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裸の王様になんてなれない。

桜が満開になり、気温も上がってくるとコートを脱ぎたくなる。
と言っても、気温が安定しないから、いつでも着られるように部屋のラックにまだかけっぱなしにしているのだけれど、街行く人達もコートから革ジャンへと衣替えを始めている。

コートを着ている季節は寒いからか、背中も猫背のように丸めて、手はポケットに突っ込んで首をすくめてちっちゃくなって歩いている。それでも、寒いから、セカセカと早歩きになってしまう。
春になると、桜を見上げるのに上を向いて、短い季節を堪能するかのように歩幅が大きく、そして歩くペースもゆっくりになる。

花粉症なのに、大きく息を吸って吐きたくなる。

そんな開放的な気分になる季節、春。毎年浮上する問題がある。

名付けて「肌見せられるんですか問題」である。

冬は、寒いからっていう理由で、長袖長ズボンタイツが基本スタイルとなる。
なんなら、ジーンズの下に、股引なんぞもはいちゃって、色気ってなんですかレベルである。
お付き合いしている人がいたら、また話も違ってくるのかもしれないけれど、そんな人いないので、ずっとオフ状態だった。

そして春が来た。浮足だっている。可愛い服が着たい。ふわふわひらひらしたやつ、、、ちょ、待って。肌見せて大丈夫だったかしら、ドキドキ、、、

という訳で、未だ春服の出番なく、冬服を着ている。

肌を見せるってことは勇気と覚悟がいる行為である。
だって、毛の処理を忘れているかもしれないし、肌が乾燥しっぱしで、カッサカサになっているかもしれないし、蓄えた脂肪を白日の下にさらすことになるからである。

寒い寒いといって冬の間遠慮なく飲んでいたあったかくて甘い飲み物達を封印し、「もういいや!春服着ちゃえ!」と恥を忍んでおひさまの下に肌をさらすその日までのカウントダウンをし始める。これも春支度の一つ。

自分に自信がないからすることの一つなのかもしれない。

『裸の王様』というアンデルセンの童話がある。オシャレ好きの王様が、詐欺師に騙されて、「バカな人にはみえない布」で作られた服を購入し、結果、裸で街を練り歩くことになったというものである。
大人は皆「バカ」だと思われたくない一心で、布があるかのように振る舞うけれど、子ども達は正直に「何も着ていないぞ!」と騒ぎ出す。
王様は、そこで引くに引けず裸のまま街を練り歩くことになる。

大人になると見栄が出る。一方で、子どもは正直で素直だ。
そんな耳の痛い童話である。
それでも、自分が裸であることを気付きながら、結局街を練り歩いた王様にも私は拍手を贈りたい。
薄手の服を着るにも躊躇してしまう位だから、裸でも躊躇うことなく街を歩けた王様が私は少しかっこいいと思っている。


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