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その④好きな時に好きな座席で アンケートの結果発表!聞こえない、聞こえにくい人の「字幕」について聞いてみた。

このページをみていただき、ありがとうございます。
このアンケートは、字幕制作会社である私たちが、もっとたくさんの芸術作品を自由に字幕で楽しみたい方の本音を集めたいと思って企画したアンケートです。字幕を求めている方と一緒に、私たちはどんな未来を目指していけるのか、この声を通して考えていきます。

対象者:耳が聞こえない・聞こえにくいひと、字幕が必要なひと
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/3/19~2021/4/1(有効回答者数:141)
(その④以降(アンケート2)の有効回答者数:84)

その②では映画、その③では演劇の「字幕の提供方法について」のアンケート結果を掲載しました。今回は、心苦しくも問いかけた究極の選択についてまとめたいと思います。回答必須の質問ではなかったものの、141名中、実に84名の方にご回答いただきました。

究極の選択「タイミングと座席どっちをとる?」

この質問をすることになったきっかけは、ある難聴の女性との雑談でした。
「映画はふらっと行きたいから、
 予約が必要な貸出機器を使わず楽しみたいけど、
 演劇はあらかじめ日時を決めておくものだから、
 貸出予約することも苦じゃない。むしろ、字幕席を限定されるのが嫌。」

たしかに、映画と演劇では鑑賞方法が違うように、ニーズが違うのかもしれない。と思いました。そこで、少々乱暴な質問にはなるので必須ではないアンケートで映画・演劇それぞれで同じ質問をしてみました。

現状はタイミングか座席、どちらかを諦めている

本来は「好きな時に、好きな座席で」映画や演劇を観たいです。もちろん人気作品はチケットが取れなかったり、抽選でハズレの席だったりもしますが、そういう場合をのぞいて、たとえば会社終わりの夜に行くか、休日の昼に行くかは自由だし、席も選べる自由席なら、後方でも中央でも自分が見やすい席を選んで観ますよね。

しかし、字幕付きで観たいと思ったとき、現状は、その「選択の自由」がないことのほうが多いです。
その例として、2つのよくあるパターンで比較してみました。

たとえば、映画や演劇の字幕対応では
・公開期間中の2~3日だけ、もしくは1日1回だけ字幕付き上映がある
・通常公演に字幕はないが、字幕付きバリアフリー版の上演日がある

という対応が一般的になっています。

「日時は限定される」
けど
「好きな席を選んで観られる」

といえます。
ここでは仮に「座席優先」と呼びます。

観客席の男女

一方で
・座席に固定するタイプの字幕機器(字幕利用席を指定)
・機器の光漏れ等の配慮のため、座席を限定しての字幕機器使用(最後列の席のみOKなど)
をすることで、すべての回で対応する作品もあります。

「いつでもふらっと好きなタイミングで鑑賞できる」
けど
「字幕を観られる席は限定される」

といえます。
ここでは仮に「タイミング優先」と呼びます。

カレンダーを見る人

どちらかしか選べなかった場合にどちらの対応がうれしいか、どのような意見があったのでしょうか。
まずは映画です。

字幕付きの映画を見る場合、下記の項目で優先させたいものはどちらですか?

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A:座席を自由に選びたい(上映回は限定されるが、どの席でも字幕使用可能)…29.8%

B:鑑賞する日時を自由に選びたい(席は限定されるが、どの回でも字幕使用可能)…70.2%

7割が「タイミング優先」でした。
映画はメガネ型に対応している作品と機器があれば、好きなタイミングで、好きな座席で楽しむことができます。ただ、その②で大人気だったスクリーンに表示される字幕付き上映は一定期間のみの対応が多い状況です。

タイミング優先派は、ほとんどの方が、このスクリーン字幕付き上映の機会の少なさについて、実体験を書いてくださいました。

「現時点で字幕上映日の数が少ないため、スケジュールの調整がきかない。『この日』を選ばざるを得なくなるのが嫌。本来の上映期間同様、自由に日程を選びたい」(20代、ろう)
「興味のある映画や好きな俳優さんが出ている映画は公開後、なるべく早く見に行きたいと思うからです」(40代、難聴、手帳なし)
「どうしても見たい邦画があり、近場で上映される字幕付き上映日が予定と合わず見に行ける日程で上映されるのが遠方の映画館であったというパターンが多く、交通費とかかる時間を考えると大変な思いをして字幕付きの映画を見に行くという感覚がある」(30代、ろう)
「思い立った時にいつでも行けるから。限定されていると都合を合わせられないし、合わせることがめんどくさくなり、行かなくなる」(50代、中途失聴)
赤ちゃんがいるので誰かに預けない限り好きな日時に行けないので、好きな時に行けるのがありがたい」(30代、難聴)

