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はぐれ狼

はぐれ狼 乾いた荒野で
美しい悪魔を待つ
冬になっても 君を信じたい
まどろみの果てに見た朝焼け
はぐれ狼 擬態は終わり
錆び付いた槍を磨いて
勝算は薄いけど 君を信じたい
鈍色の影を飛び越えていく

スピッツ「はぐれ狼」の歌詞です。


出会い、そして別れてもなお、忘れられない人は幾人もいますが、ここ最近になってまた思い出し、もう一度会いたいなと思う人がいます。
その彼が、お別れの直前に「この歌が好き」と教えてくれた歌です。

彼とは書きましたが、30歳くらい年下の男の子なのです。息子のような年頃です。
でも、わたし達は対等に仲良しでした。
今もご縁はあると信じる出会いだったのです。


出会い

その人は若き用務員さんでした。

教員のなかでは、わたしは年長者なので、様々な場面で若い後輩たちを支えます。相談に乗ったり、助けたりするのがわたしの役割です。ですから、同業の人達に愚痴を言ったり、弱音を吐いたりすることはなかなかできません。

それでも、時々は弱音を吐きたいし、愚痴を聞いてももらって心を軽くしたい。
そんな時に、前述の彼に出会ったのです。
若いのにわたしの心を和らげてくれた人です。森のくまさんのようにとても大柄な人でしたから、仮にO君とでもしておきましょうか。


O君との日々

O君は用務員ですから、朝の7時半からの勤務でした。わたしもちょうどその頃に出勤していたので、毎日挨拶がわりに話をする様になりました。

受け答えにユーモアがあって面白い子でした。ほとんどは、朝の調子や休日のことなど他愛もない会話でしたが、お互いに気が合うのか?それが毎日のルーティンになっていきました。

「Oちゃん、調子はどう?わたしはねー、朝なのにもう帰りたいんだよー。」
「奇遇ですね。実は僕も同じ気持ちです🤗」

「Oちゃん、休日は何してたの?」
「車を洗いましたよ。だから今日は歩いてきました。汚れるとやなんで。」
「なにそれ、変なの♪」

「Oちゃん、今日は雨だけど、車置いてきたの?」
「もちろんですよ。雨の日は歩きですよ。」
「もうー、なんでなのよ🤗」

こんな調子です。


スピッツ会結成

そんなこんなで時は過ぎ、年度末も見えてきた2月の半ば。北海道は長い休校に入りました。
その間の仕事といえば、プリントを作ったり、学年末のまとめをしたり…。
職員室に集まるのは良くないからと、子どものいない教室にこもることが多くなりました.

しーんとした教室で、黙々と仕事をするのが嫌だったので、スピッツのアルバムをかけっぱなしにして、お仕事をしていたら…!

Oちゃんがひょこっと顔を出して、
「それスピッツですよね。好きなんですか?」
と、興奮気味に言ったのです。
わたしは、全ての曲がわかるほど熱心なファンではありませんが、スピッツの曲でとても好きなものはたくさんあります。
そこからOちゃんとの、スピッツ談義が始まったのです。


Oちゃんセレクト

それからは、いろんな曲を教えてもらいました。「仕事がはかどるリスト」とか、「おうちでまったりする時のリスト」などなど、Oちゃんがセレクトして作ってくれました。

おうちリストは

優しくなりたいな
さらさら
聞かせてよ
ホタル
若葉

こんな感じです♪
どれも心にしっくりときて、とても落ち着きます。

もう年度も終わるという頃になって、わたし達はさらに仲良しになっていきました。


お別れ

Oちゃんが同じ職場で過ごす期間は、初めから1年だけという期限が決められていました。
約束の期間を終えて、本来の居場所に帰ることは、Oちゃんにとっても良いことだったのです。

ただわたしは、とても寂しいと思っていました。

そのあともいろんな話をしました。Oちゃん自身のこれまでのこともたくさん話してくれましたし、わたしの話もたくさん聞いてくれました。
いつも面白おかしくユーモアにくるんで、2人でたくさん笑い合いました。


はぐれ狼

そして、もう残り数日、という時になって、Oちゃんに聞いたのです。
「今1番心にあるスピッツの歌ってなあに?」って。

それが「はぐれ狼」でした。

歌詞を読んだ時に、お別れの覚悟は決まりました。帰って行くんだな。でも、心は繋いでいてもいいんだ。
そう思いました。

そして、Oちゃんは、はぐれ狼なんかじゃないよ。と強く思いました。


それから

2年が経ちましたが、Oちゃんとはお別れの時から一度も会うことはありません。

共に過ごしたのは、たった1年間だけでしたが、お互いにとってかけがえのない、価値ある出会いだったとわたしは信じています。

お別れの時に、
「Oちゃんに出会えて、人生が豊かになったよ。」
と伝えたら、
「そんな風に言ってもらえて、凄く嬉しいです。僕にとってもそうです。」
と言ってくれました。

出会いとは、本来そういうものなのでしょう。共にいられる時は永遠ではないけれど、ご縁を結ぶということは、心を永遠に繋ぐものだと思います。たまたま用務員に欠員があって、1年だけ来ることになった成り行きも、深いご縁が繋いだ出会いだったように思えるのです。



Oちゃん、元気かな?
わたしは、愚痴をそこそこ言いながら頑張っています。

Oちゃんを思い出した時は、スピッツのリストを聴いて心癒されています。元気で頑張ってね!いつかスピッツのライブ会場で会えるといいね♪

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