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新惑星着陸: Bostonの「Don't Look Back」がロック業界に残した足跡/ロックの産業化:コーポレートロックといわゆる産業ロックの相違とこれらが行き着くところ

■Boston ‎/ Don't Look Back
■収録曲:1.Don't Look Back(6:00) 2.The Journey(1:41) 3.It's Easy(4:26) 4.A Man I'll Never Be(6:40) 5.Feelin' Satisfied(4:14) 6.Party(4:05) 7.Used To Bad News(2:54) 8.Don't Be Afraid(3:42)
■パーソネル:Tom Scholz(g,key,b) Brad Delp(vo,g) Sib Hashian(dr) Jim Masdea(dr) Barry Goudreau(g) Fran Sheehan(b)
■カバーアート:Gary Norman
■リリース:1978年

なんだか、晴れた日の朝には、これを聴くと気分が上がります!

「振り返るな、新しい日が始まる・・・今日こそその日だ」という歌詞も元気が出ますね。ここまで真っ直ぐで気持ちいい音楽って、ちょっと、ほかに見当たらないと思いますがどうでしょう"^_^"

ボストンのセカンド・アルバムです。売上総数はアメリカだけで700万枚超えとのこと。詳細についてはUS-Wikipediaが詳しいのでそちらをご覧ください。アルバムは1978年の8月にリリースされ、タイトル曲は同年のビルボート・ホット100で4位になっています。当サイトの能天気に明るいアルバム・ランキング第1位です。

帯には「新惑星着陸」という副題が付けられていました。当時買ったLPには、ジャケットを見開いてさらに左側の水晶の部分をさらに遠くまで描きこんだポスターがついていました。

1点だけ、昔から不思議で、いまだに分からないことがあります。・・・ってのは、Used To Bad Newsの歌詞なのです。レコードの内袋にその歌詞が載っているのですが、最初の4行は歌われないんですよ。ひょっとして、フルに歌ったバージョンはボツになったとかなのでしょうかね。

さて、ボストンについて回っている「産業ロック」について、以下、縷々書きますね。

ロックの産業化:コーポレートロックといわゆる産業ロックの相違とこれらが行き着くところ

日本の音楽評論家、渋谷陽一氏が、1980年代にジャーニーやボストンを指して産業ロックという言葉を使い、当時無垢だったリスナーを通じてその言葉が普遍化してしまったようです。

実際には、ロックの産業化は、作られたアーチストによるコーポレートロックと、実力で表舞台に出たアーチストを企業がマーケティングして巨大化させたスタジアム・ロックとに2分されるのではないかと思っています。多かれ少なかれビジネスである以上、企業によるマーケッティング戦略はあるわけですから。後者を十把一絡げで産業ロックと呼ぶのは違うのではないかと思っているところです。

この2分も安直ではありますが、多角的な視点を提示する点で、単に、鸚鵡のように「産業ロック」と唱えているよりは生産的ではないかと・・・。

要は、「コーポレートロック」といわゆる「産業ロック」という用語は、それぞれ異なる起源と背景を持っていますから、これらの違いを理解するには、各ムーブメントがどのようにして発展したかを見ることが重要ではないかということです。

モンキーズとコーポレートロック

モンキーズは、1960年代にアメリカで人気を博したバンドで、テレビ番組「ザ・モンキーズ」での活動が知られています。このバンドは、テレビショーのために特別に組織され、メンバーもオーディションを通じて選ばれました。彼らの音楽は、スタジオミュージシャンとプロのソングライターが大部分を制作し、バンド自体はその演奏や歌を担当するという形で活動していました。このような形態は「コーポレートロック」として認識され、企業が直接音楽制作に関与し、バンドや音楽が商品として製造される様子を指し示します。このように、モンキーズ(The Monkees)は「作られたアーティスト」の典型例です。最近ではK-POPやBABYMETALはこの典型ですね。モンキーズの結成目的は、テレビ番組「ザ・モンキーズ」のためにビートルズの成功した映画『ハード・デイズ・ナイト』のアメリカ版として、楽しいポップ音楽とコメディ要素を組み合わせることでした。

  • オーディションと選出:メンバーは音楽的な才能だけでなく、テレビ向けの演技力やキャラクターを重視して選ばれました。

  • 音楽制作:初期の段階では、彼らの音楽はプロのソングライターとスタジオ・ミュージシャンによって作られ、彼ら自身は主に歌と演技に集中していました。しかし、後には自ら楽曲制作や演奏を行うようになり、音楽的な自立を達成しました。

  • 商業的成功:モンキーズは非常に成功し、数多くのヒット曲を生み出しました。代表曲には「I'm a Believer」や「Last Train to Clarksville」などがあります。

モンキーズはその後、音楽とメディア業界における「制作されたバンド」のモデルとなり、彼らの成功は後の多くのアーティストやバンドに影響を与えました。彼らは商業的には成功したものの、批評家からはその真正性について批判されることもありましたが、時間が経つにつれてその音楽的遺産は再評価されています。

最初の4行は?

