十分にできないことがよくあります。そういうときは先生に質問したり、文法書を読んだりしていくことも必要です。ここを怠ってはいけません。怠れば学習は停滞したままです。

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