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新たな一輪

独房に渡されてきた一輪の花達は、
日に日に、枯れ落ち。
腐敗し独房をより独房としてきた。

冷たい萎れた花

欲に塗れたむさい花

毒を持った茎の棘で
視界が見えなくなるまで
自身を縛り付ける毒花


結局はどの花も、
枯れ落ち、
腐敗し、
毒していった。
より独房を独房へと変貌させていったのだ。
独房は、何重にも施錠がされ、
窓もなく、より深く地下へと落ちていった。

だが、一輪の花は他と異なり
燃え上がる焔の様に独房全体を包み込み。
独房のこびり付いた穢れも
私の穢れ毒された身体をも
ゆっくりと消し去ってくれるのであった。

その一輪は暖かくも
独房と私の穢れを受け止め、抱擁し、
今までにない
愛、と言うのでしょうか。

とても麗しく愛らしい燃え上がる焔の様な一輪を
差し出されたのである。


これまで美しく凛々しい一輪の花は、
見たこともないほど、
奇跡、と言っても良いほど
私の全てを変えられてしまうほど、
この一輪は成し遂げてしまうのだろう。


私にとってはこの一輪は、
最もこの生きてきた独房生活の中で
私自身、
否、
独房なんて要らなくなってしまうほどの
暖かさを感じたのだ。


この一輪が例え枯れ果てたとしても、
今後の私を決定的に変えてしまった
唯一無二の愛の一輪なのだ。


この一輪を差し出された、という事実だけでも
独房で苦しんだ甲斐はあったと思うのだ。
それ程に、今、
独房を出る事が出来るくらいに
この一輪に救われている。


今度は、
私がこの独房から出て、
この様な燃え上がる焔の様な永遠に枯れない一輪を差し出そう、そう思えたんだ。
そう、思えたんだ。

愛の一輪を。キミに。

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