産業ロックとその特徴

一方で、「産業ロック」とは、1970年代から1980年代にかけてのロック音楽の商業化を指す言葉として使われています。特にジャーニーやボストンなど、大規模なプロダクションとマーケティング戦略を用い、広範な聴衆に訴求する音楽を制作したアーティストがこのカテゴリに含まれます。産業ロックは、音楽のスタイルとしての特徴だけでなく、その製作・販売方法における企業の役割を強調する点でコーポレートロックと重なりますが、より広い市場をターゲットにしている点が異なります。以下は、その代表的なアーティストたちです。

  1. ジャーニー (Journey) - メロディアスな曲作りと幅広いアピールで知られ、1980年代には巨大な商業的成功を収めました。

  2. ボストン (Boston) - 高度に編集されたスタジオ制作と技術的に洗練されたサウンドで、1970年代後半のロックシーンにおいて革新をもたらしました。

  3. フォリナー (Foreigner) - 力強いボーカルとキャッチーなギターリフが特徴で、アリーナロックのムーブメントを代表するバンドの一つです。

  4. REOスピードワゴン (REO Speedwagon) - ハートランド・ロックを代表し、バラードとアップテンポなロック曲で1980年代にトップチャートを賑わせました。

  5. スティクス(Styx) - シアトリカルなスタイルとプログレッシブ・ロックの要素を取り入れ、商業的に成功したアルバムを数多くリリースしました。

「産業ロック」をめぐる議論は、商業的成功と芸術的真実性の間の緊張を示しており、1980年代だけでなく今日においても関連性があります。過去を振り返ることで、商業的力がどのように芸術的アウトプットを形成し、受け取り方に影響を与えるかの理解を深めることができます。これらのバンドは音楽制作と商業的成功において特定のアプローチを採用しており、音楽評論家の渋谷陽一氏もこの用語を使用していたんだろうと思います。この用語は、大衆に訴えかける音楽制作と商業的計算を指して用いられます。

  1. 商業的成功と批判: ジャーニーやボストンのようなバンドは、広範な聴衆に響く音楽を創造し、大成功を収めました。この成功は最新のスタジオ技術やマーケティング戦略を駆使したものでしたが、芸術的な真実性を犠牲にして商業的利益を追求しているとの批判も受けています。でも、批評家が言うように、真実性を犠牲にしていたかについては、違うんじゃないですかね。多作できる才能を持ったジャーニーのようなバンドと宅録には長けていたけど、実際にはそこまで曲を作る能力はなかったトム・シュルツという構図に2分されるように、実際に成功するか否か、多作を成し遂げて長く続けられるかは、アーチストの能力次第なのではないかと思います。

  2. 文化的文脈と変遷: 「産業ロック」という用語は、音楽産業における文化的シフトを反映しており、企業のバックアップを受けたバンドの台頭は、個人の表現や芸術的自由からの逸脱と見なされていました。この点も上記の通り偏見ではないかと。

  3. 進化と遺産: 批判にもかかわらず、これらのバンドの音楽は耐久性があり、その技術的な完成度とメロディックな強さで今も高く評価されています。「産業ロック」という用語も時と共に進化し、商業的に作られたものの質の高さと魅力を認める中立的な意味合いで使用されることもあります。結局、この点に収斂されるのかなぁ。

まとめ

コーポレートロックと産業ロックの違いは、その起源と目的にあります。コーポレートロックは、商品としての音楽を制作するために企業が直接アーティストや音楽をコントロールすることに重点を置きます。対照的に、産業ロックは市場のニーズに応じて音楽を制作し、商業的成功を最大化するための手法として企業が関与する場合が多いということです。

モンキーズの例では、彼らがコーポレートロックの典型であることが明確ですが、ジャーニーやボストンなどの産業ロックの代表格とされるアーティストたちは、その商業的アプローチと広範な受容によって異なるカテゴリーに位置付けられます。各ムーブメントの影響と特性を理解することで、ロック音楽の歴史的背景と進化をより深く把握することができます。

こうしてみると、バンドを売るために企業がマーケティングを綿密に行うのは当然のことなので、それがどの程度になれば「産業ロック」という若干シニカルな冠がつくのかを考えてみると、きっとスタジアム・ロック級になるってことなのでしょうね。(Bostonがスタジアムロックだったのかは知りませんが、ライヴ演奏は上手くなかったとも聴いていますし・・・。)
こう考えると、スタジアムでやれてる人たちって、みんな「産業ロック」かも。キッスもガンズもメタリカもクイーンもスタジアム級ですし、POPではマイケルジャクソンもマドンナもスタジアム級ですよね。

そういう意味では、The Word of Oz一推しのカンサスも70年代後半にはスタジアムでやってましたから産業ロックなのですかね。

でも、みなさん気づいていないかもしれないのですが、カンサスの歌詞をちゃんと見て貰えば理解できるのですが、彼らがやってきた音楽は十把一絡げにされている他のバンドと違ってルーツに密着しています。また扱っているテーマも重いもので、かなり深いんですよ。また、契約しているレコード会社からどんなにPOPな曲を書けと言われてもアルバムには必ずインストとアレンジを詰め切った"分かるファン層"にアピールする曲を必ず入れてくれています。

十把一絡げと言いましたが、他のバンドも、例えばサンタナのバンドメンバーが独立して徐々にその影響が薄れてポップロック志向に収斂したJourney、デビューアルバムの冒頭に16分に及ぶ大展開するプログレッシヴ・ロックンロールをやってのけたStyx、英米のプログレ、ハードロックなどの一線のミュージシャンが集結して、コンパクトでシンプルながら緻密なロックを聴かせてくれたフォリナーなど、それぞれ特徴があり、決して、最初からいわゆる産業路線であったとは言えないのではないかと思います。

・・・あ、気がつくと、なんだか脱線してしまってますね。
ようは、あまり、マスメディアに流されないで、ちゃんんと自分の目で見て頭で考えて、正しく判断する事が大事って事です。
・・・なんだか、強引にまとめてしまいましたが。

今日は、BostonのDon't Look Back!振り返るな、新しい日が始まるという、すごく肯定的なお話でした。

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