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宅建士、台湾移住1週間で家を借りる。

台北に移住し1週間になりました。無事引っ越しもひと段落し、あとは入社日を待つのみです。今回の家探しから引っ越しまでをひととおりまとめました。
なおこれから書く内容は2023年12月時点の個人的な体験に基づくもので、全ての正確性を保証するものではないことをご了承ください。


わたしの家探し

まず今回の家探しの背景を軽く。私は日本人のほぼいない企業の現地採用で台湾に来たので、会社のサポートも、一緒に内見に来てもらったり、まして保証人になってくれるような親しい友人は全くいません。そのため今回の家探しは完全に自力(これって台湾の常識なの?みたいな相談をできる台湾人の友達は日本に数人いました)
幸い中国語は日常で困らない程度にはできるので、今回は思い切ってローカルの台湾人と同じ方法で家探しをしました。

ローカルと同じ方法で家探ししてみようと思った理由は2つあって、今回は中国留学中の学生寮を含めて6回目の引っ越しです。自分が家に求めるものも引っ越しの段取りもよくわかっています。また日本の不動産会社で毎月1−2件物件を借りる仕事をしていたから。人生総じて賃貸借契約は普通の人よりこなしてきた自信があります(宅建士の資格も持ってます)。そうはいっても、台湾の法律も商習慣もわからないので、資格も経験も大した役にはたたないのかもしれませんが、揉めがちポイントや貸主の気にするポイントなど比較的勘所はある分野なので、語学が完璧でなくてもなんとかなるだろうと楽観的に考えました。
2つめの理由は、これから中国語公用語の企業で仕事をするので、少しでも中国語でサバイバルする自信と経験をつけたかったから。家探しは自信あるので、サバイバルの一歩目としてふさわしいチャレンジだったかなと思います。

結局大家さんと直接契約の部屋に決まったので、結果的に仲介も挟んでいません。これから書くのはその過程ですが、駐在員は会社、留学生は学校、また中国語に不安がある場合日本語対応の仲介を頼ることを強くお勧めします。現地採用でも会社が助けてくれる場合も多いのかもしれません。私は担当者のレスポンスがすこぶる悪かったので最終手段としてあまり当てにしませんでしたが。
家は生活のすべての基盤で、それを失うストレスは想像以上のものがあります。大家さんからしても言葉があまり通じない外国人に自分の資産を貸すことは大きな不安要素になり、うまく契約まで繋がらないかもしれません。また私たちは外国人という弱い立場であり、いざトラブルに見舞われた時、仮に大家さんが法律違反をしていたとしても、生活を守るために頼れる先は多くありません。

最大の難関「15日ルール」

現地採用として台湾に渡航し最初に家探しする場合の最大の難関は居留ビザで入国後15日以内に居留証申請をしなければならない「15日ルール」です。この居留証申請に住所を証明するもの(賃貸借契約書など)の提出が必要です。つまり入国後15日以内に少なくとも賃貸借契約の締結を完了する必要があります
ただし台湾の家探しはかなりハイスピードで進んでいくので、強いこだわりがあるとか、ものすごく悩んじゃう、初日からフルタイム勤務でそもそも時間が取れないなどがなければ、現実的に問題ない日数のように感じます。渡航最初の5日間は家探しに全振りしましょう。(住所が決まって居留証が手に入らないとあらゆる行政手続きが進まないので、必然的に家探しくらいしかやることがないのですが)

私の家探しのスケジュールは以下の通りです。
12/18(月)候補物件の洗い出し 
12/19(火)候補物件の内見予約
12/21(木)台湾渡航
12/22(金)内見開始
12/23(土)契約物件決定
12/26(火)公証所にて契約締結・引き渡し
私の場合貸主要望で公証所で契約締結をしたので少し時間があきましたが、このケースは稀で通常契約意思を示したら当日か翌日には契約締結できるようです。日本と違って審査に1週間とかはほとんどありません。公証所については後述します。

ちなみに問い合わせた候補物件は10件の最終的な内訳は下記の通りです。
内見2件(うち1件契約)、先に借り手が決まった2件、契約物件決めたので私から内見キャンセル1件、仲介業者の返事が遅く内見設定間に合わなかった5件(うち3件は同一業者、いずれも優先度の低い物件だったので、すでに内見決まっている物件が条件合わなかったら返事催促しようと思っていました)
意外なことに日本人(外国人)という理由で断られたケースは1件もありませんでした。毎月きちんと家賃を払い、綺麗に家を使い退去していった在台邦人の先人たちの恩恵を受けた気持ちになりました。こういった恩は繋いでいきたいものですね。

候補物件の洗い出し・内見予約

候補物件の洗い出しは591をつかいました。台湾で最も大きな不動産のプラットフォームです。

日本の場合、すべての賃貸物件はひとつのシステムに集約されていて、基本的にどの仲介業者でも検索・紹介できるよう法律で決まっています(もちろん例外はあります)。そのためどの仲介業者を使うかに大きな違いはありません。
台湾では貸主直契約も多いためかおそらくこういった制度はないようです。(確証はありませんので悪しからず・・・)そのため気に入った物件があったら1件ずつ問い合わせする必要ありちょっと手間でした。

