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にわかに信じがたい話

にわかに信じがたいことに行き当たる、そういったことが稀にあります。

先日、私たち持続未来グループ同様に清掃サービスを提供している会社の社長さんからすごいことを聞きました。
価格交渉に関することです。

■ コスト上昇に苦しむ清掃サービス事業者


今、清掃サービスはあらゆるコストの上昇により収益性が低下しています。
洗剤などの物品費はもちろんですが、コストの中でも抜群に比率の高い人件費上昇はとてつもないものがあります。
(私個人としては人件費を単にコストとして見ることには抵抗がありますが、ここでは収益性の面に絞って記しています)

こうしたことにより利益が減るのみならず、案件によっては赤字となってしまうことも少なくないのです。

ということで、当然のことですがお客様に価格交渉のお願いにうかがいます。

お客様の反応は様々ではありますが、昨今では状況を鑑みて、値上げを受け入れてくださることも増えて主流になってきています。
少なくとも、価格交渉すら拒否されることはほとんどありません。
次のような報道も頻繁に目にしますしね。

■ 価格交渉を申し入れたA社長


こうした状況なので、前述の同業者の社長(ここではA社長とします)もある案件の価格交渉に行ったそうです。

その案件とは、ある地方自治体から受注している清掃サービス。
こうした案件の場合には、自治体が行う入札によって受注者を決めます。A社長の会社も入札で落札したそうです。

ただ受注期間は3年間と長いものでした。この3年のうちにコストが上昇して収益性を圧迫したために、A社長は交渉を申し入れたとのことです。

自治体の担当課長へ面会し、価格交渉を申し入れる。ごく普通の手順です。何もおかしなところはありません。

ところが、この後、考えもしなかったことが起こります。

■ 首長から直々のメール


申し入れて数日後、その自治体の首長、つまりトップからA社長あてに直々のメールが届いたそうです。

A社長の語る内容は次の通り。
・貴社が履行できると言って応札しておきながら値上げを要請してくるとは言語道断である。
・できないのなら契約解除すれば良い。
・貴社の他に仕事をやりたい業者はいくらでも居るだろう。
・(重ねて)値上げを要請してくるとは言語道断である。

聞いたときちょっと耳を疑いました。
こんなド直球のコンプライアンス抵触案件に遭遇することは稀だからです。
しかも首長直々って…

にわかに信じがたいと言う私に、A社長は実際のメールをPCで見せてくれました。

実際の文面で使われている言葉遣いは、もっと口汚い、乱暴と行って差し支えないものでした。

■ A社長の苦笑い


「ひどいですね、これ」
そうとしか言えない私に、A社長は苦笑いされました。

聞けば、A社長とその首長は政治的に対立しているわけでもなく、特に面識があるわけでもないそうです。

公正取引委員会へ駆け込んでも良いような案件なのですが、A社長にそうする気は無いそうです。

「こんな相手にケンカするだけ時間の無駄ですよ。別の価格交渉に時間を使ったほうがよっぽど良いです」
相変わらず苦笑いしてA社長はそう仰いました。

そりゃそうですね。こんなの相手に貴重な時間をかけるなんてもったいないですから。


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