「10年前に予想した未来」

 2018/9/12 アルパカで締めくくりたい

「そう言えば、10年前はこんなことを考えていた」

 ふと思い出したので、できる限り前向きな10の話題を中心に、私の生活実感だけに基づき答え合わせをし、そして、今後の未来を考える契機にしたいと願うものである。

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1.ペーパーレス化が進む。
[予想]
 有価証券のペーパーレス化には実感を得ることはできなかったものの、航空券のeチケットに優れた合理性を実感し、10年もあればペーパーレス化は更に普及するはずであると考えた。
[実感]
 数年前、スマートフォンの画面だけで国際線に搭乗できた日には感動を覚えた。一方で、電子媒体で対応できる体制は整いつつあるも、依然として紙は好まれるし、それには利点もある。電子書籍はあっても、やはり紙の書籍を手にすると嬉しいし、書棚に並べたくなる。余談ではあるが、どこかの組織では電子決裁を仰ぐために「偉い方々にプリントアウトした資料を提示しお伺いを立てる」という謎の慣習が残っているとか。何のための電子決裁であろうか。

2.電子マネーが普及する。
[予想]
 交通系ICカードの何と便利なことであろうか。利用可能な施設さえ増えれば、財布がカード入れになる。
[実感]
 気付けば、京都市営地下鉄も、函館市内を走る路線バスも、ICカードに対応していた。また、コンビニやスーパーのレジも、ICカード決済が目立つ様になった。ただし、若年層の普及は感じるが、ボリューム層は今ひとつであろうか。今でも、電子マネー、クレジットカードだけを持って出掛けると痛い目に遭うことがあるが、中小事業者にとっては依然として導入コストやキャッシュフローの問題が切実なのであろう。
 通貨の本質は「信用」であり、「信用」が付与されれば交換価値を持つに至る。現在、ICカードは生活の一部となった。長期的には、現金を使用する機会は更に減ることであろう。

3.法科大学院の苦難。
[予想]
 法科大学院の設置理念には賛同できるものであり、それは今も変わらないが、法科大学院への進学に伴う労働機会の逸失は、当時の経済情勢に鑑みるに、たとえ学費負担を免れても、その衰退は予期できるものであった。
[実感]
 多くの法科大学院が廃止を余儀なくされた。また、当初の合格者目標値と実際の実施結果の乖離は、進学者を裏切るものとなった。司法試験を現代の法曹育成理念に照らし、開かれたものとして維持するためには、予備試験の実施は必須であるが、それを狭き門にし過ぎたことが、当初の目的に反して最上位層のための短縮ルートとなってしまい、法科大学院の衰退の一因となったのではないか。それならば、司法試験の受験資格をオープンにして、「法科大学院を修了した者は受験科目の一部を免除する」とか、もう少し実効的なやり方はあろう。

4.ボーイングとエアバスの次期主力機対決は、ボーイングに利がある。
[予想]
 "hub and spoke"のボーイングか、"point to point"のエアバスか、ヨーロッパ圏内の航空事情を考慮すれば、ボーイングに利があるのは当然であろうと予想した。例えば、観光地としてプラハが人気であったとしても、ビジネス需要が限定的な都市に日本から直行便を飛ばしてたところで採算は取れないであろうと。
[実感]
 B787は、数々の苦難に直面しながらも、主要需要者たる日本キャリアを中心に、その燃費、飛行性能から就航都市数の確保に大きく寄与したものと思われる。一足先に有償飛行に供されたA380は用途が限定的になりがちであり、"hub and spoke"と"point to point"の対決は前者に利があったものと思われる。
 ところで、 国内キャリアからジャンボ機が消えた今でも、日本の空をA380やB747-8iが飛行している。豪華客船を彷彿させるそれらの旅客機は、優雅で魅力的である。

