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190714 故郷

人生初の有給休暇の日、京都にいた。
出張が決まった30分後には有給申請の準備を嬉々として始めていた。後悔はない。

生憎の雨だが、鴨川は変わらず流れている。
ふたばの豆餅はやっぱり美味しい。
出町座の本屋さん、またウィンドーショッピングしちゃった。ごめんなさい。

耳を澄ます。空気をいっぱいに吸い込む。
ああ、帰ってきたなあ、と、ぼんやり思う。

なんだかほっとした。安心感からすぐふやふやになった心に自分で驚きもした。東京では未だ臨戦態勢を崩せずにいる。

お寺さん。ブライトン。ワンルーム。深夜のからふね屋。生協のパフェ。下鴨神社の参道。吉田山のベンチ。三条大橋と雑踏。

たくさんの思い出とたくさんの人達との歴史がこの街には詰まっている。

だから京都を思うとき、わたしは、所謂巷の京都論みたいに特別なものじゃなくて、青春を通過した人ならきっと誰もが想起し得るであろう人生の綺麗な(あるいは時にどろどろした)単なる舞台背景のひとつとして、この街を捉えていた。

けれど、今回は違った。経験や思い出を飛び越え、ひとつの客観的な対象物として、風景が、風が、匂いが、五感にすん、と入ってきた。

それは東京では感じない心地よさだった。

地域を論じるためには、いったん外に出たり、外の人の視点を入れたりして、俯瞰した視座を備えることがおそらく不可欠なのだろう。比較対象となる場や地域を持ち、見聞を広め、初めて立ち現れる意識だと思う。

ここで初めてわたしも京都から本当に離れてしまったのだと、ハッとする。少し寂しくなる。

でもさ。ちょっと離れたからこそ好きだとか嫌いだとか言えるのかもしれない。悲しい記憶はあやふやに。楽しい記憶は鮮やかに。

今、目の前に見える景色がすべてだ。

京都を故郷と呼べる強さが今を支えている。
感謝している。

大好きな場所で安心できる人達と再会を祝し、背中を押され、その日はいっぱいに満たされた。真正面から認め合える関係も尊敬し合える関係も多くはない。今度こそ大事にしようと強く思う。泣きそうだ。

また絶対来よう。
そう決めて、新幹線に飛び乗った。

https://note.mu/hiromi_okb/m/m05e60c2489c0

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