591の使い方、591以外の家探し方法はこちらのnoteに詳しくまとまっていて参考にさせていただきました。

候補物件のリストアップで私が強調したいのは、とにかく優先順位を明確に決める!です。15日ルールのせいでとにかく悩んでいる時間がありません。また台湾では物件が決まるスピードも早いので、悩んでいる間に他の人に決まってしまった・・・なんてこともざらとのこと。そもそもまだ台湾で生活したことのない段階で最善の選択ができるのか?悩むことに意味はあるのか?とも考えました。ここは縁とタイミング。希望度中→高→低の順番に2−3日でぎゅっと内見を詰め込んでしまいましょう。優先度中を最初にしたのは、標準的な部屋の雰囲気を掴むためと内見のコミュニケーションの練習のためです(笑)
ちなみに台湾の不動産屋さんは土日休みが多いのか土日の内見予約はほとんどできませんでした。

こんな感じで自分的に譲れない条件と共に物件ごとにリスト化して優先度をつけていました

 内見

ワンルームだと内見は10分程度で終了します。実際に内見で確認したいのは下記の通り

①部屋について
・写真と齟齬がないか
・水回りの劣化度合い、臭いがないか
・家具の劣化度合い
・ゴミ庫の荒れ具合(住民の質がここでわかる)
・騒音の程度

②契約について
・家賃とそれ以外の費用の確認(電気、水、ネット、ケーブルテレビ、管理費、ゴミ処理費)
※電気代はメーター1度あたりいくらを別途請求というのが主流。通常6.03元、夏は7.69元を超えると違法です。
・毎月の家賃などの支払い方法
・契約スケジュールと最短入居日
・敷金(家賃2ヶ月が相場、2ヶ月超えると違法です)
・仲介手数料(家賃半月分が相場)
・契約時に支払う費用(大体敷金+初月の家賃+仲介手数料)
・万一契約期間内に退去する場合の解約金や通知期間
・大家さんはどんな人か

③周辺環境について
・最寄りのコンビニまでの距離
・通勤に使う最寄りの駅やバス停までのルート
・朝ごはんやさん、レストラン、ジム、スーパーなど日常的に使うお店の距離

定金と訂金:頭金のはなし

人気物件だと頭金の支払いを求められることがあります。私も1件ありました。相場は1ヶ月。日本では賃貸で頭金は聞いたことがなかったので詐欺かと思いましたが、しっかり法律で認められているようです。紛らわしいのはどちらも発音がdingjinと同じなこと・・・「定金」「訂金」どちらかしっかり確認しましょう。
定金:支払った時点で契約決定の強い効力をもった頭金です。支払い後気が変わって違う物件を借りたいとなった場合定金は返ってきません。逆に貸主都合で契約が白紙になった場合2倍の金額が支払われます。契約成立の場合、半月分は仲介業者の手数料に、残り半月は敷金に充当されるそうです。
訂金:定金ほどの強い効力はありまえせん。撤回した場合返金される場合もあるようですが、私はこちらを求められることはなかったので詳しくは分かりません。
いずれにしても、金額と、取り消し・返金の可否、契約成立した場合の扱い(敷金に充当されるのかなど)は確認しましょう。支払った場合レシートの受け取りもお忘れなく。

保証人問題

日本では必ず求められる保証人ですが、台湾では物件により異なり、保証人なしで借りられる物件もかなり多い模様です。ただし保証人は台湾に戸籍のある人である必要があり、勤務先の「企業」は保証人にはなれず勤務先の誰か個人にお願いすることになり現実的ではありません。さらに困ったことに家賃保証会社が台湾には存在しません。仲介業者や友人に聞きましたが、聞いたことないそうです。そのため台湾に配偶者やかなり関係性の近い友人や恋人がいない限り、保証人が必要な物件を借りるハードルはスカイツリー並みに高くなります。

どうしても借りたい物件があった場合に備えて2つの方法を考えていました。
ひとつは保証金の支払い。敷金は2ヶ月以上徴収すると貸主が違法になってしまうので保証金とか家賃の前払いとか、名目は考えた方が良いかもしれません。要は家賃の滞納や部屋の汚破損が懸念なので、先に多めに払って万一何かあればそのお金を充当してもらおうという作戦です。
ふたつめは家賃保証会社をなんとか探す。日本人向け仲介業者に保証会社の紹介サービスを提供しているところがあったので、そこに問い合わせてみる方法もかんがえていました。

幸い私は第一希望の物件が保証人不要だったので上記いずれも試していませんが「保証人」の3文字が出た瞬間全て詰んでしまう感覚は結構しんどいものがあります。打開方法もどんなにググっても「友達を頼る」以外出てこなかったので、今まさに困っている人の検索にこのページが引っかかるといいなと思っています。