5.国産ジェット機の実用化は到底困難である。
[予想]
 たとえ日本企業に技術があろうとも、世界市場で販売するに当たって、それをサポートするための拠点を世界中に設置することができるのか疑問視していた。正直なところ、もはやボンバルディアやエンブラエルとは勝負にならないと確信していた。
[実感]
 この予想が良い方向に外れようとしていることに喜びを感じる。MRJのローンチカスタマーであるANAとともに、世界の空を飛行する日が訪れることに現実味を帯びてきた。あとは、競争力の問題であろう。依然として前途多難であることに相違はないとしても、これ程嬉しい「予想外」はない。年月を経て、一縷の希望が見出された。

6.日本でAppleがシェアを伸ばすことは困難である。
[予想]
 当時、Officeの使用は実質必須であり、windows以外のOSを搭載したPCは目的に適合しなかった。私自身、悩むよりも慣れたものを、できればプリインストールがなく、更には安価なものを選んでいた。
[実感]
 エンドユーザーにおいて、これほどiPhone、iPadの需要が増加することは予想外であった。そうなると、それに伴い必然的にMac需要も増加してくる。依然としてwindows優勢の現状ではあろうとも、Macがこんなに一般的になるとは思いもしなかった。

7.人と人が顔を付き合わせる機会は激減する。
[予想]
 人と会うにはコストが掛かる。その点、例えばskype等の通信系アプリケーションソフトを活用すれば、ビジネスの場面でも無駄な移動は相当に削減できるのではないか。
[実感]
 結局、常に人と人が顔を突き合わせて仕事に取り組むことの必然性は感じないが、相対して交渉に当たることの効率性は依然として認められよう。この間に就職し、実際に組織で働いてみて、どうしても話が噛み合わない相手であっても腰を据え膝を交えて議論することで解決できる場面が少なくないことを理解した。

8.既存のマスメディアの影響力は弱体化する。
[予想]
 当時、既にインターネットを介して誰もが発信者となれる環境は整っていた。「嘘は嘘と見抜ける人でないと」という言葉も定着したほどであるが、リテラシーが追いついていなくても、その解消は時間の問題であろうと考えた。
[実感]
 SNSの普及やスマートフォン搭載カメラの高品質化も相まって、国民総カメラマン、総リポーターの時代が到来しつつある。しかし、それをもって既存メディアが衰退化したかと言えば、必ずしもそうは思わない。ただし、それまでのような一方向的なものから、双方向的なものへと徐々に志向性が変わりつつあるように感じる。

9.日本においても、アファーマティブアクションが逆差別を生み出す。
[予想]
 当時よりアメリカなどでは問題になっていたことであり、遠からず日本でも、と考えていた。その頃より、一部地方自治体の新規採用では顕著な傾向が見られ始めていた。
[実感]
 どこぞの私大医学部入試のような問題事例は依然として散見されるし、引き続き適正な対応は求められるところである。一方で、ある大規模組織は、女性割合を超えた女性幹部登用率を目標に掲げている。もはや当の女性の意思は置いてきぼりであり、男性の実績は軽視されがちある。ここでは「過去」の問題を持ち出すべきではなく、また、目標値ありきではなく、現在働く世代の意思が尊重されるべきなのではないか。

10.日本中の至る所でアルパカを見掛けるようになる。
[予想]
 あのふてぶてしい表情と、毛むくじゃらでありながら美しいフォルム。その生物は広く愛されるに相違なく、もはやアルパカ人気は日本を席巻することであろうと確証していた。
[実感]
 残念ながら、毛むくじゃらで可愛らしいあのアルパカはあまり見掛けない。一方で、「アルパカ」と称するチリワインが日本中のワイン売り場を制圧した。とりわけ金額面に着眼すると、これは極めてコストパフォーマンスに優れているものである。
 いつか、あの毛むくじゃら生物があちらこちらを闊歩する日々が到来しないものであろうか。

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 ここには記載していないが、私自身に係る予想を大きく外していることが悔やまれる。しかし、それはこの先10年後の未来予想へと置き換えるだけのことであろう。

 経済不況、自然災害と、受難の10年間であったが、これから先の10年間が明るいものとなることを祈念してここに記す。

ここまでご覧頂いただきまして誠にありがとうございます。 大事なお時間に少々の笑顔をお届けできれば幸いです。