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スタートアップと跡継ぎ~理想の鳥と手中の鳥~

今日、2人の経営者のお話を聴く機会がありました。
お二人の共通点は、いわゆる跡継ぎであること、かなりの高学歴で華やかな職歴なのに世間からは「イケてない」と思われる家業を継いだことです。

私は華やかな職歴ではなく、就職氷河期ゆえにどうせロクな就職はできないだろうからと新卒で歩合制のセールスをやっていたような人間なので、お二人とは違うのですが、跡を継いだことは共通しています。

このお二人のお話を聴き、会話して感じたことを記しておきます。


■ スタートアップと跡継ぎ


経営者には、スタートアップと跡継ぎがあります。
スタートアップは爆発的成長を夢見て新規創業する者で、跡継ぎは親などから家業を継ぐ者です。

スタートアップはかっこいいですね。ただし成功すれば、ですが。
そして成功する者はほんのひと摘みにすぎず、ほとんどは失敗に終わります。でも成功すればリターンは莫大です。

一方、跡継ぎはほとんどの場合地味です。場合によっては不憫とすら見られます。
そりゃそういうイメージになりますよね。大体の場合は、華やかでもなく、人気もなく、世間の多くからはよくわからない業界の会社を継ぐことになるのですから。

とはいえ、この2者はどちらが良いというものではありません。そういう人たちが居るというだけのことです。

■ スタートアップは無いものねだりをする


多くのスタートアップは、今ここにないものを創り出そうとします。

それは、今自分の手の中にいない鳥を追いかけるかのようです。
追いかけるのは理想の鳥です。赤い鳥、青い鳥、黄色い鳥、今ここに居ないけれど、自分の頭の中で想像する理想の鳥を捕まえようとするのです。

言い方を変えると、無いものねだりをするわけです。
そして、その滅多に見つからない理想の鳥を捕まえた者が成功者となります。

■ 跡継ぎは未来へ向けてチューニングをする


多くの跡継ぎは、今すでにあるものを基に事業展開を考えます。今の事業を未来へ向けてチューニングすると言ってもいいでしょう。

それは、すでに手中にしている鳥を育てるかのようです。
手中にしている鳥は、決して自分の理想通りの色、姿かたちではないかもしれません。本音では「もっときれいな鳥の方がいいのに」と思っているかもしれません。けれど、すでに手中にしている鳥をどう育てるかを考えるのです。

■ 「配られたカードで勝負するしかないのさ」


跡継ぎの場合、どうなれば成功者になるのでしょう。

手中の鳥は思い通りに育つとは限りません。想像もしなかった形に、色に、大きさになっていきます。その度に対処していくのです。
結果として、思ったように育っても成功ですし、思いもしなかったように育っても成功です。

どんな形でもいい、時代に合った形に育てることができれば成功です。

最近では、スタートアップではなく、既存の中小企業をM&Aして擬似的な後継ぎとなる人も居ます。
お話を聴くと、「曲がりなりにも存続できている企業なのだから、ゼロから創り上げるよりもリスクは低い。非効率だったり、時代に合わない部分を変えれば良い」ということだそうです。なるほど一理あります。

居るのか居ないのかわからない理想の鳥を追いかけるよりも、理想ではないかもしれない手中の鳥を育てたほうが成功の確率は高くなると思えます。

これは運命を受け入れるということです。受け入れた上で対処方法を考える。
言い方を変えれば、スヌーピーが言う「配られたカードで勝負するしかないのさ(You play with the cards you're dealt)」ということですね。

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