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Q2 「再エネ」太陽光発電所建設のために木を切っては気候変動対策にならないのではないか?

今回のシリーズではパシフィコ・エナジー株式会社の社長の松尾大樹が太陽光発電所に関する様々な疑問に回答します。

今回は皆様に当社が取り組む再生可能エネルギー発電事業の一端をテーマに分けてご紹介しています。第二回は太陽光発電所建設で木を切っては気候変動対策にならないのではないかというテーマについてです。

太陽光発電所建設のために温室効果ガスを吸収してくれている森林を伐採しては本末転倒だなどの声をよくお聞きします。実際調べてみると森林よりも太陽光発電所を建てた方が格段に大きな温室効果ガス削減効果があるようです
 
事例として当社がどれだけの広さの工事をしたかという例をお示ししますと、パシフィコ・エナジーが管理する稼働済み太陽光発電所は2021年末時点で17カ所、合計1,071メガワットになり、2021年の年間合計発電量は1,161,870,492kWhに達し、これによる温室効果ガス排出削減量は527,028トン-CO2となりました。 これら太陽光発電所の建設のためにおよそ1000ヘクタールの工事面積を必要としました。ほとんどが人の手が入ったゴルフ場跡地ですが、その内2-3割くらいは自然林を含む森林で木の伐採を行っています。
 ここで森林のCO2吸収効果を林野庁のホームページから調べてみると、生長が早い若い杉の木での説明がありますが、1ヘクタール当たり1000本ほど生える若い杉の木が年間8.8トンの二酸化炭素を吸収するのだそうです。
出展:林野庁ホームページ

太陽光発電所との簡単な比較のために、当社が工事を行った1000ヘクタール全てで木の伐採を行ったと仮定しましょう(実際の伐採面積は2-3割程度です)。そうすると太陽光発電所は1ヘクタール当たり年間527トン(年間排出削減量527,028トン-CO2÷1000ヘクタール)と、杉林の年間8.8トンよりも約60倍の二酸化炭素排出削減効果があることになります。

太陽光発電所はスギ植林の60倍の二酸化炭素排出削減効果

また木は若く伸び盛りの時ほど二酸化炭素を吸収します。逆に老齢化して生長が止まると光合成による炭素吸収量と呼吸による二酸化炭素排出量が変わらなくなってしまう性質があるので注意が必要です。

杉の木の樹齢と炭素吸収量と排出量(林野庁ウェブサイト

それでは次に建設時に切った木を焼却処分した際に出る二酸化炭素はどうでしょう。伐採木は使える部分はチップ化して地表に散布するなどしますが、根っこや枝葉など使いづらい部分は可燃物として産廃処理が義務付けられています。木材などを燃やすと二酸化炭素が発生しますが、国連の気候変動枠組条約機構(UNFCCC)や京都議定書上では植物由来の二酸化炭素は循環性が強いことからCO2排出量にカウントしないこととなっています循環性とは、元々大気中にあった二酸化炭素を木が吸収・貯留していたものが再度大気に排出されるということを指しており、地中から掘り出した化石燃料を燃やすことによって新たに大気中に排出される二酸化炭素と区別して扱われています。木材チップなどを燃やして石炭やガスの代わりに発電するバイオマス発電が再生可能エネルギーと呼ばれる理由もここからきています。

ここで注意書きとして記しておきますが、太陽光発電所による二酸化炭素排出削減量は、石炭・石油・ガスなどの化石燃料由来の火力発電による電気をどれだけ代替したかで計算されます。代替することを火力の焚き減らし効果と言ったりします。今後太陽光発電や風力などの再生可能エネルギーや原子力発電など二酸化炭素を出さない電源が多くなった場合に、火力発電による電気が減り続けると、この焚き減らし効果はどんどん薄れていきます。従って一つの太陽光発電所による排出削減量というのは毎年同じということではなく、毎年電源全体の火力発電からの排出量を基に計算されなければならないことは注意してください。

ここまでで温暖化対策としては太陽光発電所はかなり有効だということは説明できたのではないでしょうか。しかし当社はそのために自然環境や生態系が消滅していいとは考えていません。自然の生態系を構成している自然林をできるだけ伐採しなくていいような計画を心がけ、既に造成工事がなされて人工林に植え替えられているゴルフ場などを利用。事前に自然環境調査を行ってどうしても工事が避けられない箇所の希少な樹木を移植。発電所完成後は農薬や除草剤の使用を禁止して水質の向上に努め、造成面は緑化して草地環境を整えて自然の回復を促進。そして植林活動を行って全体としての森林面積の維持に繋がるような活動を行っています。
 
当社の自然環境に関する取り組みは次回詳しく発信したいと思います。植林活動についてはパシフィコ・エナジー 兵庫県地球温暖化防止対策の植林事業に貢献」をご覧下さい。


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