テレビゲームで育たなかった私のレトロゲームの話

1章 旅の強制終了

世間一般では「レトロゲーム」といえばファミコンなどのテレビゲームを思い浮かぶ人が多いと思う。私の場合、ゲームボーイカラーは持っていたけれど、学校入学とともに視力が低下したため、視力低下の原因として親に没収されてしまった。ピカチュウとともにニビジムバッチを手にすることなく、星降りの大会で優勝することなく、私の見たかったエンディングは夢の彼方へと消えていった。

その日から私にとってのゲーム機はパソコンのみとなった。

当時、我が家には親の仕事の関係でMacOSがあり、親が使っていない時はパソコンを使うことができていた。といってもゲームボーイカラーのようにスイッチを入れればすぐできるという訳ではなく、まずCD-ROMを入れ、スタート画面に出てきたアイコンをダブルクリックし、さらにフォルダの中のアイコンをダブルクリックし・・・とゲームボーイカラーよりも、めちゃ起動がめんどくさかった。ゲームスタートまでの道が長いのだ。そのため、あるパソコンゲーム用CD-ROMが攻略されることなく放置されていた。

それは「サンリオタイニーパーク」と「サンリオタイニーパークVol.2」だった。かつて、親の友達の家に遊びに行った時にその家の子供が夢中になって遊んでいたパソコンゲームがタイニーパークだったのだ。

人というのは他人が持っているものを見ると羨ましがる面がある。そして欲望を持ち、そのものを手に入れるためにエネルギーを全力に注ぎこみ、時に周囲を巻き込んでまでも、ものを手に入れる。満たされた欲望は一瞬の快楽を生じさせるが時間が経つと、まるで花火のあとのように欲望のことも、熱望して手に入れたもののことさえも忘れてしまう。特に子供は。

ピカチュウとの旅、モンスターとの旅、2つの旅を絶たれた私にパソコン画面から映るキティはあたたかく私を迎え入れてくれた。「私と一緒に遊びましょうね!」

2章 サンリオタイニーパーク

「サンリオタイニーパーク」は1990年代に発売されたCD-ROMゲームで、全4タイトルがある。それぞれに8つのミニゲームが収録されており、個性豊かなサンリオキャラクターがゲーム内容をより楽しいものにしてくれている。私は1作目となる「サンリオタイニーパーク」と2作目の「サンリオタイニーパークVol.2」を親にせがんで買ってもらった。
特に私が印象深いと感じたミニゲームを3つ紹介する。

みんなのたあ坊のどうくつたんけん(「サンリオタイニーパーク」)

たあ坊と、たあ坊の弟・まあくんと洞窟探検をしながら洞窟内で起こる問題をクリアしていくゲームである。
このゲームにはストーリーを楽しむことを目的とした「おはなしモード」と出題される問題を楽しむのに特化した「もんだいモード」があるのだが、私は「おはなしモード」を選択することをお勧めしたい。なぜなら洞窟探検の最後に優しくも少し切ないエンディングが見られるからだ。大人になって、このエンディングを改めて見ると心にじわりとくる。

おさるのもんきちのメロディでござる(「サンリオタイニーパークVol.2」)

流れてくる音を聞き正しい音階にアイコンを動かして、もんきちを向こう側へ渡らせる絶対音感をお持ちの方なら楽しめるであろうゲームである。
このゲームは失敗すると、もんきちが「さ~ら~ば~で~ご~ざあ~るう~!」と絶叫しながら落ちていき、正しい音階が何であったかもわからないままリトライさせられるので、私にとっては恐ろしいゲームであった。絶対音感のない私にはクリアすること、イコール運が良かったに等しいものであり、次こそはと思っては失敗して途中でやめてしまうゲームであった。ただ、このゲームのおかげか音に関しては敏感な人になったような気がする。

けろけろけろっぴのすごろっぴ(「サンリオタイニーパークVol.2」)

最大5人まで一緒に遊ぶことができる双六ゲーム。舞台となる山や池、森の風景が見ていて楽しく、アイテムを貰うことでゲームの得点を稼いで競う面白さもある。ただ、私はこのゲームを大抵ひとりで遊んでいた。一緒にすごろっぴをして遊んでくれる友達が当時、いなかったのだ。いなかったのだ・・・。

3章 CD-ROMゲームの思い出

こうして私はCD-ROMゲームによって、6歳でパソコンマウスの基本操作が身に着いた。おかげで、パソコンに関して嫌悪を持つことなく今日までいる。その代わりテレビゲームのコントローラーには不慣れな人である。

「サンリオタイニーパーク」で楽しく遊ぶようになった私は、親と一緒に札幌の家電量販店でCD-ROMソフトの売り場を見に行くのが好きになっていた。気になるゲームがあれば買ってもらえたが、中にはMac非対応の為になくなく買うのをあきらめたゲームもあった。それはCD-ROMソフトの売り場がアダルトゲームばかりになってしまった時まで続いた。

「ももんがクラブ」「マルチあきんど」「マックスとひみつのゆうれいじょう」「ピクルスブック」「星の王子様」「ソフィーの世界」・・・私にとってはどれもテレビゲームでは遊べないけれど、パソコンだからこそ遊べ、楽しめた思い出のあるタイトルばかりである。そこで遊んだ思い出は今の私の一部にもなっている。この思いはゲームで遊び、楽しんだことのあるすべての人に共通するのではないだろうか。

ただレトロゲームの話になった時、まわりの人や、大多数の思い出話と重ならない歯がゆさはある。それもまた成長のための一つの特典なのだと自戒しながら。

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