酒とみりんの使い分け、どうしてる?
酒とみりん、お料理を作る時によく使う調味料ですね。
煮物や和惣菜を作る時の登場頻度が高いのに、基本調味料(砂糖、塩、酢、醤油、みそ)に含まれていませんし、どちらもアルコールが含まれた酒類です。
どんな時にどちらを使ったらいいのか、使い分けていますか?
レシピにみりんと書いてある時に酒で代用したり、酒の代用にみりんを使えるのでしょうか?
先日からたくさんの方にご覧頂いている片栗粉と小麦粉の違いのように、AならばBと簡単に決まらないところがまた難しいですよね。
困ったことに、両方使うレシピも多いです。
それぞれの役割を知って上手く使いこなせるようになると、煮物や和のおかずが美味しく作れるようになります。
まずは使い分けの前に、酒と料理酒、みりんとみりん風調味料、みりんタイプ調味料についてもお話しますね。
酒と料理酒、何が違うの?
スーパーの調味料コーナーの棚には「料理酒」と書いたお酒が並んでいます。名前の通り、料理に使うためのお酒です。
ではお酒コーナーに並んでいる日本酒とは何が違うのでしょうか?
それは「飲める」か「飲めないか」の違い。
料理酒には「飲用ではない」とわかるように加塩されています。しょっぱくて飲めないくらいの塩が入っています。
飲んだことありますか?
私はあるセミナーで飲んだ、と言うかなめたのですが、海水に近いほどしょっぱくて(製品により2%前後)驚きました。
これは酒税の関係で、今ほどお酒が手頃ではなかった頃に「高価で酒を料理に使えない」を解決するための措置でした。詳しくはこちらでもご紹介しています。
ただ、最近は加塩していない宝酒造の「料理のための清酒」などの料理向けの酒もあります。
みりんとみりん風調味料、みりんタイプ調味料、何が違うの?
みりんはもう少し複雑です。
昔からのみりんは、みりん「風」やみりん「タイプ」と区別する意味合いで「本みりん」と表示されています。
日本酒と料理酒の関係に近いのは本みりんとみりんタイプですね。加塩しているので酒税がかからず安価です。
対して、みりん風は本みりんに風味を似せた調味料ですがアルコールをほぼ含まないので、加熱しないお料理にもそのまま使えると言うメリットがあります。こちらも本みりんの代用として生まれたため安価です。
ただし、アルコールがあることで得られる機能的なメリットはありませんので、そこをふまえて選ばないと、レシピ通りの仕上がりにならない場合もありそうです。
酒とみりん、どう違うの?
さて、では上記を踏まえたうえで、酒とみりんは何が違うのでしょうか?
料理に使った時の効果での違いを見てみましょう。
こうしてみると重複している役割が多いのでお互い代用し合えそうな気がしますね。
①〜④が重複しているのはアルコールがあることによる効果なので、みりん風調味料には適用されません。
①は、アルコールが揮発する際に嫌な匂い成分も一緒に飛ばしてくれるので臭みが取れます。そのため、フタをせずしっかりアルコールを飛ばすとさらに効果的です。
②の煮崩れ防止は、野菜や果物の細胞壁を作っているペクチンと関係があります。ペクチンはアルコールが浸透すると結びつきが強まり溶けにくくなる性質があります。細胞の結びつきが強まって溶けにくくなるため煮崩れしにくくなるのですね。
③の味の染み込みを良くするのは、アルコールは分子が小さく食材に素早く染み込むため、他の調味料の浸透も助けてくれます。
④のうま味とコクは、酒やみりんにはうま味の素となるアミノ酸であるグルタミン酸、ロイシン、アスパラギン酸などが含まれているためです。
料理のコクは雑味に由来することもあるので、料理に使う酒は淡麗でスッキリとした高級品よりも手頃なものの方が効果的なようです。安心してお手頃な酒を使いましょう。
では、ここからはみりんに特有の機能です。
⑤の甘味ですが、みりんの糖度は40〜45とおよそ半分くらいが糖で出来ています。そのため甘味をつける調味料としても使えるのですね。
みりんの代用として「酒+砂糖」を使う場合、砂糖は糖度が100なので
みりん2≒酒1+砂糖1
とすると、そんなに大きく外れることはありません。水分を足さずに甘味だけ足したい場合は、砂糖をみりんの半量、逆に砂糖をみりんで代用するには重量比較ではおよそ1.5倍なのですが、糖の種類の違いにより甘さの感じ方が異なり砂糖の方が強く甘味を感じるため、砂糖の倍量のみりんを入れるとちょうど良く、計量もわかりやすいでしょう。
⑥照りを出す効果は、みりんに含まれるオリゴ糖やブドウ糖などのさまざまな糖類があることでつやや照りが出ます。みりんの代用として酒+砂糖を使っても砂糖はほぼショ糖だけなので、みりんほどの照りの効果は期待出来ません。
照り目的でみりんの代用をするなら、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖などを含むハチミツがおすすめです。ただし、ハチミツは種類によってクセが強い場合があるなど味わいに大きな違いがあるため注意が必要です。
また、ハチミツの糖度は78なのでみりんのおよそ半量で置換えられると覚えておくと便利です。
さて、すこし長くなりましたが酒とみりんの使い分け方が見えてきましたね。
ところで、最後の難関「酒とみりんを両方使うレシピ」についても説明しておきましょう。
うま味を減らさず味を薄めるには?
煮物を作っていて調味料を入れ過ぎたり、煮詰めすぎて味が濃くなってしまうことがありますよね。
そんな時は水を入れて味を薄めますが、良くも悪くも水は無味なため、うま味も薄まってしまいます。
せっかく煮詰めて美味しくしたのに、元も子もありません。
そんな時に便利なのが、そう、酒なんです。
酒で薄めれば、味(塩味、甘味、酸味、苦味)は薄めつつ、うま味(アミノ酸類)を足せるので、美味しさを損なわずに味の濃さを調節出来るのです。
この役割、みりんでは甘くなり過ぎますし、料理酒ではしょっぱくなってしまうので、酒にしか出来ない使い方です。
レシピを書いた人の意図が必ずしもそうかどうか本当のところは本人に確認しないとわかりませんが、酒とみりんを両方使うレシピの意図はここにあるのではないかと思います。
「使い分け、どうしてる?」シリーズ
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