13歳でキッチンドランカー
最初に酒を飲んだのは物心つく前、飲んだと言っても、ドカタの飯場の納涼会でビールを舐めた程度。苦くてまずかった。
ことあるごとにドカタたちから酒を飲まされるうちに、自分からねだって少し飲むようになったのが小学生低学年。もうこの頃には、下地ができていた。
本格的に飲むようになったのは13歳。母は乳がんで入院し、父は愛人と一緒に別居して、兄の食事の面倒をすることになった。
極真空手有段者で暴走族連合リーダーで暴力衝動がある兄からのDVに耐えきれなくなって壊れそうになった時、料理酒に使っていた剣菱の二級酒に手を出した。
家事はやることが山盛りで間に合わない。授業中にずっと料理本を読んで精魂込めて料理を作ってもなじられる。今日も暴力にさらされるのかと常におびえていたが、酒を飲むと恐怖心がすっと消えた。以来、お勝手に立つときは酒をちびちびやっていた。13歳で深刻なキッチンドランカーになってしまった。
一日中付きまとう絶望感と恐怖心を紛らわすために、次第に学校でも酒を手放せなくなった。高校生の頃には、バイトで稼いだ金は酒に変わった。ウィスキーならボトル一本を飲んでも酔わなかった。
子供の頃、世界で一番の親友は酒だった。恵まれた生活を送ってきたクラスメートには腹を割って話せなくても、酒は苦しみを理解して慰めてくれた。
今でも大切な幼なじみと会話をするように酒を飲む。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?