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その②映画編!理想の字幕提供方法 アンケートの結果発表!聞こえない、聞こえにくい人の「字幕」について聞いてみた。

このページをみていただき、ありがとうございます。
このアンケートは、字幕制作会社である私たちが、もっとたくさんの芸術作品を自由に字幕で楽しみたい方の本音を集めたいと思って企画したアンケートです。字幕を求めている方と一緒に、私たちはどんな未来を目指していけるのか、この声を通して考えていきます。

対象者:耳が聞こえない・聞こえにくいひと、字幕が必要なひと
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/3/19~2021/4/1(有効回答者数:141)

その①では回答者の属性から「字幕ユーザーについて」と「テレビ・映画館・劇場での字幕の経験について」についてのアンケート結果を掲載しました。まだまだ認知度が低いこと、様々なところで様々な取り組みが始まっていることもご紹介しました。その②では「字幕の提供方法について」のアンケート結果をご報告していきたいと思います。

アプリ「UDCast」を知っていますか?

映画の無料アプリ「UDCast(ユーディーキャスト)」をご存知でしょうか?パラブラは字幕や音声ガイドの制作に加え、このUDCastを運営している会社でもあります。

「UDCast」とは
字幕や音声ガイド、副音声などを映画に合わせて再生するアプリ。
事前にダウンロードしたデータが映画館のスクリーンから流れる音と同期して、自動的に字幕や音声ガイドなどが流れます。

このアプリは事前にデータをダウンロードすれば電波を使わない&使用中は画面も暗くなるため、映画館で音声ガイドはスマホとイヤホンで手軽に楽しめます。ただ、字幕の場合、スマホの画面に文字を表示することが周りのお客様の鑑賞の妨げになる可能性があることから、メガネ型端末の使用が一般的になっています。

メガネ端末写真

メガネから見た字幕

写真はEPSON社のMOVERIOです。画面に字幕がついていなくても、字幕を表示させたレンズ越しに見ることで、あたかも字幕つきのように楽しむことができます。

また、スマホでの字幕表示を限定的に採用する作品もあります。現在全国順次公開中のドキュメンタリー映画『緑の牢獄』では、下記のような注意書きのうえ、周りのお客様への周知をしながら、対応劇場でスマホやタブレットでの字幕の鑑賞を可能としています。「※スマホやタブレットでUDCastの字幕を見る方は、 画面の点灯により、他のお客さまの鑑賞の妨げになることを防ぐため、できるだけ劇場の後方列に座っていただきますようお願い致します。」

前回の記事で紹介した通り、日本映画の字幕付き上映の機会が少ない中で、このようなアプリを映画館で使えるようになることや、製作・配給側の対応で「いつも・どこでも・どの回でも・自分だけ」字幕付きで楽しむことも実現しつつあります。

このようにさまざまな選択肢がある今だからこそ、ユーザーの本音を聞いていきたいと思います!

3-1 . 映画館で日本映画を日本語字幕付きで観たことはありますか?

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この回答は前回もまとめたとおり、テレビよりは少ないものの、「映画館で観たことがある」と答えた方が108人(76.6%)でした。

今回は、提供方法について考えてみたいと思います。

3-2. 映画館へ日本映画を観に行きました。見たい日時で自由に選べるならどちらの方法で楽しみたいですか?

A:スクリーンに字幕を表示する方法

①焼き付け字幕

B:スクリーンに字幕はなく、メガネ型端末で字幕を観る方法

②メガネ字幕

結果は、A:スクリーンに字幕を表示する方法が132人(93.6%)、B:メガネ型端末で字幕を観る方法が9人(6.4%)でした。

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ほとんどの方が「見たい日時で自由に選べるならスクリーンに字幕を表示する方法で観たい」ということがよくわかりました。

スクリーンに表示する字幕の良い点・悪い点

Aを選んだ方は、「スクリーンに表示させる方が見やすいから」「字幕が固定されていた方が良いと思うので」「開放的で広大な画面を楽しみたいから」「スクリーンに字幕が表示されている方が見やすく、映画に集中できる」という理由がほとんどでした。
さらに「対等に楽しめる」という意見がありました。「メガネ型端末をつけることで、一般の人とは違う差別化を感じるため」「外国作品は普通に字幕があるのに 日本映画やアニメには字幕が無い事がおかしいと思っている」

Bを選んだ方には「いつでも観られるから」という方もいました。見たい日時が選べる、という条件がうまく伝わっていませんでしたが、「いつでも」を重視していることが伝わってきました。そのほかは、ほとんどの方が同じ意見でした。「聴こえる人と一緒に同じ映画を見ることができるから」「字幕を必要としない方への配慮としてスクリーンにではなく、メガネでにした」「字幕ない方がいい人もいると思うから

