オシャラ

中南米の民藝好きが高じてリトルプレスを作ったりしています。noteを使って、まだまだ日…

オシャラ

中南米の民藝好きが高じてリトルプレスを作ったりしています。noteを使って、まだまだ日本では知られていない中南米の民藝を紹介していきたいと思います。 https://www.instagram.com/oxalarte/

最近の記事

ブラジルのメヒナク族の手仕事と儀式

ブラジルの先住民メヒナク族は、洒落た動物の椅子を作ることで知られています。コレクターもたくさんいて、カタログも出版されるぐらい人気があります。2018年に東京都庭園美術館で開催された「ブラジル先住民の椅子」展でも彼らの動物の椅子は出展されていました。そのメヒナク族のアートを取り上げたいと思うのですが、椅子ではなく、今回は彼らの木製の調理器具、パ・ジ・ベイジューについて話したいと思います。 メヒナク族は、マットグロッソ州シング―先住民居住地に居住しています。彼らの木工芸は、ウ

    • チロエ島のカゴ

      南米チリのパタゴニアの玄関口に位置するチロエ島は民具の宝庫。特に島に自生する植物で作られた多様な「カゴ」が道具として存在していたのだそうです。「していた」と過去形なのは、現在は、民具としての機能を果たすカゴがすっかり減ってしまったからです。その代わり、今は、彼らの「編む」技術を保存するため、現代社会に合うカゴ作りや装飾品としての編み細工などが盛んです。 今回はチロエ島の今のカゴ事情についてざっくり紹介したいと思います。 素材だけではなく、カゴの種類などバリエーションが沢山あ

      • チリの馬毛細工が特異な理由

        チリにはクリンと呼ばれる馬毛細工があります。 200年以上も続く伝統工芸にも関わらず、「手仕事」と仰々しく呼ぶよりも「ハンドメイド/手作り」と呼びたくなる、素朴で可愛い手仕事なのです。南米の中で、特異な印象のある手工芸。そう思わせる理由は、その成り立ちなどを調べていると、なんとなく分かるような気がしました。 ずばり先にその理由をお答えすると、 200年という時間の流れのなかで、村の女性たちが集い、技術を共有し、工夫しあって改良してきたから。 イメージとしては、村の女・子

        • ヤノマミ族のカゴとキノコの糸

           アマゾンの森には私たちが聞いたことも見たこともないような植物や生物の宝庫ですが、ブラジルの先住民族ヤノマミたちの間でPERISI(ペリシ)と呼ばれているジャングルの地面に広がる根状菌糸束があります。ペリシの意味は「キノコの糸」。黒い光沢があるこのキノコの科学名は、マラスミウス・ヤノマミ(Marasumius yanomami)。ヤノマミが発見したことにより、このように命名されました。  このキノコの糸を使って、ヤノマミの女性はカゴ作りをします。伝統的に彼らのカゴには、伝承

        ブラジルのメヒナク族の手仕事と儀式

          マプチェ族の手編みバッグ、ピルワ

          前回に引き続き、南米の植物からできた糸で編まれたバッグを紹介したいと思います。今回は、チリのラフケンチェ族の手編みバッグ、ピルワについて。 チリにはまだ足を運んだことがなく、この国の手仕事に関する資料があまり手元にありませんが、今回はわずかな手元資料とネットで調べた範囲内での説明にとどまります。実際に旅をしてみて、追加することがあれば、また別の機会に触れたいと思います。 チリ南部には様々なグループからなるマプチェ族が多く住んでおり、今でも自分たちの伝統を守りながら暮らして

          マプチェ族の手編みバッグ、ピルワ

          自然と交渉して完成させるマシャカリ族の手編みバッグ

          植物に音楽を聞かせたり、話しかけたりすると、育成に効果があるとよく言われますが、人が植物とつながろう、働きかけようとする行為は、私たちの身近でも行われていることです。そんな関係をもっともっと膨らませたのが、ブラジルの先住民、マシャカリ族の女性たちとエンバウーバの木。彼女たちは木に歌いかけ、繊維を採るために交渉し、糸を作ることを約束します。願いを受け入れたエンバウーバは、糸が作られ、その手仕事の完成を見守ります。もし作り手になんらかの落ち度があるとみなしたり、気にくわなかったり

          自然と交渉して完成させるマシャカリ族の手編みバッグ

          中南米の先住民の天然素材のふくろ

          その土地土地に自生する丈夫な植物繊維からできた糸で編んだふくろ。植物独自の触感があり、色があり、それぞれに良い味があります。 私たちが日常使っている綿だって植物からできているので、珍しくないはずなのですが、知らない植物から作られた糸で編まれたふくろに異常に関心を持ってしまいました。 中南米にはこのような手仕事がいろいろあります。特に先住民は、昔から受け継がれてきた知識で、どの植物が織物に向いているのかを知っており、今でも彼らが日常使用するふくろを編んでいます。それぞれがど

          中南米の先住民の天然素材のふくろ

          進化するブラジル先住民アート

          ブラジルの先住民アートは進化しています。先住民アートというとプリミティブなイメージがありますが、現在は、もっとマーケットの需要とデザインに焦点を当てて、「売れる」民藝を作っています。そんなことをしては彼らの文化の破壊に繋がるのではないかと、批判する声もありますが、私はそうは思いません。ペルーでは、アンデスの先住民が、かつて自分たちの民藝の生き残りをかけて、ペルーの一般社会の需要に合わせて変えたように、ブラジルの先住民アートも、ここ20年ぐらいのあいだにずいぶん様変わりしました