好きな時に観たい気持ちは、映画好きの私にとっても同感しかないし、切実で、もったいないとしか言えない状況です。おそらくほとんどの方が、字幕付き上映を増やしてほしい、という思いで「タイミング優先」を選択したのだと思います。

カレンダーを青い顔でみる女性

一方、座席優先派もある程度いらっしゃいました。聞こえない方は「見る」ことをとても重視している印象があり、こだわりがあるかもしれません。
「映画の良さは画面なので、同時に字幕を見て楽しみたいから」(40代、難聴)
せっかく映画館で映画を見るのだから、端ではなく映画館の真ん中で味わいたい」(20代、中途失聴)
「中央で見たい」(50代、中途失聴)

また、
席が限定だと聞こえる友人らと来ることが出来ない」(40代、ろう)
「悩みますが、選択肢が多い方が良い。席自由は聞こえる人と一緒に見ることが多いので一緒に見られる方を選ぶ」(40代、ろう)
という、字幕の限定回や限定席では聴者と一緒に観られないのでは、という意見もありました。

では、演劇ではどうでしょうか。同じ質問をしてみました。


字幕付きの演劇を見る場合、下記の項目で優先させたいものはどちらですか?

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A:座席を自由に選びたい(上映回は限定されるが、どの席でも字幕使用可能)…35.1%

B:鑑賞する日時を自由に選びたい(席は限定されるが、どの回でも字幕使用可能)…64.9%

タイミング派はやはり、「映画と同様」「いつでも自由に鑑賞したい」という意見が多数でしたが、演劇ならではの意見もありました。
演劇は映画と違って、一回ずつの楽しさがあるので、どの回でも観たい。(舞台は複数回観たいタイプなので)」(30代、ろう)
席の限定というのが、字幕を見るのに適した場所という意味であれば好条件」(40代、ろう)
「東京芸術劇場の場合、席は指定席がほとんどで特に望むことはないが、字幕付の回があとひとつあったら、と思うことがある。」(50代、ろう)

映画ではタイミング派だけど、演劇では座席派の方が8名いました。

舞台は座席により楽しみ方が変わるから」(40代、難聴)
「舞台の演者などよく見える位置の座席を取りたいため」(20代、難聴)
「舞台の場合は座席が前か後かで舞台そのものの見え方が大きく変わってくるため」(30代、ろう)

さらに、映画では座席派だけど、演劇ではタイミング派の方も4名いました。ここを選択した方は日常的に大きな劇団の演劇鑑賞をされている方が多いようで、座席はそもそも抽選等で自由に選べないため、とにかく機会をふやしてほしい、というご意見でした。

「観劇は私が知る限り、エリアは選べても映画のように詳細な座席位置を選べることはないように感じる。また、タブレットを貸し出してもらえる劇場であれば、一般の人と同じ座席配置になるのではと考えている」(30代、ろう)
字幕対応の日時が少な過ぎるので」(40代、中途失聴)

まとめ

今回のアンケートで、映画ならこうがいい、演劇ならこうがいい、というところから希望がみえるかと思いましたが、思った以上に、諦めている現状と本音があがりました。
改めて、どちらかを優先すればOKということではないんだ、と思いました。
今はそれぞれの作品が、さまざまな選択をして字幕の対応を決めている現状です。そういった対応を検討する際に参考になるコメントも多いと思い、このアンケートを公開しました。

タイミングが合わず、鑑賞を逃している方が多い。
座席にこだわりのある方も多い。演劇にその傾向が強い。
聴者の友人と一緒に鑑賞する際などは、字幕利用の座席を限定されることに抵抗を感じる。
・映画も演劇も、字幕の鑑賞機会を増やしてほしい。


好きな時に好きな座席で楽しめる作品

最後に、最近ではバリアフリー対応に積極的に取り組む作品も増えてました。なかには、作品側の判断でいつでも字幕を楽しめる作品もあります。
こういった選択肢もある、という例で、これから予定されている2作品を下記にご紹介します。

2021年6月公開 劇場版『僕が君の耳になる』

耳が聞こえない彼女を通して新しい世界を知り、心を通わせる感動のラブストーリー。パラブラで字幕と音声ガイドを制作しました。すべての回がバリアフリー字幕付き上映、音声ガイドはその①でご紹介した無料アプリUDCastで配信します。2021年6月25日以降、全国順次公開です! 

2021年12月に上演決定!タカハ劇団『美談殺人』

すべての回が舞台手話通訳付き、といいますか、舞台手話通訳者が登場人物のひとりとなるとても実験的な舞台です。字幕もすべての回で対応予定!
パラブラはバリアフリーサポートを担当します。

このように「いつどの回でも」「好きな座席で」を叶えられる作品も増えています。ぜひ、これらの作品もチェックしてみてください。


次回からはいよいよ、字幕の内容についてアンケートの結果をご報告していきます。字幕に何を求める?映画の字幕と演劇の字幕って違う?などなど。お楽しみに。

その①から③はこちら!



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