見出し画像

あのひと。

土曜日はNHKの
「あの人に会いたい」
感動しながら観て泣いて

「日経ウーマン」という雑誌
叔母さんが母屋に捨てに来るので
それを拾って読む先月号

庭でゴルフの練習するフリしながら
女性陣の会話から逃避する叔父さんが
置いてく「日経新聞」を読む

どれもこれも
過ぎた日付だが
ボクはとても好きで

ホットミルクと一緒に
おばあちゃんの
手作りクッキー頬張って
真剣に読む

縁側で爪切りながら読んだり
知らない用語
わからない漢字を調べる

叔母がウクレレの練習しながら
寄ってきて
手ぶりで「どけどけ」って合図する

中庭を通り
離れに逃げ込むと
また別の叔母がヨガをしている

あぁダメか

庭掃除が終わった
おばあちゃんが
大きな声で呼ぶ

パコちゃん!おいで!
かぼちゃん帰ってきたよぉ

おばあちゃんの愛猫のことだ
おばあちゃんのお部屋は
座敷なので炬燵もある

いいけど、電気入ってないよ

毎年
見せかけの炬燵
電気が入ってない

その代わり
中にアルマイトの
湯たんぽが置いてある

愛猫が丸くなって
寄り添ってる

ケチくさいけど
ボクを育ててる
叔父さん叔母さんの家も
親族の家も
あまり電気を使わない

天井電気もつけない部屋もある
なのでブレーカーが落としてある

生涯独身!掲げる
叔母が唯一
分譲マンション購入して
1人暮らししているが
あちこち電気使ってる

それも魅力的だが
情緒的に感じるのは
電気使用量の少ない
おじいちゃんおばあちゃん達の
ほんわかした暮らし

秋から冬
春先まで
暖炉でチーズ溶かしたり

石油ストーブの上に
やかん置いて
お湯沸かしたり

そういう時間が
心地いい

便利なことを避けてる
いや、ただのケチかな

例えば
おじいちゃんとおばあちゃんは
自分たちの屋敷のトイレを
洋式にしない

スイセンではあるが
和式トイレである

親族で一番のリッチマンなのに
どうしてかな?

ある日
おじいちゃんに聞いた

すると
おばあちゃんと見つめ合いながら
答える

「便利だと老化するから」

洋式だと楽だから
屈伸運動を自然にできるように
和式のままでいい

膝が悪くなったら
変えればいい

そういうことか

そういう
ゆる~い
やわかい考えが
ふんわか優しい空間をつくる

居間から流れるメロディ

「パコちゃん始まったよ」

「あのひと?」

「そうだよ
あの人に会いたい」

足元のかぼちゃんを
引き釣りだし抱きかかえ
渡り廊下を素足で駆ける

ひんやり冷たい
深秋の朝






読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました