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例文集による英文法の学習

はじめに

大学受験のために英文法を学ぼうとする人は多いですが、ただ漫然と文法問題集を繰り返し解いていても成果は上がりません。文法問題集よりも例文集を活用することをお勧めします。

例文集の選択

まず、自分がちょっとがんばれば覚えられそうかなというレベルのものを選ぶようにしましょう。例文の英語は実際の英語を反映したものでなければなりません。例文を暗記するのですから、うそが含まれていればうそを暗記することになってしまいます。また、英語を母語としている人が読み上げた音源が利用できるものを選ぶことも大切なことです。CDが付属している場合と、出版社のサイトからダウンロードする場合とがあります。

基本文構造の学習

例文の暗記に先立って学んでおくべきことは、英文の基本的な仕組みです。日本語と英語では語順だけでなくさまざまな違いがあります。そうした違いを踏まえて英語の文の基本構造をあらかじめ学習しておくと、その後の例文暗記が効果的になります。例文集はその性質上、英文法を基礎から手取り足取り教えてくれるものではありません。このため、英文を支える基本的な規則に習熟しておく必要があるのです。

当該文法項目の理解

例文集は通常、文法項目別に配列されています。例文を覚える際には、その文法項目を理解する必要があります。この理解を踏まえないと、例文暗記が丸暗記になってしまい、英語を理解したり表現したりするときに文法知識を運用できなくなってしまいます。文法知識の理解には文法書を読み込みます。文法書は複数のものを読み込むのが理想的ですが、これがなかなか難しかったりします。取っつきやすく説明してある文法書の中には不正確な説明も多く、勉強を進めていくうちに後で混乱の原因になったりすることもあります。文法書の理解には、友達同士で読書会を開いたり、先生に質問したりしながら進めていくとよいでしょう。

[2022年4月16日追記]
上記2つの目的のために、こちらも活用できます。

例文の分析

これはいわゆる英文解釈の要領で、どれが主語で述語動詞で、というように文の構造を分析していきます。ただし、一般的な構文分析では語順や語形といった形式面の分析にとどまりがちですが、ここでは助動詞や前置詞の選択といった意味の面も掘り下げていきます。すなわち、なぜこの形式がこの意味を表すのかが自分で納得できるようにするのです。もちろん、語彙についても辞書を引いて意味や用法を確認していきます。

語句のまとまりごとの音読

例文の分析ができたら、分析した語句のまとまりごとに、声に出して読んでみます。こうした語句のまとまりは「チャンク」と呼ばれることがあります。このときに品詞によって強く発音するのが基本の品詞と、弱く発音することが基本の品詞がありますから、その基本に従って発音するようにします。こうすることで文構造を口と耳でリズムという形で体感できるようになります。

日英語の比較対照

例文集には、暗記すべき英文とそれに対応する日本文がセットになっています。両者を比較すると、日本語と英語の違いがわかり、その違いの把握を通じて英語の仕組みや発想に対する理解を深めることができます。この段階で疑問点があれば文法書を読み直したり、辞書を引いたり、先生に質問したりします。

全体を通しての音読

ここで例文を全体として発音します。この段階では、文全体の意味が分かり、文の中でどの語句をもっとも強く発音すべきかもわかってきます。これも音読に反映させるようにします。英語の音声・音韻の仕組みについては小中学校のころから徐々に身につけてきた人は問題ないかもしれませんが、そうでない場合は最初に基本文構造とともに明示的に、つまり理屈で理解しておくことが必要です。

ディクテーション

ここから例文を見ないで書く練習に移ります。例文を音源で聴き、書き取っていきます。最初から一度で完璧に書ける必要はないですし、そもそも手の動きは口の動きより遅いので一度で完璧に書くのは無理です。プレーヤーや再生アプリのリピート機能や一時停止機能を活用して、途中で止めたり繰り返したりしながら、書き取るようにしていきます。日本語のリズムと英語のリズムは違いますから、そのリズムの違いに戸惑うかもしれませんが、その戸惑いのなかで日本語にはあまりない、英語の音の同化や弱化といった現象に気づき、英語の文の仕組みのどの部分に同化や弱化が起きやすいかを知ることで英語の仕組みを耳で感じ取ることができるようになるのです。これも英文法の知識を記憶し、瞬時に使えるようにしていくには大切なことです。

5W1Hの把握と音声への反映

英文の形式と意味の対応が把握でき、それをある程度体感できたら、今度は文脈や場面を考えるようにします。誰が誰に向かって、いつどこで何のためにどのように語った文なのかを考えるのです。これらを考え、把握、場合によっては予測することで、文に感情がこもります。これで文の発し方にさらにメリハリがつきます。これを音声に反映させて改めて音読します。いわゆる表現読みの領域に入ってきます。音源の発音はおとなしめのものが多いため、ここでの読み方はややオーバーに感じられるかもしれませんが、これを試すことで、文レベルの先にある文章レベルの学習に弾みをつけることができます。

シャドーイングとリテンション

さらに音声ベースの活動を続けます。シャドーイングは音源の音声の後にすぐ続ける形で音声を発する練習です。はじめのうちは例文集を見ながらでもいいですが、徐々に見ないでできるようにしていきます。リテンションはいわゆるListen & Repeatです。音源で文を最後まで聴いてからリピートします。ここまでの練習で英文がかなり記憶に定着してきているはずです。

和文英訳:口頭・筆記

仕上げの段階です。例文集の日本語を見て英文が言えるか、そして書けるか確認します。グループで勉強している場合は、日本語を読み上げて相手に英語を答えさせるといったやり方も有効です。教室では対面で小テスト的にチェックするのもよいでしょう。もちろん口頭で言えても手で正確に書けなければ意味がありませんから、筆記による和文英訳も行います。これですらすらと英文が出てくれば、とりあえず例文暗記は完了となります。

おわりに

これらの一連の活動をすべて念入りに時間をかける必要はありませんが、一通り実践して効果的でメリハリのある暗記を心がけることは大切なことです。また、手間がかかると言っても、文法問題集を何度も漫然と繰り返すよりははるかに早い定着が期待できます。是非お試しください。

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