          進化するブラジル先住民アート

          中南米の民藝と癒し

          猫や犬に癒される人はたくさんいると思います。それでついつい、YouTubeなどの動物動画を見てしまうという人もたくさんいるかと思います。 どうして動物に癒されてしまうのでしょうか。 仕草や行動など人それぞれに理由はあると思いますが、私は動物の顔、特に眼差しにコロリとやられてしまいます。可愛すぎて、あの目に「愛情ホルモン」がほとばしります。 実は、中南米の民藝、特に動物を扱った民藝にこれと同じ癒しを感じることがあるので、今回はそれについて書いてみようと思います。 民藝と

          中南米の民藝と癒し

          画家ホセ・サボガルとペルー民藝

          すでにブラジル民藝運動の先駆者マリオ・ジ・アンドラージについて紹介していますが、今回から数回にわたり、ペルーの民藝運動について書こうと思います。 ペルーでは、インディへニスモが深く影響している点が重要です。 インディヘニスモとは、「ペルー先住民(「インディオ」あるいは「インディヘナ」)の擁護と文化的、社会的復権を求める社会運動。19世紀から20世紀にかけてのペルーにおいて、思想や文学に大きな影響を与えた・・・」 (ウィキペディアより抜粋https://ja.wikipe

          画家ホセ・サボガルとペルー民藝

          アヤクーチョの民藝 - レタブロ

          レタブロとは アヤクーチョには、世界的に知られている箱型祭壇の民藝があります。扉つきのこの祭壇の中には、ミニチュアの人形によって農村地帯の日常や祭りが再現されています。人形の材料はペースト状にした芋と石灰で、手捏ねや型にはめて作られます。祭壇は木製で、扉には色鮮やかな花が描かれています。これをアヤクーチョのレタブロと言います。

          有料
          100

          アヤクーチョの民藝 - レタブロ

          ブラジル版「民藝のある暮らし」~ うつわ

          「民藝のある暮らし」を積極的に取り入れるようにしています。 味気のない工業製品に囲まれた暮らしよりも、職人の知恵や手仕事のぬくもりが感じられる民藝品のほうが、毎日の生活に彩りを与えてくれると思うからです。そして、昔から受け継がれてきた技術と知恵が今後も保存されるためにも、それらを購入することで、ささやかながら手仕事の応援をしたいと思っています。 そこで今回は、ブラジル版民藝のある暮らし、うつわ編をまとめてみることにしました。 ブラジルの民藝の特徴ブラジル民藝の特徴は、同

          ブラジル版「民藝のある暮らし」~ うつわ

          メストレ・ヴィタリーノとブラジルの郷土人形

          リオデジャネイロにはペ・ジ・ボイという民藝品と民藝アーティストの作品を専門に扱うアートギャラリーがあります。そこではブラジル全国から集められた手仕事を見ることができます。店に入ると、必ず最初に目を遣ってしまうのが、ペルナンブコ州カルアル市のアルト・ド・モウラの土人形です。ブラジルの代表的な郷土人形の一つで、まん丸目玉の愛嬌ある表情が特徴です。 この人形がブラジルの代表的な民藝になったのは、カルアル市郊外に住んでいた無名の陶工の土人形がきっかけでした。その陶工の名前はヴィタリ

          メストレ・ヴィタリーノとブラジルの郷土人形

          ペルーの民藝 アヤクーチョの織物&刺繍

          ペルーの民藝、とりわけアヤクーチョの民藝については、昨年2020年に小冊子にしてまとめましたが、今回は、織物と刺繍に特化してご紹介したいと思います。 アヤクーチョ刺繍は、古代から伝わるアンデスの染織技術と西洋の刺繍技術が融合し、美しく調和された手仕事です。 アヤクーチョ県ワンタ郡のルリコッチャと言う地域には、伝統的に多色の刺繍が施されている手織りのマンタ(肩掛け)が作られています。おそらくこれがアヤクーチョ刺繍の始まりだと言われています。 今回取り上げるのは、この地方の

          ペルーの民藝 アヤクーチョの織物&刺繍

          ブラジル北東部の代表的な民藝 その1船首像(カハンカ)

          気が付けばブラジル北東部の民藝のことばかり書いていました。 それもそのはず、同地方はブラジル民藝の宝庫で、前々回に紹介したマリオ・ジ・アンドラージを始め、多くの知識人がブラジル独自の文化をこの地に見出し、訪れた場所です。そして「新発見」をしては、リオデジャネイロやサンパウロなどの都市で展覧会を開催しました。こうして、国内外でブラジルの民藝が認知されるようになっていったのです。 その中でもブラジル民藝の代名詞とも言えるものが3つあります。それは 1. カハンカ(船首像)

          ブラジル北東部の代表的な民藝 その1船首像(カハンカ)

          祈りと民藝:ブラジル北東部のエクスヴォート

          エクスヴォートには深い思い入れがあります。 前回紹介した北部・北東部の民俗学調査団の団長、ルイス・サイアがペルナンブコ州の教会で初めて見たエクスヴォートに感動したように、私も初めてリオデジャネイロのアートギャラリーで見つけた時、かなり衝撃を受けたのを覚えています。木彫りの足や手、胴体、頭など体の一部あるいは人型など、仕上げは粗いとはいえ、造形力が並々ならぬ高さで、見る者を惹きつける力があります。 それ以来、すっかりエクスヴォートに夢中になり、文献を読んだり、奉納されている

          祈りと民藝:ブラジル北東部のエクスヴォート