スクリーンに表示する字幕の課題は「鑑賞の機会が限られている」「聞こえる人の理解」ということがわかりました。

メガネ型字幕の良い点・悪い点

メガネ型字幕の身体的な負担に関する意見は、正直思った以上の数が寄せられました。「スクリーンの字幕は洋画で慣れているので違和感がない。メガネはちゃんと見えるように調節したり映画に集中できない。大切なのは字幕で見ることではなく映画を楽しめるかどうかだと思います」という意見に代表されるように、皆さん苦戦しているようです。

「メガネ型端末で字幕を見ると、メガネをつけることによる身体的負担があり、映画に集中できない」「呼吸のたびに字幕が動いたりと集中しづらい」「眼鏡ユーザーなので眼鏡オン眼鏡と補聴器で耳が重くなる」「メガネだと字幕がぼやけて見えない時がある」「メガネだと距離感に違和感あり、途中から鼻が痛くなるので今はスクリーン表示がいい」「3Dメガネでも酔うのに、メガネ型端末だと酔ってしまい、映画が楽しめなくなるから」「眼球→スクリーンと字幕それぞれの距離が違うので目の焦点を切り替えるのが大変
また、今ならではの「本当に消毒したのかと抵抗がある」という意見もありました。

一方、メガネ型だからこその利点として「スクリーンだと、見えなかったりする時もあるので、メガネ型だと、見えるかも。実際、使ったことはありませんが」「画面から目を離しても、耳から聞こえるのと同じようにセリフなどを聞ける(見れる)ので」という意見もありました。

では、タブレット端末と比べてみるとどうでしょうか。

3-3. 映画館へ日本映画を観に行きました。スクリーンに字幕が表示されない場合、どちらの方法で楽しみたいですか?

A:メガネ型端末で字幕を観る方法

②メガネ字幕

B:字幕専用タブレット端末で字幕を観る方法

③タブレット字幕

この回答は必須にしなかったため、結果は無回答が12人。回答された中で、A:メガネ型端末で字幕を観る方法が100人(77.5%)、B:字幕専用タブレット端末で字幕を観る方法が29人(22.5%)でした。

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無回答の方の意見はそのものずばり「どっちも嫌」「どちらも長時間は疲れるし、字幕付きDVD等出るまで待つ」回答された方の中にも、「そもそも選べなかったから仕方なく」という方がいました。スクリーン字幕の人気がうかがえます。

タブレット型字幕の良い点・悪い点

実はタブレットを選んだ方のほとんどが「メガネ型が体質的に合わないので消去法」という判断でした。メガネ型が苦手な方がいる限り、選択肢としてのニーズはあるようです。
なかには「女性の視点からといいますと、お化粧している顔に出来るだけメガネ型端末をかけたくないから。(化粧直し必要がある)」「手持ちではなく、席にはタブレットがホルダーアームスタンドで固定すれば、自分で見やすいように調整できると大変助かります。」「タブレットのほうが文字が大きく見やすい」というタブレットの利点も。

一方、メガネ型を選んだ方のほとんどは「タブレットを見たりスクリーンを見たり、視線の移動が辛い」をあげました。「画面と字幕が同時に見れる」「画面から目を離したくない」これはメガネ型の利点といえます。
「手に持つのは煩わしい」「タブレットはバックライトで周りが明るくなってしまう」「タブレットは無知な人がいる限りトラブルが想定されるので使いたくない」という意見もありました。

メガネ型に身体的負担を感じる方も多いものの、「視線移動が少ない」という利点もあることがわかりました。タブレットを導入する際は、「視点移動を最小限にする固定方法」が課題であるといえます。

また、どちらの提供方法であっても「鑑賞の機会」はクリアできるものの、「周りのお客様への周知」が課題であることがわかりました。

②まとめ

今回は「映画の字幕の提供方法について」についてのアンケート結果を掲載しました。

・ほとんどの方が「見たい日時で自由に選べるならスクリーンに字幕を表示する方法で観たい」
・スクリーンに表示する字幕の課題は「鑑賞の機会が限られている」「聞こえる人の理解
・メガネ型は身体的負担があるものの、視線移動が少なく、画面と字幕が同時に見られる。
・タブレット型は視線移動があるものの、メガネをかける必要がない。固定したり、自分で調節する必要がある。
・メガネ型、タブレット型とも「鑑賞の機会」はクリアできるものの、「周りのお客様への周知」が課題

「鑑賞の機会」を提供するための「UDCast」を運営している私たちですが、改めて「字幕付き上映をあきらめちゃいけない」と感じています。
また、聞こえる人や周りのお客さまが字幕のニーズを理解すること、一般に周知してもらうこと、「字幕がアタリマエになること」が一番の近道なのだと思います。

次回は「演劇の字幕の提供方法について」結果をご報告していきたいと思います。映画以上にいろいろな選択肢があります!!お楽しみに。

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