契約

敷金等を支払い、契約書にサインし、鍵を引き渡して現状確認をして終了です。あと一歩!私の場合は貸主直契約で公証所で契約したのでレアケースかもしれません。
契約書で確認すべき主な点は下記のとおり
・住所と内見した建物・部屋に齟齬がないか
・毎月の家賃や管理費などの金額が内見時の話と齟齬がないか
・振込先と振り込みスケジュール
・途中解約する場合の通知期間と違約金(解約不可のケースもあります)
・借主から解約できる条件
・貸主から解約できる条件(いつでも解約できるなど不利な条件がないか)
・敷金の返金について(退去時全額返金がマスト)
・禁止行為に抵触するものがないか(料理、ペット、喫煙、居住人数制限、登記など)
・大家さんとの連絡方法
・備品リストの抜け漏れがないか
・備品の修繕区分(建物や備え付けられた家具家電は故意破損でない限り基本貸主負担です。電球などの消耗品は借主負担の場合も)
仮に内見したその場で入居を決めたとしても、その場ですぐ契約書サインとはならないはずなので(物件によりますが)、必ず事前に契約書データを送ってもらい目を通すようにしましょう。ただでさえ外国語での契約書なので、上記の不利な条項がないかじっくり確認します。

公証所での契約

私は貸主要望で公証所で契約しました。公証所とは公証人という法律の有資格者が契約書の内容がきちんと法律に則っていること、その内容を双方が理解した上で契約したことを法的に証明してくれる場所です。日本の公正証書に相当するものかもしれません。
公証所に出向く面倒くささはありましたが、私も法に触れる使い方をするつもりもないですし、敷金返還や違法な追い出しをされるリスクがほとんどなくなるので、個人的には大歓迎でした。貸主側も借主が居座った場合の強制退去の手続きを簡略化できるなどメリットがある制度です。

通常の契約と(おそらく)違うところは、公証所に出向くこと、公証人による契約書の双方読み合わせ(オール中国語&早口で事前に契約書読んでなかったら聞き取れなったと思う)、公証費用の支払い程度です。費用は3,000元を貸主と折半して1,500元でした。これで双方安心が買えるなら安い保険料ですね。

こんな感じで公証書として製本された契約書をもらいます。中国語でここまでやり終えた達成感でいっぱいです。

引き渡し

日本では不動産屋さんで鍵を渡されて終了ですが、備え付け家具のある台湾ではかならず貸主、または仲介の立ち会いで引き渡しを行います。契約書に添付されている備品リストを見ながら破損の有無、劣化状態を確認します。日本と同じように入居状態を写真に残しておくと退去時揉めるリスクも減らせると思います。
また、忘れてはいけないのが電気メーターのチェック。定額の場合は別ですが、1度幾ら制の場合入居時点のメーター度数を双方チェックします。翌月以降この数字との差額を大家さんがチェックして電気代を請求します。これも写真を残しておきましょう。

これで晴れて家探しは終了です!荷物を運び込んで日用品の買い出しをして家を整えていきましょう。ここが台湾での帰る場所です。おつかれさまでした!

おわりに:台湾での家探し

台湾での家探しはとにかくスピード勝負で縁とタイミングが全てです。誰の体験記を読んでも、業者の記事を読んでも、同じことが書いてあり、実際10件の私の候補物件のうち2件は問い合わせた3日以内に他の人に決定してしまいました。
また、住所がないというのは予想以上にストレスです。居留証申請をはじめとするあらゆる行政手続きも、ネット通販もできません。渡航直後に15日ルールがある中で完璧な物件に出会うことはほぼ不可能という前提で、譲れるところ・妥協できないところを明確にして内見に進むことをおすすめします。もし住んでみて気に入らなかったら引っ越せば良いんです。台湾は礼金もないし仲介手数料も半月と安い。さらに家具つきが多いので、荷物全部段ボールに詰めてタクシーに載せれば簡単に引っ越せます。タクシーも安いしね、渡航したばかりなら荷物もそこまで多くないでしょ?

異国で家という生活の基盤たるものを、それも短時間で見つけないといけないというのは簡単ではないと思います。でもこれが台湾生活の第一歩。悪質な詐欺や業者には気をつけながら、楽しんでお家探ししてくださいね。

おまけ:台灣找房生詞

家探しで使った単語たちです
・看房=内見
・中介=仲介業者
・遷入/入住=入居
・押金=敷金
・租金=家賃
・定金=頭金(帰ってこない)
・訂金=頭金(帰ってくる?)
・手續費=仲介手数料
・獨立套房=個室
・乾濕分離=シャワートイレ別(衝立があるだけで同じ空間)
・坪=3.3㎡
・出租人=賃貸人(書)
・承租人=賃借人(書)
・房東=賃貸人(口)
・房客=賃借人(口)
・簽約=契約
・合約=契約書
・正本=原本
・影印本=(スキャンした)コピー
・解約=解約
・違約金=違約金(途中解約とか) 
・交屋=引き渡し
・轉帳=振り込み
・電錶=電気メーター
・第四台=ケーブルテレビ
・免追垃圾車=建物にゴミ捨て場がありゴミ収集車に持って行く必要がない

おわり

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